実名性SNS、日本でもビジネス利用に活路あり? “Facebookページ”の魅力とは


 ユーザー数が6億人に上る世界最大のSNS「Facebook」は、その創業時を描いた映画「ソーシャル・ネットワーク」の公開とともに日本でも関連書籍が相次いで出版されるなど、マスメディアの報道ラッシュが起こったことは記憶に新しい。2011年3月度のニールセン調査によると、日本におけるFacebook会員数は3カ月連続で急増し、760万人を超えたという。

 しかし、Facebookが注目を浴びる一方で、日本ではmixiなど匿名性を持つSNSが中心で、LinkedInなどビジネス専門SNSはこれまで普及していないという事実もある。そんな中、実名性のFacebookはビジネス活用の可能性に期待が高まっており、特にビジネスパーソンが関心を寄せているのが“Facebookページ”(旧“ファンページ”)だ。

 Facebookページとは、趣味や商品、ブランドなどのテーマごとに“ファン”が集まり話し合うことができる、いわゆるコミュニティのようなものだ。企業が開設する場合、一般的にはユーザーとコミュニケーションをとったり、キャンペーンなどを告知する場などとして活用されている。

 Facebookページは他のコミュニティサービスとどこが違うのか、どんな使い方ができるのか――。2回にわたってお届けする。

Facebookページ一覧

Facebookページに参加するには

 Facebookページとはどんなものか、まずは自分が興味のある分野のFacebookページを実際に見てもらうのが早いだろう。

 Facebookページの探し方としては、Facebookページ一覧で検索する方法がある。「すべて」「音楽」「映画」「テレビ」「ブランド・製品」などでカテゴリーを選択すると、それぞれのカテゴリーごとのFacebookページの一覧が表示される。

Facebookページ一覧
http://www.facebook.com/pages/browser.php

 各Facebookページの画像にマウスオーバーすると「いいね!」が表示されるため、そのままクリックすればそのFacebookページに参加、すなわち“ファン”になることができる。お目当てのFacebookページがわかっているなら、直接そのページにアクセスし、Facebookページの名称の右側にある「いいね!」をクリックしてもよい。

 もちろん、Facebookアカウントが必要だ。ログインした状態ならばFacebookページ一覧の右上のあたりに「マイFacebookページ」リンクが表示されているはずだ。これをクリックすると、自分が参加した(「いいね!」を付けた)Facebookページが表示される。

各Facebookページの名称の右側(この画面では「Uniqlo」の右側)にある「いいね!」をクリックしても参加できる

ビジネスに活用されている米国のFacebookページ

 Facebookの普及率が高い米国では、その影響力は大きく、例えばCoca-ColaのFacebookページには2564万1200人、Starbucksにも2120万6500人など、ものすごい数のファンが参加している(4月25日現在)。

Coca-ColaのFacebookページ
http://www.facebook.com/cocacola

StarbucksのFacebookページ
http://www.facebook.com/Starbucks

 それだけの数の人が集まるFacebookページは、さまざまなかたちで活用されている。2010年11月、クチコミソーシャルマーケティングの最新事例を発表する「WOMMA Summit 2010」がラスベガスで開かれ、Facebookページの活用事例が紹介された。

WOMMA Summit
http://womma.org/summit/

 例えば、百貨店のNeiman Marcusは、20代~30代の女性をターゲットにした販売促進のため、Neiman Marcusのアイテムを活用したコンテストキャンペーン「Neiman Marcus Rock the Prom Contest」を行った。

Neiman Marcus
http://www.neimanmarcus.com/

Neiman MarcusのFacebookページ
http://www.facebook.com/neimanmarcus

 用意された背景、モデル、アイテムなどを選択することで、ユーザーがオリジナルウォールを作成できる。作ったウォールはコンテストに応募することができ、優秀賞にはNeiman Marcusのクーポンや賞品がプレゼントされた。コンテストのテーマは「プロム(高校・大学などの卒業記念ダンスパーティー)に身に付けたいものをまとめたウォールであること」。

 結果、エントリー数3400件あまりに対して、コンシューマーエンゲージメント(コメントや「いいね!」ボタンなどの双方向のやりとり数)が98万件以上、商品のクリック数が1万4000件以上。エントリー数に比べ拡散が大きく、エンゲージメント数が非常に多いという結果になった。エンゲージメント数が多かった理由は、米国ユーザーに関心の高いプロムをテーマにしたこと、プロムの時期だったことも影響したと考えられる。

