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情報には価値があることを知ってほしい ~未来検索ブラジル社長 深水英一郎氏&創業社長 竹中直純氏(後編)
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■未来検索ブラジル創業~現在まで
前編では、未来検索ブラジルの創業者兼前代表取締役社長であり、2ちゃんねるIRC管理人でもある竹中直純氏と、現・代表取締役社長であり「まぐまぐ」の開発者としても知られる深水英一郎氏に、それぞれ未来検索ブラジル創業以前のお話を伺った。後編では、未来検索ブラジルの誕生から、今後の展望までをお聞きしていく。
● 未来検索ブラジル誕生
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「未来検索ブラジル」の社名は映画「未来世紀ブラジル」のタイトルを一部借りて社名にした。よりよい情報管理を目指す会社だが、「あらゆることには良い面と悪い面の両面がある」というメッセージが込められている
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竹中氏:
2ちゃんねるが大きくなってきた2001年頃のことで「digitiminimi」のスタッフの間では、「2ちゃんねるには検索機能がないけど、あったら便利だね」という話が出ていました。
その頃僕は雑誌に連載を持っていて、ひろゆきと対談することになりました。そこで、対談の時に彼に「2ちゃんねるで困っていることはないか?」と聞いたところ、「検索」という答えが返ってきたのです。そこで、「いろいろなことができると思うから、何か一緒にやらないか」と誘ってみたわけです。
それなら独立した会社にした方が早いだろうということで、会社を作ることに決めました。それが未来検索ブラジルで、2003年のことです。最初に取り組んだのが、2ちゃんねるを検索するサービスを作ることでした。
映画「未来世紀ブラジル」は情報社会へのアンチテーゼがテーマですが、これは僕たちが目指している良い情報管理を裏側から見た図だね、ということから、映画の名前を一部借りて社名をつけました。
いま話題のGoogleのストリートビュー機能も、便利と思う人と怖いと思う人がいます。確かに悪いことにも使われるかもしれないのですが、同時に便利さも提供する。そのように、「あらゆることには良い面と悪い面の両面がある」というメッセージも込めているんです。
● 検索技術で次々と活躍
竹中氏:
初期の頃はまだ従業員がいなくて、創業メンバーの3人だけで全員プログラムが書けるので、それぞれが好き放題にスクリプトを書いていましたね。
当時はライブドアが元気な頃で、セグメンテーションされた検索サービスはサービスになると思う我々と、グーグルを超えたいライブドアの堀江元社長との需要と供給がマッチしたのです。ライブドアはブログサービスを始め、そこに我々が検索サービスを提供しました。
ブログ検索が役に立つことは証明できたはずだと思っています。その後ライブドアからは手を引いたものの、やっぱり検索はビジネスになると思いました。
ニワンゴが設立されたのがちょうどこの頃です。ドワンゴと新しいサービスをしようとひろゆきと僕とでドワンゴに通い詰めた結果、ニワンゴを立ち上げることになったのです。ニワンゴの資本の2割が未来検索ブラジルなのは、僕らが立ち上げに関わっているからです。
ニワンゴは、今ではニコニコ動画の会社として知られていますが、もともとメールに特化した情報配信サービスの会社です。メールと検索サービスを組み合わせることで、新たな価値が提供できると考えたのです。僕らのような、古くからインフラ構築に関わってきた、いわば下支えの技術者と、そうしたインフラの上に新しいアプリケーションによるネット文化を広げた新しい世代の技術者と、両方がいる会社がニワンゴです。古い方の代表が自分、新しい方の代表がひろゆきです。
2005~2007年までは、僕はタワーレコードで取締役兼最高情報技術責任者(グループCTO)を務めていました。伏谷前社長に技術担当で呼ばれたためで、それをきっかけに、未来検索ブラジルの社長は深水さんに交代してもらうことになりました。
● やることがなかった社長職
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「ところが、入ってみたらやることがないんですよ。社長とは名前だけで、何かトラブルがあった時に警察に捕まるための要員でした(笑)。」
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深水氏:
