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山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿
2009年3月

 本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国在住の筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわるニュースやトレンドを、政府が絡む堅い話から三面記事まで幅広くレポートしていきます。


中国からYouTubeへアクセス不能に

Googleビデオの画面。右のサムネイル画像は表示されるが、左の動画表示部分は枠のみで動画は表示されない

 3月23日から中国からのYouTubeへのアクセスができなくなった。この記事が掲載された4月6日14時時点も、中国からYouTubeへアクセスできない状態が続いている。

 また、Google動画検索サービスについては、中国からアクセスは可能だが、サムネイル画像しか表示できない状態だ。他の動画共有サイトについても、中国政府が「問題のある動画」と認識する動画について削除していると報道されており、政府の方針と見られる。

 4月に入り、こうした状況について中国外交部は「中国のインターネットは充分開放されており、中国政府は法に基づきインターネットを管理する。見られる内容なら見られるし、見られないなら見るなということだ」とのコメントを発表している。


百度への不信度が高まり、グーグルが伸びる~検索市場シェア

 3月10日、百度(中国)の日本法人は、社名表記をカタカナの「バイドゥ」に変更した。同時にバイドゥのスタッフを2倍に増強、百度(中国)の人気サービスであるナレッジコミュニティの「百度知道」日本版をリリースするというコメントがさまざまな中国メディアで報じられた。

 日本市場での市場拡大に取り組む一方で、メインマーケットである中国市場でのさらなるシェア拡大にも注力している百度だが、ここにきてグーグル中国がシェアを伸ばしてきている。

 中国のリサーチ会社iResearchが3月10日に発表した調査報告によれば、2008年第4四半期の検索総数のシェアは百度が前年比2.1%減の72%、グーグル中国が前年比5.6%増の23%と、まだ圧倒的なシェアの差はあるものの、この四半期で8%近くも差が縮まっている。

 こうした背景には、百度に関する疑惑や事件がこの四半期で出てきたため、イメージダウンが利用者減に繋がったと見られている。同調査で各検索サイトへの忠誠度を調べた結果でも、忠誠度はグーグル中国の利用者が最も高く、百度の利用者では前回調査から大きく忠誠度が下がり、シェアの非常に小さな中国産検索サイトよりも下という結果になった。

 百度は中国国内での今後の展開として、今後利用者人口が増加する農村市場に目を向けている。百度の農業漁業牧畜業などからの広告収入は、百度の内部データによれば、去年の同四半期と比べて2倍となっているという。

 一方でグーグル中国は、3月30日に百度が独占していた音楽検索サービスに参入し、さらなるシェア拡大を目指す。グーグル中国はワーナー、ユニバーサル、EMI、ソニーミュージックらと提携し、著作権問題を一挙に解決したと胸を張る。

 iResearchの前述の調査結果によれば、海賊版音楽がもっと人気だった2年前は、百度の音楽検索サービスへの検索数が全検索数の94.3%を占めていた。グーグル中国がこの市場に参入することで、両社の市場シェアの割合がさらに変わっていくかもしれない。


温家宝首相、ネット利用者からの質問に「ネットは1日1時間」

 2月28日午後3時、中国の温家宝首相が、サイト「中国政府網」と「新華網」のチャットルームに入り、両サイトによる取材を受け、インターネット利用者とチャットで交流した。最近になって、温首相がインターネット利用者とネットでコミュニケーションをしたというニュースを時々目にするようになっている。

 同首相は「(自身が)インターネットを1日最長1時間程度している」「インターネットでさまざまな意見を耳にしている」「中国国内の問題は山積みで責任は重大」などとコメント。インターネット利用者にアピールした。


国営テレビ「CCTV」らが、大学生にオンラインショップ起業を薦める

 中国でも不況による大学生の就職難の問題がクローズアップされている。こうした背景を受けて、中国で最も人気のオンラインショッピングサイトである「淘宝網(Taobao)」で起業することを薦める政府論調が出始めた。

 3月4日、全国ネットの国営テレビ「CCTV」で大学生の就職難の問題をテーマとする番組が放映された。「大学生が会社を設立しようとするのは経済的条件などから非現実的。だったら淘宝網に店を開くことを薦める。まずオンラインショッピングサイトでお金を稼いで、起業できる資金を貯まったら起業がすればよいのでは」という趣旨の内容だった。

 その5日後、3月9日に中国科学院南京分院院長の周健民氏もまた「淘宝網で店を開店して起業する方法は、知識などの面で大学生に有利」と取材に対してコメントしている。

 統計によれば、2008年中国全土で1000万人が失業しているが、2009年には600万人超が大学を卒業し、就職市場に流れ込む。その一方、中国のリサーチ会社iResearchによれば、淘宝網により57万人が同サイトの店舗スタッフとして就業しており、2012年までには200万人の就職を同サイトが助けるだろうと予測している。淘宝網自身も、17の大学と提携し、淘宝網でオンラインショップを経営するための能力を学生に身につけさせる活動を行っている。

