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脱サブスクも視野に!? 安くなってきたSSDも選べる海外メーカー製「NASキット」は今が買い時!
2023年4月20日 10:00
HDDやSSDの価格が安くなってきて、「NASキット」の魅力が高まっている。中でも注目は、ASUSTOR、QNAP、Synologyといった海外メーカーが発売している自由度の高いNASキットだ。
現在、各種データの保存にGoogleやAppleのクラウドサービスを利用している人が多いと思うが、写真や動画などのデータは増える一方で、クラウドサービスの容量不足に悩まされるユーザーも増えている。追加容量の料金や将来の値上げが気になり、契約プランの変更、別サービスへの移行などを検討している人もいることだろう。
NASは、クラウドサービスよりも運用の自由度が高く、容量を自由に拡張できるうえ、月額の利用料金もかからない。家庭内に1台あれば家族全員のデータを管理できるので、個別のサブスク契約が必要なくなるメリットもある。
データの保存に限らず、写真や動画などのメディア管理、仕事仲間や友人、家族とのファイル共有、さまざまな用途に活用できることも魅力だ。
安く、とはいっても「誰もがとりあえず買うべき!」といったレベルではないが、1年ほど前に検討してあきらめたという人も考え直してみていい価格であり、これまで考えていなかった人も、どんなことができるか知っておいて損はない。今回は、初心者でも始めやすい低価格NASキットをピックアップして、その特徴や魅力を紹介する。
まずは超入門「NASって何だ?」
NASは、「Network Attached Storage」(ネットワークに接続した記憶装置)の頭文字を取ったもので、文字通り、ネットワークに接続するデータ保管庫だ。PCのUSBポートではなく、ルーターやスイッチのLANポートに、LANケーブルで接続して使用する。
データの保存先として、USB接続のストレージ(外付けのHDDやSSD)を使ったことがある人は多いと思うが、こうした記憶装置は、PCに直接接続することから、NASに対して「DAS」(Direct Attached Strage:直接接続した記憶装置)と呼ぶこともある。
ネットワークに接続するので、1台のPCだけでなく、同じネットワークに接続した複数のPCやスマートフォンから同時に利用できる。そのため、同じネットワークに接続している家族などとも簡単にデータを共有可能になる。
ネットワークを介して共有可能なのはiCloud Drive、Googleドライブ、OneDriveなどのクラウドストレージも同様だが、NASは自宅に設置した機器であるため、拡張やカスタマイズが自在に行える。
家にNASがあることで何ができるのかというと、基本的には次のようなことが挙げられる。機種によって機能が異なる上、後述する海外製の多機能なNASの場合、さらにVPN接続やアプリの利用など、高度な機能も備えているが、まずは基本を押さえておこう。
NASの基本機能
- PCのデータのバックアップ、同期
- スマートフォンの写真や動画のバックアップ、管理
- 家族内でのファイル共有
- 外出先からのデータアクセス
- リンクを使った外部ユーザーとのファイル共有
クラウドのような自由度を買い切りで利用できる「いいとこ取り」デバイス
前述したUSBストレージ、クラウドストレージと比べた、NASを利用するメリットを挙げてみよう。
USBストレージと比べたメリット
- ネットワークにつながる場所なら、どこからでも使える
- 常時接続され稼働しているため、いつでも使える
- 家族みんなで使える
- 外出先からもアクセスできる
- PCだけでなく、スマートフォンからも利用できる
- 写真や動画を見やすく管理できる
クラウドストレージと比べたメリット
- 買い切りで月々のサブスク料金が不要
- 数TBクラスの大容量もリーズナブルに実現できる
- インターネットが混雑している時間でも快適に高速アクセスできる
- 第三者(サービスの運営企業)にデータを預けずに済む
できることは、USBストレージやクラウドストレージとほぼ一緒ながら、こうしたメリットを享受できる、いわば「いいとこどり」の製品が、NASだと言える。
もちろん、NASのデメリットもある。まず挙げられるのは、自分で設置、管理、メンテナンスする必要がある上、本体やストレージを購入するための初期費用がかかることだ。
ところが、こうしたデメリットも、今は、だいぶ薄れつつある。最新のNASは、数ステップで簡単に設置や設定ができるようになっている上、信頼性も上がり手間がかからず、しかもHDDやSSDの低価格化によって、初期費用も抑えられるようになってきている。
好きなドライブで使える海外メーカー製NASキットが熱い!
