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Wi-Fi機器開発現場へ潜入!! Wi-Fiがない時代から無線に取り組んできたフルノシステムズが作る「安定」して「切れない」アクセスポイント
- 提供:
- 株式会社フルノシステムズ
2026年3月30日 06:00
「“FURUNO”のWi-Fi? 船のレーダーじゃなくて?」。そう思う人も少なくないかもしれない。しかし、古野電気のグループ企業「フルノシステムズ」は、無線LANという言葉すらなかった時代から、自社開発での無線制御への取り組みを開始し、現在では文教市場を中心に「多台数接続」「安定通信」で高く評価される、知る人ぞ知るWi-Fiアクセスポイントメーカーとなっている。業界でも一目置かれる存在の同社製品が高く評価される理由を解き明かしつつ、徹底して品質を追求する開発現場の様子に迫る。
実は無線のパイオニア 5世代、6世代製品を使い続ける顧客も
日本の無線システム黎明期から、常に「現場」の最前線で求められる信頼性に応え続けてきた株式会社フルノシステムズ。そんな同社の無線技術のルーツは、1990年代のハンディターミナルにさかのぼる。
1984年、親会社の古野電気が「海」の船舶用電子機器技術を「陸」へと拡張するために設立したフルノシステムズは、1984年からハンディターミナルの開発を開始し、物流現場の課題と常に向き合ってきた。
株式会社フルノシステムズ 営業企画室長 平井好輝氏(以下、平井氏)は、同社の原点について、次のように語った。
「1990年代、物流センターで、無線でのデータ通信の取り組みを開始しました。当時はフォークリフトの作業もすべて紙の伝票でしたが、そこへフォークリフト搭載型の無線端末を導入したのが最初です。その後、無線機を小型化させることで、ハンディターミナルへと進化させました。当時のハンディターミナルと言えば、集めたデータを事務所まで戻って、有線接続してアップロードする方法がメインでしたが、これを『無線技術』によってリアルタイム通信に変えることで、事務所との往復時間をなくし、入出庫業務の劇的な効率化につなげたのがスタートです(平井氏)」という。
同社のウェブサイトに掲載されている歴史には、日本初の本格的な無線型ハンディターミナル「PI-82SS」や、当時は海外からOEM調達が当たり前だった無線LANアクセスポイントを自社開発した機種などが掲載されているが、Wi-Fiという言葉がない時代から、常に最新の無線技術を研究し、「自社」での開発、実用化に取り組んできたのがフルノシステムズとなる。
平井氏は続ける。「物流現場では、300人規模の作業員が同時にハンディターミナルを操作する場合もあります。このため過酷な『多台数同時接続』に耐える製品を開発する必要がありました。また、高温などの過酷な環境下でも安定して動作させる必要もありました。1時間の通信停止が多額の損失に直結する極めてシビアな世界のニーズに答えてきたのが、我々の事業の『体幹』になっています」という。
この多台数同時接続や安定通信に対しての高い評価は、その後、Wi-Fiアクセスポイントが市場に一般化し、文教市場でのIT化が進んだ時代に、さらに高まることになる。「2010年頃、教育市場に進出した際、教育現場ではせっかく導入したWi-Fiアクセスポイントに5台程度しか同時接続できないという状況に悩まされているというケースもありました。そこで当社の製品での検証、導入を進めたところ、クラス全員、40台の端末をしっかり接続でき、同時にデータを配信することが可能であることが分かりました。物流センターで培ったノウハウが、図らずも教育現場の『1人1台端末』という新たなニーズにも適合しました(平井氏)」という。
現在では、全国の小中学校や大手通信事業者でのOEM採用などで広く採用されている同社のネットワーク機器「ACERA」シリーズだが、その歴史は、現場の課題を解決するために自社技術を磨き続けてきた、同社の歴史そのものともいえる。
このため、古くからの顧客や根強いフルノシステムズファンは多い。平井氏によると、「私は入社して30年以上経ちますが、ありがたいことに、当初からのお客様が離れずに継続して当社製品をご利用いただいているケースも結構あります。大体5年から7年ぐらいで新しい機器に更新してもらうと、5世代、6世代と製品を継続してご利用いただいています」という。
同じ企業の製品を何世代にもわたって使い続けている、強い信頼を持った顧客が多いというのは、なかなか他社では聞けない話だ。
なぜ顧客はフルノシステムズを選び続けるのか?