「ひろゆきが検索でおもしろいことをしている」と聞いたのが、未来検索ブラジルを知ったきっかけです。竹中さんとかも参加していると聞いて面白そうだと感じたので、自分も会合に顔を出すことにしました。「モリタポの名前を決めるぞ会議」にも出ています。社名を決めた時と同様、この時もひろゆきが寝ている時に決まったんですよね(笑)。
はじめはすぐに経営に加わるようなつもりもなかったし、そういう話ではなかったんです。ところが、竹中さんがタワレコに招かれて行くことになったので、「社長が必要になったのでどうか」と声をかけられたんです。
当時、2ちゃんねるは今よりも胡散臭いものとして捉えられていたので、あえて入る人はそんなにいなかったのでしょうね。僕自身は2ちゃんねるの価値を認めていたし、そこに集まったメンバーは尊敬する人ばっかりだったので、入ることにしました。2005年のことです。
ところが、入ってみたらやることがなかったんですよ。社長とは名前だけで、何かトラブルがあった時に警察に捕まるための要員でした(笑)。
● 徐々に拡大、「普通の会社」へ
深水氏:
最初は従業員はほとんどいない状態で、会社としての場所もなく、間借りしている会議室的なスペースしかありませんでした。それぞれ間借りスペースや自宅で開発しており、みんなが集まるのはせいぜい月に1回程度。そんな時にディジティミニミの入っているビルのフロアが空いたので、会社として借りることにしたのです。これでやっと見た目も会社っぽくなったわけです。
場所が確保できたので、人を増やそうということになり、そこから順調に社員を増やして、今は12人になりました。週に1回は役員も含めて15人くらいが集まります。開発案件、コミュニティの監視など、リモートで仕事をしている方もいるので、そうした業務を委託しているスタッフも含めると、総勢で40名くらいになります。
業務を委託しているスタッフの中には、北海道にある、身障者施設にいらっしゃる方もいます。ネット接続環境があってコンピュータが使えて、こちらの依頼した仕事をこなしてくれる方であれば場所も関係ないですから。
開発業務がメインの初期の段階ではプログラムが書ける人を中心にスタッフを揃えていました。しかし最近では、サービス運営のために決まった時間に来て定型業務をする人も必要だと感じて、そういう人たちも増えていますね。
未来検索ブラジルのサービスは、当初見た目にこだわらず、作ることに力を注いでいて、使い方についてのガイドはあまり整っていなかったんですが、会社が大きくなって、そういう面でユーザーに少し優しくなったかなと思います。ユーザーから質問がきたらていねいに返事するなど、ユーザーサポートは大事に考えています。普通の企業に近づいてきたと言えばいいでしょうか。
● 「コッソリアンケート」は企業に使ってほしい
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わずか数分で数百の回答を集めることができる「コッソリアンケート」。モリタポで回答者に謝礼を支払う仕組みだが、1人10モリタポ(=1円)でもたくさんの回答がもらえる。単に個人的に知りたいだけのことでもわずかなコストでアンケートが取れる、画期的なシステムだ
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竹中氏:
「コッソリアンケート」という、用途に合わせたいろんな集計ができる多機能アンケートシステムがあります。アンケートする人は、回答者にいくらモリタポをお礼として配るかを決めて回答者を募る仕組みです。気軽に数千人単位に質問できるんです。
モリタポは10モリタポが1円ですが、1人10モリタポを配るとかでも回答者は集まります。100モリタポならすぐに数百程度は集まります。だから、たとえば500円、ワンコインで500人分くらいの回答を1~2時間で集めることも可能です。企業で内部資料としてマーケティングするなどの用途でも十分に使えると思うんですよ。
2005年にタワレコで音楽配信サービスNapsterを立ち上げる時に、Napsterの認知度をコッソリアンケートを使って聞いたことがあります。3000人が答えてくれたのですが、知っている人は5.9%くらいしかいなかった。これじゃダメだと、翌日タワレコで「5.9%しか知られていないのに、知られていることを前提にマーケティングしてはダメだ」と話したことがあるんです。
もっとも、リサーチ会社などがリリースを出しているわけではないので、会議で言っても、「なんの根拠があって、そんなに自信に満ちあふれてるんだ?」みたいな妙な雰囲気になったんですが。