NASを選ぶ上で、ひとつの分岐点となるのが、国内メーカー製にするか、海外メーカー製にするかの選択だ。
国内メーカー製NASは、NASとしての基本を追求した製品が多く、安心のサポートを受けられるのが最大の魅力だ。一方、海外メーカー製のNASは、性能の高さや高い拡張性が魅力となる。
現状、海外メーカー製の主流はASUSTOR、QNAP、Synologyの台湾3大メーカーだ。これらのメーカーの製品は、CPUやメモリなどが組み込まれたケースのみで販売されており、自分でドライブ(HDDまたはSSD)を組み込んだり、ソフトウェアをインストールしたりして利用する製品となっている。NASの中でも、自分でHDD/SSDを組み込んで使う製品は「ASキット」と呼ばれる。
自分でドライブを選べるNASキットなら、HDD/SSDの低価格化のメリットを最大限に受けられるわけだ。
自分でドライブを組み込む、と聞くと、難しいのではと尻込みする人もいるかもしれない。実際にドライブを組み込む作業は数本のネジ留めとシンプルな組み立て作業だけ、セットアップ作業もウェブブラウザーからウィザードを数ステップ進めるだけと、ちょっとした「ひと手間」がかかるだけなので、特に専門的な知識などは必要なく、誰にでもできるだろう。
その一手間を乗り越えることで、海外メーカー製NASが持つ、ただのデータ保管庫に留まらない豊富な付加機能が利用できる。メーカーによる違いはあるが、主に以下のような機能がある。
海外メーカー製NASならではの機能
- HDD/SSDのメーカーや容量を自分で選べる
- HDD/SSDの交換が容易
- デスクトップライクな見やすい設定画面を備える
- PCデータの同期が可能
- クラウド連携機能が豊富
- 簡単な設定でリモートアクセス環境を構築可能
- さまざまなアプリを追加して機能を拡張できる
- VPNサーバーとしても使える
- 監視カメラソリューションとしても使える
たとえば、Windowsの場合、OneDriveでPC上のデータを同期することができるが、NASを利用すると、OneDriveの代わりにNAS上にPCのデータを同期できるようになる。スマートフォン向けアプリを利用すれば、スマートフォンの写真などもNASに同期できる。
また、クラウドストレージはインターネットに接続できる環境なら、どこからでもアクセスできるのがメリットだが、海外メーカー製NASはリモートアクセスのしくみも充実しており、自宅やオフィスに設置したサーバーに対して暗号化された安全な経路でのリモートアクセスが可能な機能を備えている。まさに、クラウドストレージ代わりとして活用することが可能だ。
写真関係の機能も充実している。単に保存できるだけでなく、ウェブブラウザーを使ったアルバム機能を活用することで、保存された写真を整理したり、気軽に閲覧したりできるように工夫されている。対応しない製品もあるが、NASに搭載されたAIを活用して、写真から人物などを自動的に判断して整理できる機能も利用できる。
このほか、機種によっては、GoogleドライブやOneDriveなどのデータをNASにバックアップすることもできる。クラウドストレージサービスからの移行も現実的だ。
NAS向けSSDも割安に
NASキットでは、別途HDDやSSDを購入するが、最近では、NASでも静穏性や消費電力の低さ、衝撃耐性の高さからHDDでなくSSDが使われるケースが増えているが、今や1TBで1万円台と、大容量のSSDが手軽に入手できる時代になっている。
もちろん、容量を重視するならば4~8TBクラスのHDDを使った方が効率的だが、写真や文書ファイルのバックアップがメインの個人ユーザーなら、動作音が静かで発熱も少なく、衝撃にも強いSSDを選ぶメリットは大きいだろう。
HDDやSSDを選ぶ場合は、NASでの利用が可能な製品かどうかが重要なポイントとなる。NASキットはPCと同様にCPUやメモリを搭載していて、PC用と同じHDDやSSDが動くのだが、NASはデータ保護の仕組みであるRAIDを採用していたり、複数ユーザーで共有したりすることから、通常のPCと比べると書き込みの頻度が高くなる。このため、ドライブには高い耐久性が求められる。
特にSSDの場合は、コンシューマー向けに販売されている製品の中には、SUNEASTのSE900シリーズのように「NASまたはRAIDでの使用には対応していない」ことを明記している製品もある。また、明記されていなくても、故障時に保証の対象外となるケースがある。若干、価格が高くなるが、明確にNAS向けとして販売されている製品を選ぶのが確実だ。
NAS向けのSSDとしては、Western Digitalの「WD Red SA500」、Samsungの「870 EVO」などがある。記事執筆時点での実売価格は、それぞれ1TBモデルが1万6000円、1万2000円前後といったところだ。