過酷な物流現場からスタートして、製品を磨き上げてきた同社がACERAシリーズに課す品質基準のハードルは、市場の一般的な常識よりも一段高く、次のようになっている。
- 多台数(50〜80台)同時接続
- -10〜+55℃の温度耐性
- 密封構造(埃対策・引火防止)
- アルミダイキャスト採用(堅牢性+放熱)
- 電波が飛びにくい環境でも広くカバー
- 管理の手間を軽減する工夫
シールドルームと環境試験で多台数同時接続を検証
まずは、多台数同時接続から見ていこう。同社開発部 機器開発課 主任 中出賢太郎氏(以下、中出氏)は次のように語る。
「エンタープライズモデルに求められるのは、いかに切れず、広いエリアをカバーできるかです。我々は設計段階での多台数同時接続の担保はもちろんのこと、第一段階として外来ノイズを遮断した『シールドルーム』に数十台の実機(PC)を並べてさまざまな状況を想定した接続テストを実施し、次に学校の教室を模した建屋での『フィールドテスト』で実際の用途を想定した2段階目の検証を実施し、多台数同時接続が実際に問題ないことを、自らの手で確認し、最終的な製品として完成させます」という。
法人向けのWi-Fiアクセスポイントのスペック表などでは、よく同時接続台数として何百台という数字を見かけるが、これはチップベンダーなどがスペックとして掲示している値がそのまま流用されているケースもあり、現実的とは言えない。つまり、フルノシステムズは、あくまでも実機ベースでつながるかどうかを非常に重視していることになる。
実際、その検証も実践的で深い。「フィールドテストでの教室を模した環境における40台の同時通信テストでは、すべての端末を6GHz帯のみに接続したうえで、動画教材を想定したUDPパケットやTCPパケットでの実際の動画配信を実施し、スループットだけでなく、応答速度(レイテンシ:動画が開始されるまでの速度など)も検証します(中出氏)」という。
この実際の用途を想定したフルノシステムズのテストの環境は、Wi-Fiアクセスポイントのチップベンダーからも高く信頼されている。
同社開発部 ソフトウェア開発課 主任技師 山本洋介氏(以下、山本氏)によると、「実際の我々の検証の中で、チップベンダーも想定していなかったような性能的な課題が見つかるケースもあります。その場合は、チップベンダーへのフィードバックだけでなく、実際に協力して、より深いレベルからトラブルを解決するということもあります」ということだ。
ある意味、ユーザーが満足するWi-Fi品質を実環境でチェックする関門としてフルノシステムズが存在しているようにも思える。トラブル発生時に「ベンダーの仕様です」と責任転嫁をしない誠実さが、B2B市場における同社の信頼を盤石にしている理由だろう。
プラス5℃へのコダワリ
高速、高性能なネットワーク機器が増えてきたことで、昨今は、通信機器の「発熱」が話題になることも増えてきたが、この点も、フルノシステムズが強く注力するところだ。
同社開発部 機器開発課長 岡田学氏(岡田氏)は、「当社のACERAの動作温湿度範囲は、-10℃~55℃、10~90%RH(結露なきこと)となっています。学校の教室などでの利用なら、通常は55℃という上限までは不要かもしれません。ただ、夏休み期間、閉鎖された教室内の温度上昇なども想定しています。古くからこだわってきた温度耐性を示す電子機器としての信頼性を表す指標と考えています」という。
一般的にネットワーク機器は、コンシューマー向け製品で上限温度40℃前後、法人向け製品でも上限50℃というのが相場だが、フルノシステムズは「プラス5℃」高い「55℃」を上限にしている。
しかも、実際の試験現場(恒温室)を見学させてもらったが、実際のテストは「60℃」で実施されており、個人的に「どこまで自らの手でハードルを上げ続けるのか?」と呆気に取られてしまった。
