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新宿ゴールデン街の「三密対策」に、2千円強のAIカメラを試してみた!
「取り付け10分、月額500円」のAIカメラで「三密対策」しながらはしご酒?
2020年10月29日 07:01
新宿ゴールデン街といえば、3~5坪のコンパクトなお店が280店以上立ち並ぶ、日本有数の飲み屋街だ。
「カウンターが10席埋まれば満員」のようなお店も多く、初対面の客同士、「どうも」なんて言いながら、肩を並べて飲んでいるうちに仲良くなることもザラ。マスターやママもその場を上手く回してくれるから心地良く楽しめる。
しかし、そんなゴールデン街もコロナ禍の影響は避けがたく、来客数は減少。もちろん各店、様々な感染対策を行っているが、そもそも「密になりやすそうだから」と避けている人も少なくないようだ。
●「月額500円と格安AIカメラ」で、DIYの混雑対策!
………そんな中、飛び出してきたのが2500円の格安ネットカメラと、1台500円の月額料金で利用できる「AI人数カウントサービス」が始まる、というニュースだ。
これは、監視カメラとしても使えるネットカメラ「ATOM Cam」の新機能として発表されたもの。
店内の混雑度合いをカメラとAIで検出し、専用ウェブページで混雑度合いを確認できる。「これからお店に行きたい」というお客さんは、スマートフォンで確認できるし、店内が見えにくいお店なら、店頭にタブレットを設置して表示することもできるだろう。
つまり、これを上手く使えば、密への不安をさらに減らし、感染対策をしながら店舗の営業を続けられる……と思われる。そこで早速、ゴールデン街のお店に相談、タイプが異なる4つのお店で導入してもらった。
ちなみに、飲食店はこうした機材に詳しくないのがごく普通。今回も「もしかしたら苦戦するかも」と思っていたのだが、やってみたら意外とスムースだったのが印象的。自分で設置し、自分のスマートフォンで設定するため、安価に、好きなタイミングで導入できるのもポイントだと思う。
「三密対策」はもちろん、「今、空いてるから行こう!」というきっかけ作りや話題性など、様々な点で導入を検討してみるのもいいと思っている。気になる方は是非参考にしてほしい。
コンパクトなゴールデン街の店舗にピッタリな、コンパクトな2500円の高性能カメラ
さて、今回導入したのは、今年5月に正式販売された2500円(税込・送料別)の格安ネットカメラ「ATOM Cam」(Wi-Fi接続)と、7月に無料提供を開始した、ATOM Cam専用の「AI人数カウントサービスβ版」だ。なお、後者のサービスは、正式リリース時、月額500円/台(初月無料)を予定しているという。
「ATOM Cam」本体は、ほぼ5cm角の小さなキューブ状で、約100gと軽量。折りたたみ式スタンドもついており、コンパクトなゴールデン街の店内に置くにはピッタリな、邪魔にならないサイズ感。フルHDの解像度で、暗所の監視も可能。動作検知や音声検知などの機能も備わっており、価格度外視の優れモノだ。
詳細なレビューはこちらで書かれているのでみて欲しいが、価格を考えると「なんで?」といえるほど多機能・高性能だ。
そして、この「ATOM Cam」に、混雑状況のシステムを取り入れたのが、「AI人数カウントサービス」だ。
Wi-Fi接続されたATOM Camで撮影された映像から、5分おきに画像をAI分析サーバーに送信し、専用アプリに人数を反映。QRコード画面を介し、Webブラウザから混雑度合いを表示。表示される混雑度合いは「入店(緑色)/警告(黄色)/停止(停止)」の3段階で、閾値となる人数や店名、メッセージなども設定できる。
そして、QRコード画面か、WebブラウザのURLを店舗のホームページやTwitterに表示することで、来店前に混雑度合いの確認ができる。また、店舗入り口にタブレットなどを置き、表示することで、来店者向けの告知になるほか、「入店待ち」の来店者が店頭を離れても手元のスマートフォンで状況を確認できるようになっている。
お店その1:「KENZO’S BAR」「お店に行かなくても、連絡しなくても、随時、状況が把握できて便利」
いよいよ取り付け開始。
1店舗目は、いかにもゴールデン街、といったコンパクトなバー「KENZO’S BAR」だ。
