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9月26日に再審判決を予定する「袴田事件」の過酷な取り調べをVRで追体験できるアプリ、静岡新聞社が提供

 静岡新聞社は8月26日、現在の静岡市清水区で起きたいわゆる「袴田事件」において、過酷な取り調べを追体験できるMetaQuest用のVRアプリ「『最後の砦』VR」(通称「VR袴田事件」)をリリースした。Metaの公式ストア(AppLab)で無料でダウンロード可能。

 袴田事件は、1966年6月に静岡県で起きた強盗殺人・放火事件で、1980年に袴田巌氏の死刑判決が確定。しかし、袴田氏らは冤罪を主張し、2014年に再審請求が認められた。その後東京高裁による再審棄却などもあったが、2023年10月に再審公判が開始。2024年9月26日に、静岡地裁で再審判決公判が予定されている。

 タイトル「最後の砦」は、同社が2022年12月31日付朝刊~24年6月27日付朝刊にわたって連載した記事「最後の砦 刑事司法と再審」、および、関係者の「再審は冤罪救済の最後の砦」との発言にちなむ。アプリの内容も連載をもとにしており、同事件の概略から取り調べの様子、再審までの道のりを知ることができる。

 再審公判中の袴田氏が受けた警察署の取調室を、取材班が入手した当時の写真や図面をもとに3Dモデルにした。さらに実際の音声データを使って当時の取り調べの一部を再現。ユーザーは当時の取り調べで、袴田氏の発言を選ぶことで、没入感を高めることができるという。

アプリでは袴田事件の概略も学べる
取り調べ体験の画面
袴田氏の発言が選択肢として表示される

 再審判決は海外からも注目されていることから、アプリは英語にも対応し、袴田事件や再審問題に詳しいハワイ大のデイビッド・T・ジョンソン教授のネイティブチェックを受けている。

 同社では、VRアプリを通して、自白強要を主眼とした当時の取り調べの問題点や、日本の再審問題、そして9月26日の再審判決公判について、一人でも多くの人に関心を持ってもらえることを願うと述べている。