なぜ、そこまでの動作環境に耐えられるかというと、本体の構造を工夫しているからだ。「ACERAシリーズでは、背面全体にアルミダイキャストを採用し、筐体全体で放熱する構造を採用しています。また、内部のアンテナを固定するための金属板も放熱に併用できるようにするなど徹底した熱対策を実施しています」という。
しかも、この高い熱耐性は密閉構造を維持したうえで実現されている。「放熱も重要ですが、その一方で、安全規格(IEC 62368-1)を満たすために隙間をなくした『密閉構造』を維持する必要があります。空気を流すスリットを開ければ放熱は楽になりますが、異物混入によるショートのリスクを避けるため、密閉構造を維持したままで熱対策を追求しています(岡田氏)」という。
この構造で「5℃」のマージンを持たせるだけでも厳しいが、実際の検証は60℃で実施しているのだから、恐れ入るとしか言いようがない。
設置場所を選ばない「オールマイティ」なアンテナ技術
Wi-Fiの要ともいえるアンテナ設計においても、独自の哲学がある。
中出氏によると、「当社は、海外のグローバルな巨大メーカーのように、細かな用途ごとに膨大なラインアップを揃えることはできません。しかし、だからこそ、1機種に、あらゆる用途を想定したアンテナ技術を詰め込む必要があります。具体的には、ダイポール型(無指向性)とパッチ型(小型の指向性)などアンテナの特性や、垂直・水平波のバランスを考慮して内部のアンテナ構成や配置を調整しています」とのことだ。
さすがに内部構成までは明らかにされなかったが、具体的には教室で利用した際などに遠い席など、隅々まで通信可能な工夫がなされているという。
「現場を困らせない」ためのキッティング・運用ソリューション
同社の徹底的に品質を追求する姿勢は、現場導入のしやすさや管理の容易さという点にも表れている。
前述したように、ハンディターミナル用の無線環境を、開発だけでなく、運用サポートまでカバーしてきた同社にとって、もともと現場レベルでの苦労を改善したいという切実なニーズがあり、それが現在の管理ツールやキッティングサービスに受け継がれている。
同社マーケティング部 企画室長 美﨑博史氏(以下、美﨑氏)は、「初期IPアドレス設定不要のセットアップツールや、USBメモリを差し込むだけで完了する初期設定機能を開発しました。これらは、ネットワーク技術者や管理者がいない現場でも『専門の技術者不要』で設置できるようにするための工夫です。スイッチに繋ぐだけで設定が流し込まれる『ポートコンフィグ』もその1つです」という。
法人向けというと、コマンドでの設定、現場での作業、というイメージをしている人もいるかもしれないが、フルノシステムズの製品であれば、複数用意された簡単な設定方法によって、さまざまなニーズに対応できる。
「私も実際にパートナー様のサポートをした経験がありますが、 やはりパートナー様や現場の担当者様に近い存在でありたいと思っています。これまでの経験で得たたくさんのご要望や、自分たちが考える不便性などを、開発チームにぶつけながら製品企画をして、実際の製品につなげている状況です(美﨑氏)」という。
今後もユーザーに寄り添う進化を
このように、特定分野ではすでに確固たる地位を確立しているフルノシステムズだが、今後はより広い範囲に製品を届けることも想定しているという。
同社営業企画室 担当部長 淺沼和之氏(以下、淺沼氏)によると、「コンパクトなオフィスやカフェ、レンタルスペースなど、より小規模な環境でもフルノシステムズの製品を使いたいというニーズがあります。こうした声にこたえるために、現在、新製品の開発も進めています」という。どうやら、今回紹介したフルノシステムズ製品としてのDNAを継承しつつ、新しい顧客層にも響く製品となっているようなので、今後の同社の動きも楽しみだ。
5世代、6世代にわたって長く製品を使い続ける顧客が多い、という事実が、同社製品の信頼性を物語る。そして、それに応えていこうとする同社のコダワリが、これからも日本のさまざまな現場を力強く支え続けていくと期待できそうだ。






