このお店、店主の服装も扉も内装もヒョウ柄だらけで、ゴールデン街の中でもひと際異彩を放っているのが特徴だ。お店の規模は小さいカウンターとボックス席がひとつ。店主や女性スタッフの采配のもと、大きなボックス席からお客を座らせていき、良い塩梅で会話を回し、その場を盛り上げるスタイルだ。
緊急事態宣言解除後は通常営業していたという店主のケンゾウさん。「この街で飲みたい常連さんとかが一定数いるから朝まで開けていたよ。新規のお客さんも何人か来てくれたし、リピーターにもなってくれた。何度か満席にもなっているよ」。
満席になることもあるということで、早速カメラを取り付けてもらうことに。「もともと店には1万円ほどの防犯カメラを設置しているけれど、そのカメラよりも小さくて場所もとらないし、随分取り付けが簡単だね。値段も安いし画質もキレイ」(ケンゾウさん)
カメラを取り付けた後、アプリ画面に「AI人数カウントサービス」のQRコード画面を表示。その表示を筆者が読み取り、WebブラウザのURLをケンゾウさんのLINEに送信し、そのURLをお店の公式Twitterで投稿してもらったところ、後日、ゴールデン街の別の店のスタッフから、「便利ですね!」と、反応があったそう。
「ゴールデン街の店はお客さんの入れ替わりが早くて混雑状況も変わりやすいから、人数カウントを見て来ても、その間に混む可能性もある。だけど、お店に行かなくても、連絡しなくても、随時、状況が把握できるのは便利だよね」。
お店その2:「沙華(しゃか)」「話のネタになりました(笑)」 監視カメラとしての活用も
続いては、緊急事態宣言期間のゴールデンウィーク中に新規開店した「沙華」。このお店もゴールデン街に多くある、コンパクトなバーだ。
店主の紅(こう)さんは、アニメ、アニソン、コスプレ好きのオタク。フェティッシュも好きということで、店内の赤いシャンデリアやカーテンが印象的。もともとゴールデン街の別の店で働いて、そこから独立したそう。
顔馴染みの客も多く、開店当初はZoomを使ったオンライン営業も行なったとか。来店できる状況になったいまは、「私と同じ趣味をもつ人にもお店に来てほしいし、これから常連さんをつくっていきたい」と話す。
ATOM Camについて、「私のように女性ひとりで営業している人にとっては、監視カメラとしても使えるから嬉しい。取り付けも置くだけだったから思ったよりもラクですね」と、紅さん。QRコード表示画面の設定も上手く活用。「あまり店内の人数を表示したくないので、人数を非表示にして、色とメッセージだけで混雑状況を確認できるようにしました。それを見て来てくれるお客さんもいたらいいなと思って」。
来店したお客さんには、次回以降、いつでも混雑状況がみられるように、事前にQRコードを読み込んでもらうこともしたそう。「面白がってくれるお客さんもいたし、同じカメラを自宅の飼い猫の様子を見るために利用しているというお客さんもいて、話のネタになりました(笑)」。
お店その3:「Diner 5GALLONS」金属板と両面テープで逆さに設置 ~「画面が反対になったけど大丈夫だった(笑)」
3店舗目は、ゴールデン街イチ店舗面積が広い「Diner 5GALLONS」。
2階建てで、もともとどちらもダイニングバーだったが、6月からは、1階をラーメン店「麺屋 我論」として、9月21日からは、2階をランチタイム限定で生パスタ店「パスタ食堂 ガロー二」として営業。2階のディナータイムは、ハイボールやカクテルなど、酒の種類も豊富で、ハンバーガーやカレー、焼きそばなど、アメリカンから屋台系までフードも充実している。
ちなみに、ラーメン店はコロナで騒がれる前からオープン予定だったが、ちょうど重なってしまったそう。「ラーメン屋は昼だけ営業する予定だったけれど、周辺の酒場の時間短縮の影響もあって、酒を飲んだあとに利用する人も多かった。おかげさまで昼も夜も集客あるよ」と、店主のケンさん。
せっかくなので、1階と2階両方にカメラを設置。2階は、長いカウンター席とテーブル席が見渡せるよう、天井に近い木材の柱に、店主のケンさん自ら、脚立を使って取り付けた。
「木の柱にどう取り付けるのかと思ったけれど、カメラのスタンドにマグネットが内蔵されているから、付属の金属板に付属の両面テープを貼って、柱に貼り付ければ、あとはスタンドのマグネットと金属板をくっつけるだけ。工具もいらいないし簡単だったね。その後、アプリ画面を見たら映像が逆さになっているから焦ったけれど、画面を回転できたから安心したよ(笑)」。