個人が手早く使えるリサーチツールが今まさにここにあって、そういう力を個人個人が持てるようになっているということをもっと知ってもらいたいです。
深水氏:
そう、コッソリアンケートが企業にも使えるかもというのは、僕も最近気がついたんですよ。もっと力を入れてもいいかなと。
竹中氏:
4年経ってやっと深水さんが気がついたくらいですからね(笑)。この仕組みの利用価値認知されるのに数年はかかるだろうと思いますが、もっと知ってほしいですね。
● 情報はタダではないことを知ってほしい
竹中氏:
モリタポは割と売上をあげています。ひろゆきには大反対されていたのですが、「つけちゃえ」とつけてしまいました(笑)。「情報はタダではない」ということを啓蒙したかったのです。
僕らが提供するのは、あるキーワードで検索すると結果がわかるというサービスです。お客様はそれが知りたいと思って調べたのだから、それに対して何の経済価値も生まれないのはおかしいと思うのです。
ちなみにモリタポは2000円から買えて、1モリタポは0.1円に当たります。モリタポは“dat落ちスレ”と呼ばれる、まだデータベース化されていない過去スレッドのログを読むのに必要なのですが、1スレッド読むのに50モリタポ、つまり5円必要です。
単位を小さく設定したのは、使い勝手を考えたためですが、円に換算したら5円のコンテンツでもタダではない、ということを感じてほしかった。人によって経済の考え方や価値は違ってもいいですが、経済を支えるためには貨幣を造らないと意味がない。支えるために、モリタポはどうしても必要なものでした。必要だからこそ、システムを書いて押し切ったのです。
お客様は将来もサービスが継続することを期待してモリタポを買ってくれています。なので、買った時点で仕事は終わっていません。1人でもお客様がいたら続けていなければなりません。Googleは100年後も、Googleが収集したデータを閲覧できるサービスを提供しているでしょう。それと同じように、100年後200年後もモリタポがあり、経済を支えるために存在し続けることが必要なのです。
現在、17億モリタポが流通しています。つまり、1億7千万円くらいの価値があるということです。ユーザーは12万6千人くらいいます。同じ電子マネーでも、nanacoとかsuicaなどは、決済サービスを提供し手数料を稼ぐというビジネスをしようとしているのでしょう。
しかし、うちは情報の価値に対する対価を支払う手段として認知されるように努力するという、社会性の高いことをしているつもりです。続ければ続けるほど信用が上がっていくので、今後面白い仕組みができるかもしれません。
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コミュニティサービスについては、「今はまだ選択肢が少なすぎます」という。新しいサービスをいくつも立ち上げてきた深水氏の「2ちゃんねるがカバーできない範囲まで」という言葉も気になるところだ
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深水氏:
今後は、コミュニティサービスをもっと広げたいですね。2ちゃんねるがカバーできない範囲までやりたいと思っています。また、2ちゃんねるは男性色が強いので、女性色が強いものも取り組みたいですね。
それに限らず、コミュニティサービスに関してはもっと他の形態があってよいと考えています。今はまだ選択肢が少なすぎます。
法人向けサービスはもっと強化したいし、それに合わせて人も増やしたい。やりたいことはたくさんあります。僕は、将来的には従来の雑誌や新聞など、既存モデルの紙メディアはなくなると考えています。
その時、みんなに役立つようなポジションにいたいと思っているんです。そのための下準備もしなくてはいけないと思っています。(おわり)
(→ 前編をみる)
関連情報
■URL
未来検索ブラジル
http://www.razil.jp/
モリタポータル
http://moritapo.jp/
■関連記事
・ 情報には価値があることを知ってほしい ~未来検索ブラジル社長 深水英一郎氏&創業社長 竹中直純氏(前編)(2008/09/08)
2008/09/09 11:17
取材・執筆:高橋暁子 小学校教員、Web編集者を経てフリーライターに。mixi、SNSに詳しく、「660万人のためのミクシィ活用本」(三笠書房)などの著作が多数ある。 PCとケータイを含めたWebサービス、ネットコミュニケーション、ネットと教育、ネットと経営・ビジネスなどの、“人”が関わるネット全般に興味を持っている。 |
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