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「楽天kobo」ファーストインプレッション


 楽天の新たな電子書籍サービス「楽天kobo」がスタートした。楽天が2011年11月に236億円で買収を発表したカナダの電子書籍事業者「Kobo」のサービスを日本国内でも展開するもので、全世界では約240万冊を超える豊富なラインアップが特徴。サービス開始時には専用端末「kobo Touch」を7980円という価格で販売するということでも注目を集めている。実際にkobo Touch」と楽天koboを利用し、その使用感をレビューする。

電子ペーパー採用の6インチディスプレイを搭載

 楽天koboのサービス開始と同時に発売されたkobo Touchは、本体サイズが165×114×10(縦×横×厚)mmと新書サイズの大きさで、厚みもiPadとほぼ同程度と小型の電子書籍リーダーだ。重量は185gで、少年コミックの単行本よりも多少重みはあるものの、200gを切る重量は非常に持ちやすい。

 ディスプレイはE Ink社6インチタッチスクリーン電子ペーパー「Pearl ディスプレイ」を搭載し、ホームボタンや電源ボタン以外はすべてタッチ操作で行なう。本体メモリは2GBで、そのうち1GBがユーザーの使用領域として割り当てられている。

楽天が19日に発売した「kobo Touch」。標準価格7980円

 インターフェイスは本体下部にmicroUSBポート、左側面にmicroSDカードスロット、本体上部に電源スイッチ、本体前面にホームボタンを搭載。下部のmicroUSBポートは充電端子も兼ねており、PCやコンセントなどから充電が可能だ。

底面にmicroUSBポート 左側面にmicroSDカードスロット。ラベルは上にして装着
本体上部に電源スイッチ 手に持ったところ。片手でぎりぎり持てる程度の大きさ


初回利用時にはPCを利用したセットアップが必須

 

 本体利用時は、はじめにPCを利用したセットアップが必要だ。kobo Touchの電源を投入して言語を選択。kobo Touchがセットアップ待機画面になったら、PCから< http://rakuten.kobosetup.com/ >へアクセスしてデスクトップアプリをダウンロードする。アプリはWindows 7/Vista/XP、Mac OS X 10.5以降に対応しており、OSに応じてアプリをインストールしたのち、付属のmicroUSBでPCと接続、デスクトップアプリからセットアップを開始する。

初回起動時に言語を選択 PCと接続してセットアップするよう促される
サイトからOSに応じてソフトをダウンロード セットアップ開始画面
USBで接続中のkobo Touch画面

 セットアップ時には楽天IDの設定に加え、任意でFacebookアカウントを登録することが可能。セットアップが完了すると初期状態で登録されている青空書籍のデータが同期され、これが完了したタイミングでPCからkobo Touchを取り外すとさらに本体側がアップデートを実施。数分程度待つといよいよkobo Touchの利用が可能になる。

利用には楽天IDが必要 任意でFacebookアカウントも設定できる
セットアップ後にデータを同期 マイライブラリのデータが同期された後、USBで接続したkobo Touchへデータが転送される
PCから取り外すと初回アップデートを実施。完了には数分程度かかる アップデート後はリリースノートを表示

 セットアップにPCが必要ではあるものの、マニュアルを読み進めていけば作業自体はさほど難しくない。楽天koboのサービス開始日はサーバーへのアクセスが混雑したためにセットアップがうまくいかないユーザーも多かったようだが、7月21日時点では問題なくセットアップが完了した。


書籍のラインアップは海外が中心。日本語書籍は2万件以下

 セットアップ完了後の初期状態では「フランダースの犬」「銀河鉄道の夜」「源氏物語」「吾輩は猫である」「走れメロス」「風の又三郎」「坊ちゃん」がプリインストールとして用意されている。これ以外の本を読むには楽天koboから書籍を購入する必要がある。