 ちなみに、中国ではCCTVが市民やインターネット利用者に与える影響力は強い。たとえば、3月15日にCCTVではトロイの木馬の危険性について紹介する報道番組を放送した。トロイの木馬は、クライアントソフトを使うことでいつでも個人情報を盗むことから、同番組ではトロイの木馬の被害にあったPCを、「肉鶏(ブロイラー)」と比喩したが、「肉鶏」の表現はこの番組の放映後すぐにインターネット上で普通に使われる用語として定着した。


ニセの漢方薬機構サイトが一斉摘発される

 漢方薬に関する国家機関である中国国家中医薬管理局が、46のニセの漢方薬機構サイトが一斉摘発されたと発表した。コメントによれば、主に「中華~」や「中国~」など“誇大な名称”を名乗るニセの漢方薬機構の広告からブラックリストを作成して政府の漢方薬サイトに提出。インターネット関連を扱う中国政府工業和信息化部(工業と情報産業省)によって「問題が処理された」。合わせて、中国国家中医薬管理局は「ニセ漢方薬サイトに騙されないように」、と利用者に対し呼びかけている。


作家協会副主席「ネット文学をもはや拒絶できない」

 3月26日、IT系ニュースサイトの「比特網」は、中国作家協会の副主席である張抗抗氏の「伝統的な作家はもはやインターネットを拒絶できない」というコメントを紹介した。

 多くのインターネット利用者が、インターネット上の(海賊版非海賊版問わず)文学作品を読む中国では、映画やドラマなどの動画コンテンツや、音楽コンテンツで日常的に発生する著作権トラブルが、文学作品でも同様に日常的に発生している。そのような状況だが、同氏は「伝統を継承すると同時に、新しいものを作り続け、いろんな形式での公開を試すべきである」とコメントしている。


中国動画共有サイト、人気中国産コンテンツを正規配信で火花

 日中戦争をテーマにした長編ドラマ「我的団長我的団(中国では略して『団長』と呼ばれる)」の放送権を巡って、テレビ局だけでなく、動画共有サイトの間でも争奪戦となった。当初、ある動画共有サイトが「団長」の放映権を獲得し、テレビ放映後から6日後にオンライン配信することが決まり、そのように広告も流していた。

 ところが、テレビでの公開初日に数多くの動画共有サイトに海賊版の「団長」がアップロードされ、複数の報道によればさらにテレビ局側の圧力があったという。このため、オンライン配信直前で権利の一方的破棄をコンテンツホルダーが決定。

 その後、中国の3大動画共有サイトの「優酷網(YOUKU)」、「土豆(TUDOU)」、「酷6」がそれぞれ「団長」のオンライン放映権の権利を獲得に動き、最終的には3サイトとも送権を獲得することで決着した。

 中国でも、2008年下半期から、中国のコンテンツホルダーが権利を保持するドラマや映画などから放映権を得た、正規版の動画コンテンツが登場するようになった。コンテンツに対して複数の動画共有サイトが放映権を獲得競争をすることはまだ珍しい上、テレビ局と動画共有サイトの運営会社との間で、業界の垣根を越えてコンテンツの争奪戦となる大きな事例は今回が初めて。

 正規版動画コンテンツが表でアピールされる一方で、動画共有サイトの海賊版配信訴訟などの話題も絶えない。たとえば、4月に入って、動画教諭サイト「優酷網」を海賊版配信で訴えたコンテンツホルダーが裁判で50万元の損害賠償を認められたニュースが報じられた。

 ちなみに、テレビ局でも、結果的に複数の放送局が「団長」を放映することになった。その結果、放送局によってCMのタイミングや、各回の放送時間が異なるため、複数の放送局を利用して「団長」を観ると話がところどころわからなくなるという状況が発生。その解決策として、ネット上の原著を読もうとする人がどんどん増えてきているという。


中国製Google Earth「影像中国」が本家に挑戦状

 3月12日、中国測絵科研院の研究員である李成名氏は、グーグル製ではない、中国製のGoogle Earthのようなバーチャル地球儀ソフト「影像中国」を開発していることを発表した。

 同ソフトは中国における、Google Earthの対抗馬的存在になることを目標としている。発表内容からは、中国の衛星写真や航空写真を利用し中国をカバー、解像度はGoogle Earthとほぼ同じで、標準的なものは農村部を中心に15m、各都市部では2.5~5mの解像度を実現するとしている。また中国にとって地図公開が問題となる“敏感な地域”については、画像処理を施しているという。


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(2009/04/06)


  山谷剛史(やまや・たけし)
海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。

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