ユーザーに意識させることなくIPv6デフォルト提供を、総務省が報告書


 総務省は7月31日、同省が開催している「IPv6によるインターネットの利用高度化に関する研究会」がとりまとめた「第三次報告書プログレスレポート」を公表した。

 研究会では昨年12月に「第三次報告書」をとりまとめ、日本におけるIPv6インターネット接続サービスの利用拡大に向けて求められる方策について示していた。今回のプログレスレポートは、この第三次報告書をフォローアップするもの。指摘されていた課題の対応状況について検証するとともに、今後、利用拡大をさらに加速するために必要な重点課題などを示した。

7月17日に開催された「IPv6によるインターネットの利用高度化に関する研究会」の第22回会合

 まず、第三次報告書では、ユーザーメリットが少ない現状においてIPv6インターネット接続サービスの利用を拡大させるためには「IPv6インターネット接続サービス利用時の料金水準は、IPv4のみによる利用時と比べて同等程度以下であることが望ましい」とし、機器設定や申し込み手続きといったユーザー負担も含めて軽減することを求めていた。

 これを受けて、FTTHサービスの「フレッツ 光ネクスト」を提供するNTT東西や、同サービスに対応するISPでは今年に入って協力して対応を推進。フレッツ 光ネクストのユーザー向けに提供しているIPv6インターネット接続サービスについて、初期工事費の無料化や対応アダプターの低廉化、申し込み方法の簡素化などが一部のISPから徐々に実現しつつある。

 ただし、利用するにはユーザーからの申し込み手続きがまだ必要な状況であるとして、今回のプログレスレポートではさらに推し進め、「通信事業者等は、IPv4インターネット接続サービスの提供に併せて、IPv6インターネット接続サービスを、利用者に意識させることなくデフォルトで提供していくことが望ましい」と指摘。関係事業者がスケジュールを共有しながら、早期解決に向けて協力しながら取り組みを進めていくよう求めている。

 なお、KDDIのFTTHサービス「au ひかり」についてはすでに昨年4月より、追加料金や機器設定、申し込み手続き不要でデフォルトでIPv6にも対応しており、今年度中に提供範囲を全国に拡大する予定だ。

 プログレスレポートではこのほか、こうした固定網やISPに加えてモバイル回線や、さらには接続サービスだけでなくウェブサイト側の対応の必要性についても言及している。「IPv6インターネット接続サービスの利用拡大に当たっては、NTT東西やISP等の通信事業者の取組のみならず、今後、大幅な利用拡大が見込まれるモバイル事業者や、実際に利用者がアクセスするウェブサイト等のIPv6対応も重要であることは言うまでもない」としている。

 プログレスレポートをとりまとめた研究会が7月17日に開催した第22回会合では、事業者間のコスト負担をどうするのかといった部分にまで踏み込まなくては実際には普及しないのではないかとして、総務省にもう一歩踏み込んだ取り組みを求める意見も挙がった。一方で、「デフォルト提供が望ましい」との方向性は研究会に参加した民間事業者側から挙がってきたことを指摘・評価するとともに、あくまでも料金は事業者間協議により決めるものであり、インターネット分野の方策に国(総務省)が口出しすることには慎重であるべきとの意見もあった。


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(永沢 茂)

2012/8/1 20:17