5分でわかるブロックチェーン講座

LINEがブロックチェーンに本腰、気になるそのビジネス領域は?

ConsenSysがJPモルガンのQuorumを買収

 暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報に解説と合わせて、なぜ重要なのか筆者の考察をお届けします。

(Image: Shutterstock.com)

LINE Blockchain Developersがスタート

 国内大手メッセージングサービスを運営するLINEが、デベロッパー向けのブロックチェーン開発プラットフォーム「LINE Blockchain Developers」を発表した。合わせて、デジタルアセット管理ウォレット「BITMAX Wallet」の提供も開始する。

 LINEは以前より、子会社であるLVCを通して暗号資産取引所BITMAXを運営している。今月6日には、独自トークンである「LINK」の国内上場を果たし、BITMAXでの取り扱いを開始した。

 今回発表したLINE Blockchain Developersは、LINE独自のブロックチェーン「LINE Blockchain」を広く活用してもらうための取り組みだ。LINEは、LINE Blockchainと独自トークンLINKを基盤としたトークンエコノミー構想を掲げている。

 この後のパートで、LINE BlockchainとLINKがブロックチェーン業界でどのような事業を作り上げるのか、展望について著者の意見を述べていきたい。

参照ソース


    LINE、企業が簡単にブロックチェーン導入可能な開発プラットフォームを発表
    [CoinPost]
    LINE Launches Digital Asset Wallet and Blockchain Development Platform
    [CoinDesk]

ConsenSysがJPモルガンのQuorumを買収

 イーサリアムの開発・コンサルティングを行う老舗ブロックチェーン企業ConsenSysが、JPモルガンの開発するコンソーシアムチェーンQuorumを買収した。これに伴い、ConsenSys Quorumとしてリブランディングしている。

 Quorumは、イーサリアムをカスタマイズしたエンタープライズ向けのブロックチェーンである。一方のConsenSysは、イーサリアムの共同創業者であるJoseph Lubin氏によって創設され、イーサリアムエコシステムの発展に大きく貢献してきた企業だ。

 今回の買収により、エンタープライズ向け製品としてのイーサリアムの開発が進むことが予想される。あまり知られていないが、エンタープライズ領域でもシェアNo.1はイーサリアムだ(27%)。20%でHyperledgerが、16%でCordaが続き、Quorumは4%となっている。

 エンタープライズ領域でもイーサリアムを採用するメリットは、何と言ってもパブリックチェーンとしてのイーサリアムとの相互互換性だ。昨今のブロックチェーン業界は、ほとんどイーサリアムと共にあると言っても過言ではない。そのイーサリアムとの互換性を持たせずして、ブロックチェーンを使う意味はないとすら言えるだろう。

 8月初めには、コカ・コーラのボトルサプライヤー団体が業務効率化を目的にブロックチェーンの導入を発表した。イーサリアムを採用しDeFiへの接続を念頭に入れていることから、センスが良いとしてこちらの記事で紹介している。

参照ソース


    ConsenSys Acquires Quorum® Platform from J.P. Morgan
    [ConsenSys Blog]
    ConsenSys:JPモルガンのブロックチェーン「Quorum」を買収
    [BITTIMES]

今週の「なぜ」LINE Blockchainはなぜ重要か

 今週はLINEのブロックチェーン事業とConsenSys Quorumに関するトピックを取り上げた。ここからはなぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。

【まとめ】

イーサリアムに遅れを取ったLINE Token Economy構想
激戦区のエンタープライズブロックチェーン
LINE Blockchainである必要性は?

 それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。

LINE Token Economy構想

 LINEがブロックチェーン領域に本格参入の姿勢を見せ始めた。一口にブロックチェーン領域といっても、急拡大する昨今の市場は多岐に渡る。現時点のLINEからは、エンタープライズ領域への参入姿勢が伺える。

 LINEは2018年8月より、「LINE Token Economy」構想を掲げ独自トークン「LINK」を発行してきた。LINE Blockchainとその上で流通するLINKを基軸通貨に据えた、暗号資産経済圏の確立を目指すものである。3、4年前に注目されたクリプトエコノミクスの発想だ。

 しかしながら、規制の影響から国内でのLINKの流通が困難であったこともあり、その構想はイーサリアムに遅れを取る形になってしまった。ここからトークンエコノミー構想を実現するのは少々ハードルが高いかもしれない。

エンタープライズ領域は激戦区

 その結果としての判断かはわからないが、現在のLINEはLINE Blockchainを軸にしたエンタープライズ向け製品の開発に注力しているようにみえる。企業がブロックチェーンを使ってWebサービスを開発する際に、LINE Blockchainを使ってもらう狙いだ。

 マネタイズのポイントとしては、LINE Blockchainを稼働させるために必要なノードの貸し出しや開発のサポート、ストレージの貸与などがあげられる。

 個人向けのブロックチェーンはもはやほとんどイーサリアム一強となっているため、ここ数年はエンタープライズ領域が激戦区になりつつある。しかしながらこの領域であれば、まだまだ勝機はあるといえるだろう。

Why LINE Blockchain?

 一方で、LINE Blockchainである必要性については議論が必要だ。イーサリアムの場合、DeFiやその他のDAppsとの相互互換性という強力なメリットがあげられる。LINEの場合は何が強みになるのだろうか。

 1つは、6000万を超えるLINEユーザーに対して、一気にリーチできる可能性があげられるだろう。今回、LINEは独自のウォレットである「BITMAX Wallet」の提供も同時に開始している。LINEの運営する取引所BITMAXに上場した暗号資産に関しては、このウォレットで取り扱うことができるようになるだろう。

 つまり、次のような構図が出来上がる。

1.LINE Blockchainを使って独自トークンを発行する
2.BITMAXに上場(しやすくなる可能性が高い)
3.BITMAX Walletで取り扱い可能

 BITMAXはLINEアプリから直接アクセスできるため、理論上は全てのLINEユーザーに独自トークンを提供できる可能性を秘めている(もちろんLINEユーザーのBITMAX口座開設率を100%として考えている)。

LINKをどのように活用するのか

 最後の懸念として、以前より発行しているLINKをどのように使っていくか、という点があげられる。一般的に、取引所が独自トークンを発行する場合、ユーザーの取引に仲介させることで手数料を減らすなどの使い方がある。つまり、その取引所内の基軸通貨として使っているのだ。

 取引所トークンはBinanceのBNBに端を発し、国内で交換業のライセンスを持つHuobiもHTを発行している。取引所トークン自体の価格を上げつつ、他の取引所よりも手数料を少なくすることで利用者を増加させる狙いだ。

 LINEには、今のところこの戦力は見受けられない。そもそもBITMAXにはあまり注力していないようにも感じる。規制や市場の上げ下げがあり当初の構想からずれてしまったとはいえ、今後LINKをどのように活用していくかは重要な論点といえるだろう。

編集部より: 当連載は、第9回(3月末掲載)まで仮想通貨 Watchにて掲載していたものです。第9回以前はこちらからご覧ください

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。“学習するほどトークンがもらえる”オンライン学習サービス「PoL(ポル)」や企業のブロックチェーン導入をサポートする「PoL Enterprise」を提供している。海外カンファレンスでの登壇や行政でのオブザーバー活動も行う。Twitter:@tomohiro_tagami