「Neiman Marcus Rock the Prom Contest」募集ページ

 WOMMA Summit 2010ではこのほかにも、スポーツ観戦時に好まれるスポーツバーという業態の特徴を生かし、コメント内容を自社キャンペーンなどではなく、スポーツというユーザーが興味を持つテーマにして多くのコメントや「いいね!」を集めている「Buffalo Wild Wings」の事例なども報告された。

Buffalo Wild WingsのFacebookページ
http://www.facebook.com/BuffaloWildWings

Facebookページは開設するのも簡単

 企業によるビジネス活用の事例を挙げたが、Facebookページそのものは、個人で作成するのも簡単だ。

 前述のFacebookページ一覧で、画面右上にある「Facebookページを作成」ボタンをクリックするか、どこでもいいのでFacebookページに行き、左カラム下にある「Facebookページを作成」リンクをクリックすればよい。扱うテーマに応じたカテゴリーを選択し、名称を記入。利用規約を確認して「利用開始」をクリックすると、開設手続きは完了だ。

カテゴリーは、「地域ビジネスまたは場所」「会社名または団体名」「ブランドまたは製品」「アーティスト、バンドまたは著名人」「エンターテイメント」「トピック」から選択

Facebookページの名称を記入し、利用規約のチェックボックスにチェックを入れて「利用開始」をクリック

「フェイスブックの使い方研究」というFacebookページを作ってみた。続く利用開始画面では画像をアップロードしよう。右カラムにある「広告を使って宣伝」でFacebookページを宣伝可能。同じく「インサイトを見る」で分析して運営対策を考えるといいだろう

 作成したFacebookページをFacebook内の友達に紹介できる機能や、Facebookユーザー以外の連絡先ファイルをインポートして通知できる機能もある。

 Facebookページの管理者は、画面上部の「アカウント」メニューから、アカウントを個人と管理人の立場で使い分けることができる。Facebookページのアカウントに切り替えると、自分が管理するFacebookページや他のFacebookページ上での「いいね!」やコメント、投稿がFacebookページ名で行えるわけだ。

 また、ホーム画面の左上にある通知領域にはFacebookページの更新情報が通知され、ニュースフィードにはFacebookページの更新情報と、「いいね!」を付けたFacebookページの情報が表示される。

用意されている「アプリ」でさまざまな機能を追加可能

 Facebookページには、開設時に選択したカテゴリーに応じて、関連性の高いプリがインストールされているが、そのほかにも多くのアプリが用意されており、自社開発しなくてもさまざまな機能を簡単に追加できる。日本語に対応しているものはまだあまりなく、基本は英語のみだが、無料からそろっているので希望する場合はぜひ探して使ってみよう。

 Facebookページに注目が集まっている理由は、商用でも利用料が無料であり、充実しているさまざまなアプリを導入すれば、安価に高機能なコミュニティサイトが作れてしまうからだと言えるだろう。おまけに、高機能な解析ツール「インサイト」も用意されており、アクセス解析もたやすい。

 さらに、FacebookページはGoogleなどの検索対象となるため、Facebookユーザー以外にも見てもらえる。25名以上ファンが集まるとオリジナルのURLが付けられるのもうれしい点だ。

追加済みアプリの一覧。新しいアプリを追加したい時は、画面左の「アプリ」→「友達が使っているアプリ」か、アプリ一覧「アプリディレクトリ」(http://www.facebook.com/apps/directory.php)から目的のアプリを探す

日本企業のFacebookページ、中にはファン数十万人規模のところも

 日本でもFacebookページは続々と生まれている。アパレルブランドの「satisfaction guaranteed」は当初は都内に1店舗のみを展開する企業だったが、Facebookページによってアジアを中心に32万7100万人ものファンを集めており、シンガポールに出店した。このほか、4万5100人のユニクロ、3万4100人のファンを持つ無印良品、2万4600人のポンパレなど、1万人以上が参加するFacebookページが増えてきている(いずれも4月25日現在)。

satisfaction guaranteedのFacebookページ
http://www.facebook.com/japan.satisfactionguaranteed

ユニクロのFacebookページ
http://www.facebook.com/uniqlo

無印良品のFacebookページ
http://www.facebook.com/muji.jp

ポンパレのFacebookページ
http://www.facebook.com/ponpare.jp

 ただし、世界中で利用されているFacebookだが、日本ではローカルなSNSがシェアをとっている。Facebookのユーザーも今後増えていくと予想されるが、Facebookページを作ってもどのくらいの効果があるかのなかなか分からないのが現状だろう。

 そこで次回は、実際にファンページを開設・運営している国内企業にインタビューする。


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(高橋 暁子)

2011/4/27 11:00