NAS向けのHDDでは、Western Digitalの「WD Red」、Seagateの「IronWolf」などがある。実売価格は、それぞれ4TBモデルが1万6000円、1万5000円前後といったところ。以降で紹介するASUSTOR、QNAP、SynologyのNASにはIronWolf向けの管理機能が搭載されており、HDDの状態を監視し、異常を検知しやすくなっている。
初めて使うならコレ! 台湾メーカーNASキット3選
今回は、NASキットの例として、入門用に適した低価格で始められる2ベイタイプの製品を、ASUSTOR、QNAP、Synologyの3社からピックアップした。
それぞれの特徴と、NAS用OSのオンラインデモページを紹介しよう。各社とも独自のNAS用OSを搭載しており、オンラインデモでは、どのような機能があるかや、管理画面の使い勝手などがわかる。
2.5Gbps搭載でコスパ抜群 ASUSTOR DRIVESTOR 2 AS1102T
後発メーカーながら近年の成長が著しいASUSTORの製品。2万円台前半の低価格モデルながら、LANポートが2.5Gbpsに対応しており、コスパは抜群。2.5GbpsでPCなどを接続すれば、大容量ファイルの転送やバックアップが短時間で済む。独自アプリというより、一般的なサーバー環境で人気の汎用的なアプリが豊富な点もASUSTOR製品の特長のひとつ。
▼オンラインデモ
ADM Live Demo
スリムなのに高スペック QNAP TS-233
ハードウェア設計能力の高さに定評があるQNAPのエントリー向けモデル。コンパクトかつシンプルなデザインが特徴的で、CPU性能も高く、内蔵されたNPU(Neural network Processing Unit・AI用のプロセッサ)によって写真の顔認識AIの動作が高速化される。メモリ搭載量も標準で2GBと多く、単なるストレージとしてだけでなく、豊富なアプリを活用した多目的なサーバーとして稼働させるのに適した1台。ドライブの取り付けも専用トレイでネジレスと簡単なのもメリット。
▼オンラインデモ
QuTScloud オンラインデモ
ソフトウェアの完成度が光る Synology DS220j
コスパでは一歩譲る存在になってしまったが、NASブームの初期段階から低価格NASの定番となってきたシリーズの最新モデル。Synologyはソフトウェア技術力が高く、同期アプリなどの完成度が高い上、自社製のチャットアプリや表計算アプリなどもNAS上で動くのが特徴。スマートフォン向けのアプリも使いやすい。ハードウェア、ソフトウェアとも、デザインもシンプルで洗練されたイメージがあるのも特徴。
▼オンラインデモ
DSMライブデモ
ASUSTOR | QNAP | Synology | |
モデル | AS1102T | TS-233 | DS220j |
実売価格 | 2万3520円 | 2万8238円 | 2万7405円 |
CPU | RTD1296 (4コア/1.4GHz) | Cortex-A55 (4コア/2.0GHz) | RTD1296 (4コア/1.4GHz) |
メモリ | 1GB | 2GB | 512MB |
メモリ増設 | × | × | × |
ドライブベイ | 2 | 2 | 2 |
HDD固定方式 | ネジ留め (工具不要) | ネジレス | ネジ留め |
ネットワーク | 2.5Gbps×1 | 1Gbps×1 | 1Gbps×1 |
USBポート | 3.2 Gen 1×2 | 3.2 Gen 1×1 2.0×2 | 3.2 Gen 1×1 |
消費電力(アクセス時) | 11.6W | 10.81W | 12.46W |
動作音(アイドル) | 18.6dB | -(データ非公開) | 18.2dB |
サイズ | 165×102×218 | 188.64×80.18×156.26 | 165×100×225.5 |
保証 | 3年 | 2年 | 2年 |
使う楽しみが広がる海外製NAS
以上、NASの概要と、注目の海外製NAS3製品をピックアップして紹介した。NASというと、バックアップやファイル共有などの地味な用途向けと思われがちだが、海外製のNASは多機能で、アプリの追加によって、ユーザーの目的に合わせた使い方ができる。
もちろん、クラウドストレージの代わりとして「脱サブスク」を達成することも可能だが、単なるストレージだけでなく、さらなる用途の広がりがある点こそが、海外製NASの魅力だ。映像や音楽のメディアハブとして使うもよし、ゲーム本体やデータの保存場所として使うもよし、ビジネス向けアプリの活用で家庭内DXを目指すもよしと、導入後の「広がり」が期待できる点が魅力だろう。