 書籍の購入方法は楽天koboのデスクトップアプリ、ウェブサイト、kobo Touch本体からの3種類。デスクトップアプリとウェブサイトから購入した場合はアプリを利用してkobo Touchへデータを転送する必要があり、kobo Touchから購入した場合は当然ながら直接ダウンロードが可能だ。なお、kobo Touchからの購入はホーム画面左上に表示される歯車アイコンから「設定」を選び、「ワイヤレス接続」から無線LAN接続を設定しておく必要がある。

楽天koboのウェブサイトトップページ kobo Touchの無線LAN設定画面

 デスクトップアプリとウェブサイトはほぼ同様のインターフェイスで、トップページには「映画化・ドラマ化・アニメ化」「芥川賞・直木賞受賞作品」といった特集のが用意されているほか、ジャンル別に購入できる書籍が分類されている。右上の検索ボックスから欲しい本のタイトルや作家名で検索することも可能だ。

 なお、初期状態では検索の絞り込みができないが、キーワードが空の状態で検索を行なうとより詳細な検索が可能。ジャンルに加えて言語の指定が可能なほか、ePUBやPDFといったファイル形式、音声付作品などのフィルター機能、価格や人気による並び順変更も行なえる。

 初期状態の検索結果は250万件以上と非常に多いのだが、実際はこの大半が外国語の書籍だ。言語を日本語に絞り込んだ状態での検索結果は1万9210件(7月21日時点)で、さらに「無料作品」で絞り込むと1万2537件となり、日本語かつ有料販売されている書籍は差し引き6600件程度ということになる。

 たとえば、大手電子書籍サイトの1つである「BookLive!」は総タイトル数で6万以上、冊数で8万以上を販売していることを考えると、1万を大幅に割り込む書籍数は、サービス開始直後とはいえ少ないと言わざるを得ない。

日本語書籍の検索結果は2万件以下

 実際に著者名などで検索した場合、「赤川次郎」はBookLive!が210件に対して楽天koboは16件、「伊坂幸太郎」はBookLive!が17件に対して楽天koboは3件、「石田衣良」はBookLive!が34件に対して楽天koboは13件。また、ジャンルで見た場合「ライトノベル」はBookLive!が1330件に対して楽天koboは402件だった。

 なお、楽天koboの小説カテゴリーは有料のもので3000件近いが、他に「コミック・グラフィックノベル」というカテゴリーがあるにも関わらず、小説カテゴリーの中に「テルマエ・ロマエ」「宇宙兄弟」「進撃の巨人」などコミックが含まれている。これを考えると実質的な小説のタイトル数はさらに少ないだろう。

 すべての電子書籍サイトを比較したわけではないが、普段からスマートフォンで電子書籍サイトを購入している身からすると、楽天koboのラインアップは現状きわめて少ないと言わざるを得ない。発表会ではサービス開始時に3万点を取りそろえるとしていたが、現時点では無料タイトルを含めても2万件を切っており、今後の速やかなタイトル拡充を期待したいところだ。


購入には楽天IDが必要。購入手順は手軽

 有料書籍の購入にはセットアップの時に登録した楽天IDが必要。決済は楽天IDに登録されているクレジットカードで決済を行ない、現在のところクレジットカード以外の決済は用意されていない。ただし、これまで楽天の各種サービスで蓄積している楽天ポイントも利用して書籍を購入することは可能だ。

 購入フローもは欲しい本を見つけたら「購入する」をクリックし、楽天に登録されているカード情報などの表示を確認した上で再度「購入する」をクリックするだけと非常にシンプル。購入するとライブラリを更新するよう促され、ウェブサイトで購入した場合もデスクトップアプリを更新すると購入した書籍がアプリ側へ反映される。

購入画面 購入時の情報を確認した上で再度「購入する」をクリックするだけで購入が可能
購入した書籍はデスクトップアプリを更新すると反映 デスクトップアプリの反映画面

 書籍を購入後はkobo TouchとPCをmicroUSBで接続し、kobo Touchの画面に表示される「接続」をタッチするだけで自動的にライブラリ内のデータが転送される。電子書籍データはサーバーで管理されており、複数のPCにアプリをインストールしてもライブラリは同期され、異なるPCを使ってもkobo Touchへのデータ転送が可能だ。