「2階は、ちょうどカウンターに縦にお客さんが並ぶ、お客さん同士が重なってしまう位置に取り付けてしまったから、AIが検知しにくかったのか、実際の人数と表示される人数に少し誤差があったかな。映像はアプリから随時通知がくるし、気軽に確認できて使いやすかった。あと、QRコード画面に、営業時間と休憩時間も表示できると嬉しいかな」。
お店その4:「どんがらがっしゃん」「タブレット表示が入店のきっかけになりそう」
最後は、居酒屋「串揚げ どんがらがっしゃん本店」。カウンター席のほか、テーブル席もある居酒屋だ。
コロナ前までは、夕方からの営業だったが、コロナ禍では昼から営業をスタート。昼からサクサクの串揚げと酒を楽しめる『ホロ酔いセット(串揚げ5本+ドリンク1杯)』(1000円)をはじめ、串揚げに次いで人気の自家製の「醤油麹・塩麹のからあげ」の定食なども堪能できる。
店長の城野葉子さんは、「コロナ前だと毎日ほぼ満席だったのに、いまは満席になることはほぼない」と嘆く一方、「それでも、まわりのお店の人や常連さんが来てくれたり、最近は、新規で若いお客さんも来てくれるから励みになる。営業時間も状況に合わせて戻していけたら」と、臨機応変に対応中だ。
カメラの取り付け自体は、「棚に置くだけで簡単にできた」という城野さん。ただし、「Wi-Fiがうまくつながらなくて……」ということで、筆者が調べたところ、Wi-Fiネットワークが5GHz帯になっていた。ネットワークを2.4GHz帯に変更し、再度試したところ、無事接続できた。
同店では、店頭にタブレットも設置。「常連さんが、あれは何?って珍しがって聞いてくることもありました。あと、夜になればライトで目立つから、もしかしたらタブレットを見て入ってくる人もいるかも」と、期待を寄せる。
「たまに、店内のテレビ画面に映る人物にも反応することがあって、それだけ性能が良いと思うけれど、少しだけ誤差は出ますね(笑)。あと、私ひとりで営業することもあるので、防犯のためにも、店主と映像が共有できるのもありがたいです。このカメラ、値段も手頃で使い勝手が良いので、10月頃にオープン予定の系列店でも利用させてもらいますね!」。
導入のステップは4段階、まずはネット環境から
さて、今回の「AI人数カウントサービス」を導入する手順は以下の通り。
1) インターネット接続環境とWi-Fiの導入
(すでに導入済みなら、それを利用可能)
2) ATOM Camを購入する
3) ATOM Camを設置する
4) サービスに申し込み、スマートフォンで設定する
今回は、全てのお店にWi-Fi環境があったため、お店にやってもらったのは3と4だが、導入した4店舗とも、設置・取り付けに10分もかからず、それ自体は相当手軽。ATOM Camの設定もスマートフォンでスムーズに行なえる。
自分で設置するだけあって、取り付け場所の変更も自分でできるので、テレビを画角から外す(笑)など、工夫することで、より正確な人数も出せそうだ。
また、お店にネット接続環境やWi-Fiがないなら、この機会に光回線を導入したり、工事不要で導入できるUQ WiMAXやSoftBank Airなどを利用してみるのもいいかもしれない。
ちなみに現在、βサービス中の「AI⼈数カウントサービス」だが、正式版のリリースは「11⽉中を⽬指している」(アトムテック)とのこと。
ハシゴ酒にも使えそう?な「AI人数カウントサービス」馴染の店に入れてもらったら便利かも?
筆者としては、QRコード画面の人数表示や色、メッセージを見るたびに、「混んでそうだから、また時間を空けていこう」「いまいけばゆっくり話せそうだな」「誰か知り合いがきているかもしれないな」「賑やかそうだな」という、想定・想像をしながら店に行けるのが楽しかった。
行ってみて密が気になるようであれば、別の店に行って時間をあけるか、日を改めるのもありなので、そこはお客が判断できる。馴染のお店に入れてもらえば、結構、便利になるんじゃなかろうか。
また、ゴールデン街はハシゴ酒文化の街。お店やお客同士で、「次はあの店に行ってみたら?」と紹介しあうこともあるため、その際にこのカメラがあると、互いに混雑状況を知れて、お客を案内しやすいというメリットもある。
そもそもの話になるが、ATOM Camは防犯カメラとしても優秀だ。今回の「AI人数カウントサービス」と合わせると、防犯・感染対策の両方で、利用する価値は高そうだ。
(協力:アトムテック)