6月8日の午後に本稿を執筆しているとき、秋葉原で通り魔事件があったとの一報をTwitterで目にしました。その後の報道によると大変な事件となってしまったようです。犠牲者の皆様に哀悼の意を表します。秋葉原での事件ということでインターネット利用者も多く、Twitterやリアルタイム動画配信のUstreamなど、様々なWeb媒体を通じて非常に速く情報が流通しました。ニュース番組で、現場に居合わせた一般の方の撮影した映像を放送することがありますが、この事件では、そうした映像・画像が流される機会が非常に多かったようです。
さて先週は、週末の金曜日に衆議院本会議で“青少年ネット規制法”があっさりと可決されました。同日に情報規制への懸念を日本新聞協会が再度表明していますが、成立までに大きな障害は無さそうな見通しとなってきました。
そのほかのニュースでは、Windows版「Safari」の複合的脅威、公開迫る「Firefox 3」、「IE8」ベータ2のニュースと、ブラウザ関連のニュースが目立ちました。後半ではこうしたブラウザの最新事情について解説します。ちょうど良い機会ですので、新しいブラウザを試してみるのも良いと思います。
◆“青少年ネット規制法案”が衆議院で可決
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/06/06/19851.html
6月6日、衆議院本会議にて、携帯インターネットのフィルタリング提供義務化などを定めた「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案」が可決した。参議院に送られ、来週以降に審議される。
◆さくらインターネットの一部ホスティングサーバーに不正コード挿入の被害
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/06/04/19812.html
6月3日、さくらインターネットは同社が提供するレンタルサーバーの一部で通信経路情報を書き換える「ARPスプーフィング」攻撃を受け、サイト閲覧者がウイルスなどをダウンロードさせられる可能性があったことを公表した。
◆ソフトバンク、「iPhone」を年内に発売へ
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/06/04/19819.html
6月4日、ソフトバンクモバイルは2008年後半に日本国内で「iPhone」を発売することでアップルと契約したと発表した。料金プランは未定。国内で発売されると見られる3G対応iPhoneの仕様については明らかにされていないが、サンフランシスコで6月9日(現地時間)に開催される「WWDC 2008」にて発表される可能性がある。
◆「IE8」ベータ2は8月に公開予定
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/06/04/19809.html
6月3日、米Microsoftのビル・ゲイツ会長は、IE8のベータ2を今年8月に公開すると発表した。20言語で公開される予定となっている。
◆YouTubeに"吹き出し"書き込み機能、ベータテストを開始
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/06/05/19824.html
6月4日、YouTubeは動画中に吹き出しなどを使ってコメントを書き込める「Video Annotations」のベータテスト開始を発表。自分の投稿した動画に対してコメントを書くことができる。現時点では英語のみの対応で、埋め込みプレーヤー等には非対応といった機能制限がある。
● ギネスに挑戦する「Firefox 3」、ベータ2公開が近づく「IE8」。最新ブラウザ事情
多くのユーザーにとってWebブラウザは、いまやソフトウェアの中でも最も接する時間の長いものとなっているでしょう。そのWebブラウザに何を選ぶかは、日常の作業効率やユーザーエクスペリエンス全般を大きく左右します。
主要なWebブラウザには「Internet Explorer(IE)」「Safari」「Firefox」「Opera」などがあります。IEはマイクロソフトが提供するWindows標準のWebブラウザで、国内では圧倒的なシェアを誇ります。2001年にWindows XPとともに「IE6」が登場して以来、長らくアップデートが行なわれていませんでしたが、2006年に最新の「IE7」が登場。タブブラウズやフィード対応など、新しい機能が追加されました。
最もユーザーの多いブラウザであるだけに、IEのレンダリングの不具合や独自の仕様は、対応を余儀なくされるWeb制作者の負担となり、批判の的ともなっています。ところがIE8では、Web標準への準拠を測るAcid2テストに合格しているとのことで、Web制作者の負担軽減が期待されます。
アップルの「Safari」はMacの標準ブラウザです。最新の「Safari 3」ではWindows版の提供も開始になり、アップルらしいフォントやデザインの美しさと速さが好評ですが、たびたび危険な脆弱性が報告されているのが心配な点。先日にはWindows版での複合的な脅威が報告され、アップルとマイクロソフトから適切な更新プログラムが提供されるまでSafariの利用を控えるように、という警告がマイクロソフトより発せられています。
Mozillaの「Firefox」は、インターネットブーム初期のデファクトスタンダードであったブラウザ「Netscape」の流れを汲む、オープンソースのブラウザです。Windows、Mac、Linuxと多数のOS、世界の40以上の言語に対応していること、世界中のユーザーによって作成された「アドオン」により自在なカスタマイズが可能なことなどが特徴で、現在のWebブラウザの標準のようになっているタブブラウズ機能やフィードの取り込みなど、先進的な機能をいちはやく取り込んできた歴史があります。
最新の「Firefox 3」は現在RC2で、6月中旬には正式版の公開が予定されています。「3」での新機能はセキュリティの向上や高速化など多数ありますが、目立つものではブックマークと履歴の統合、タギング対応、およびワンクリックでブックマークの追加を行なう「スターボタン」があります。
ブログの流行などでWeb上の情報が爆発的に増えている現在はブックマークの利用のされ方が変化しており、ソーシャルブックマークを利用してメモがわりに情報源のパーマリンクをクリップし、タギングして整理しておく、という使い方をするユーザーが多くなっています。Firefox 3のブックマークや履歴の新機能は、こうした使われ方に対応したものです。
最新のWebブラウズ環境を体験したいなら、Firefox 3を試さない手はありません。正式版公開に備えて24時間のダウンロード数世界記録を目指すイベントが行なわれますので、詳細をご確認ください。
「Opera」は、ノルウェーのOpera Softwareが提供しており、Windows、Mac、Linux、FreeBSDなど多数のOSに対応しているほか、WiiやニンテンドーDS、各種携帯電話など、さまざまなデバイスの組み込みブラウザとしても知られます。6月発売予定のウィルコムのスマートフォン「WILLCOM 03」にも「Opera Mobile 9.5」がインストールされます。
2008/06/09 11:41
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小林祐一郎 プログラマ、編集者、Webディレクター等を経て、ライター・編集者として活動。興味のあるテーマは「人はどうすればネットで“いい思い”ができるのか」 。ごく普通の人の生活に、IT技術やネットのコミュニケーションツールがどんな影響を与え、どう活用できるのかを研究している。近著「Web2.0超入門講座」(インプレス) |
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