タッチ操作のレスポンスは良好

 購入した書籍はkobo Touchのホーム画面に「読書中」として表示される。ホーム画面には直近に開いた書籍または購入直後の書籍が表示される仕組みで、以前に購入した書籍などは「ライブラリ」からアクセスする。

ライブラリ画面。直近で読んだ本や購入した本が表示される 購入した書籍を表示

 本を読む際は画面の左端をタッチすると次のページへ進み、右端タッチでページを戻る、中央タッチでメニューを表示。また、画面上を左から右へと「めくる」感覚でスワイプしてもページめくりが可能。大量にページを移動したい時はメニューからゲージをタッチして移動できる。

画面中央をタッチするとメニューを表示 ページ送り機能
フォントサイズやフォントの種類を切り替えられる タッチエリアは設定で変更が可能



【動画】kobo touchの操作感

 ページを移動する際は電子ペーパーならではの切り替えで、画面の白黒が反転してから次のページが表示される。初めのうちは違和感を感じるかもしれないが、いったん本に集中してしまえばさほど気にはならない。このあたりは慣れで解決できると感じた。

 読書の際のレスポンスは良好で、画面の切り替わり速度もさほど気にならない。文字はややにじんだ感はあるが視認性は高く、フォントサイズが小さくとも読みやすい。フォントサイズやフォントの種類もメニューから切り替えがなほか、目次からのアクセスや本文検索なども可能になっており、電子書籍リーダーとしてはシンプルながら使いやすい。

 読書中にホームボタンでホーム画面に戻ると、読んでいた箇所が自動で保存され、次回アクセスした際にも続きから読み始められる。また、一定時間操作がないとスリープモードに移行するが、その際には直前まで読んでいた本の表紙が表示される。表紙を表示したくない場合は設定からオフにすることも可能で、その際は「スリープモード」という文字と眠っているkobo Touchのアイコンが表示される。

スリープモード時の表示。通常は読書中の表紙が表示されるが、表紙設定をオフにするとスリープ専用画面になる


読書以外の機能が充実もタッチ操作に難あり

 kobo Touchには読書以外にもさまざまな機能が用意されている。画面中の任意の文字を長押しすると長押しすることで、内蔵されている大修館書店の辞書データを使って単語の意味を調べたり翻訳することできる。また、長押し時に表示される選択ツールを利用して、気になる文章をハイライトして保存したり、コメントをつけておくことが可能だ。

単語を長押しするとその意味を説明
指定した文章にコメントをつけられる 指定した文章をハイライト表示

 ただし、機能として備わってはいるものの、タッチの判定が厳しく操作は非常に難しい。思った文字や単語を指定して検索できないだけでなく、ドラッグ操作でラインを移動するのも追従性が悪く非常に扱いづらい。機能として備わってはいるものの、実用には難しいレベルと感じた。

 なお、ページ単位のメモであれば、画面の右上をタップすることで右上の表示がいわゆる「ドッグイヤー」状態に折れ曲がった表示になってしおりを設定することができ、メニューの「書き込み」からアクセスが可能。こちらのほうが使い勝手は良さそうだ。

コメントやハイライト、しおりを設定したページへアクセスできる


ソーシャル連携やゲーム要素も充実


 特徴的な機能としてはFacebook連携機能も備えており、あらかじめFacebookアカウントと連携しておくことで今読んでいる本をFacebookに共有したり、読み終わったことをFacebookに投稿することが可能。内蔵のキーボードとIMEを使って好きなコメントと共にFacebookへ投稿できる。

Facebook連携機能 コメントをつけてFacebookへ投稿できる

 また、書籍を読み始める、読み終わる、長押しなどの操作方法を初めて利用する、などのアクションの際にはバッジが発行される、「Readling Life」というゲーム的要素も搭載。こうしたバッジの発行もFacebookに投稿できるなど、Facebookのみではあるがソーシャル連携が非常に充実している。

Reading Lifeオプションは初回からオンになっている 新しいバッジを入手すると画面下部に表示
バッジを入手したことをFacebookへ投稿できる 取得したバッジの一覧画面

 書籍を読んだデータも自動で記録され、読んだ時間やページ数のほか、全体の読み終えた本や総読書時間、自分のライブラリの何%を読み終えたかという読了率も後出確認できる。

読書データの表示


kobo Touchからの書籍購入も可能。レコメンド機能は今ひとつ

 書籍の購入自体もkobo Touchから可能だ。「本を探す」からは特集やジャンル、ストアの検索が利用可能なほかウェブサイトやデスクトップアプリにはない機能としてリコメンド機能も搭載。ホーム画面に表示される「ディスカバリー」にはオススメの本が表示されるほか、「関連した本」機能からはすでに購入済みの書籍に関連した書籍を表示する機能を搭載している。ただし、現在はラインアップが少ないためか、購入した書籍の関連した本が「見つからない」と表示されることが多かった。

お薦めの本を表示する「ディスカバリー」機能 ジャンルや特集、検索からも購入できる
購入した書籍から関連した書籍を表示する機能。残念ながら現状はほとんど表示されない 購入画面
特集もテキスト表示ながらkobo Touchから表示できる


microSDカードで外部ファイルも閲覧可能

 楽天koboから購入した書籍以外でも、PDFやDRMのかかっていないePUB形式ファイル、JPEGファイルなどをmicroSDカードに保存して閲覧することが可能。手持ちのmicroSDカードとファイルで試したところ、ePUBファイルは初期状態では文字化けして読めなかったが、フォントを「モリサワ ゴシック MB101」「モリサワ リュウミン」などに切り替えることで表示できた。

microSDカードに保存したデータも閲覧可能。ePUBのほかPDF、JPEGファイルも表示できる 手持ちのePUBを表示。標準フォントでは表示できない
フォントを切り替えることで表示できた JPEG画像も白黒ながら表示できる
PDFを表示

 基本的な操作方法は購入した書籍と変わらないが、ファイルによっては読み進める方向が異なる場合もある。また、Facebook連携機能は楽天koboの書籍のみ対応のようで、外部ファイルは利用できなかった。一方、文章のマーキングなどは外部ファイルの場合タッチ操作の反応が良くドラッグ操作で設定しやすい。このあたりはファイルサイズや形式などにも関係がありそうだ。


ソーシャル連携など機能は充実も書籍と端末数の少なさが課題

 海外ですでにサービスを展開しているということもあり、楽天koboの仕組みそのものはクオリティが高い。デスクトップアプリはWindowsとMacの両方に対応しており、データはサーバーで同期するため複数のPCで同時利用が可能。ログインした状態であれば最短2クリックで書籍が購入できる手軽さも魅力だ。

 現時点での課題は楽天koboというサービスではなく、圧倒的な書籍数の少なさと、対応端末がkobo Touchに限られる点だろう。筆者自身普段からスマートフォンで電子書籍を読んでいるが、既存のサービスよりもラインアップが圧倒的に少なく、さらに専用端末をもう1台持ち歩かなければいけないというハードルは高い。kobo Touchは低価格ながら電子書籍リーダーとしてのできはいいものの、ハイライト機能や辞書と言ったせっかくの機能がうまく使えないのは残念だ。

 とはいえ対応端末としては今後iOSやAndroid向けのアプリも予定されており、サービスの拡充に合わせて専用端末のラインアップ拡充も期待できる。また、Facebook連携などは国内の電子書籍サービスの中では珍しく、友人や知人が読書中の本や読了した本などをFacebookを通じて知ることができる、というのは読書の機会を広げる意味でも非常に面白い。もっとも重要である電子書籍のラインアップ拡充も含めて、今後の展開を期待したい存在だ。



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(甲斐 祐樹)

2012/7/24 06:00