5分でわかるブロックチェーン講座
日本初のSTOを実施へ、セキュリティトークンによる新たな資金調達が誕生
米国の大学で進むブロックチェーンへの取り組み
2020年10月20日 10:13
ブロックチェーン全米大学ランキング
世界最大手の暗号資産メディアCoinDeskが、ブロックチェーンの研究および学習環境の整備などで世界をリードする大学ランキングを発表した。今回の調査対象となったのは、アメリカのトップ大学46校だ。
100社以上のブロックチェーン企業から1万2000人以上に対してアンケートを実施。以下の4つの観点と重みから各大学を評価した。
・学術的な影響:30%
・・ブロックチェーン教育の機会:40%
・・雇用と業界での成果:20%
・学術的な評判:10%
調査の結果、トップ5に選出されたのは次の大学だ。
1位:マサチューセッツ工科大学(MIT:Massachusetts Institute of Technology)
2位:コーネル大学(Cornell University)
3位:カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)
4位:スタンフォード大学(Stanford University)
5位:ハーバード大学(Harvard University)
今回のランキングでは、ブロックチェーン専門の講義を学内に設けており、卒業後に多くの人材を業界へ送り出している大学が評価された。
暗号資産・ブロックチェーンは、世界的な傾向として若年層に受け入れられている。これは、ブロックチェーンの持つ非中央集権的な思想が影響しているといえるだろう。
実際、全体の特徴として、ブロックチェーンの講義があるのは71.74%にあたる33/46校、研究センターを設置しているのは23.91%にあたる11/46校、学生主導の研究サークルがあるのは86.96%にあたる40/46校という点があげられる。
以前より、アメリカのトップ大学ではブロックチェーンの学習環境が整備されている。これはブロックチェーンに限らず、あらゆる産業において次の世代を担う人材の育成に予断がないことの裏付けだろう。日本でもテクノロジーに関する教育環境の整備が進むことを期待したい。
参照ソース
The Top Universities for Blockchain
[CoinDesk]
SBIグループが国内初のSTO事業を開始
SBIホールディングスが、国内初となるSTO(Security Token Offering)関連ビジネスの開始を発表した。合わせて、子会社であるSBI e-Sportsで自らSTOを実施する意向も明らかにしている。
STOは、従来の株式や社債に代わりブロックチェーン上で管理されるデジタル証券(セキュリティトークン)を発行する仕組みだ。2020年5月に改正金融商品取引法が施行され、セキュリティトークンを用いた資金調達であるSTOが可能になった。
SBIホールディングス子会社のSBI e-SportsによるSTOは、座組みとしては5,000万円の資金調達を普通株1,000株を発行することで実施する。発行・管理・移転・権利更新は、野村ホールディングス傘下のBOOSTRYが運営する「ibet」で行われるという。
なお、引き受け先は親会社のSBIホールディングスとなっており、まずは国内第1号の案件を作りにいくという目的が垣間見える。
SBIグループは今後、SBI証券を中心としたデジタル社債(セキュリティトークン)にも取り組むことを明確にしている。具体的には、発行されるセキュリティトークンの引受先をSBI証券とし、SBIを利用する顧客に販売するという。
今週の「なぜ」STOはなぜ重要か
今週はブロックチェーン大学ランキングやSBIグループのセキュリティトークンに関するトピックを取り上げた。ここからはなぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。
【まとめ】
ブロックチェーンを使った資金調達には2種類の方法がある
STOはICOの問題点を解消することで誕生した
今後は日本でもSTO事例が出てくることが予想される
それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。
トークンによる2つの資金調達
セキュリティトークンがなぜ重要なのかについては、こちらの記事で解説しているためぜひご覧いただきたい。今回は、そんなセキュリティトークンを使った資金調達「STO」の重要性について言及する。
ブロックチェーン上で発行されるトークンには、いくつかの種類が存在する。このうち、資金調達で使用されるのは「ユーティリティトークン」と「セキュリティトークン」だ。前者はICO(Initial Coin Offering)に、後者はSTOに使用される。
両者は、法律での取り扱い方も異なるものだ。ユーティリティトークンは資金決済法の枠組みで、セキュリティトークンは金融商品取引法の枠組みで、それぞれ規制されている。日本では、前者は日本STO協会が、後者は日本暗号資産取引業協会が金融庁から公認団体として認められている状況だ。
STOの誕生背景
STOの仕組みが提唱されたのは、ICOによる資金調達が注目を集め詐欺的なプロジェクトが蔓延してしまったことによる。
ICOは、IPOとは異なり特定の取引所を仲介せずに資金調達を実施する。具体的には、プロジェクトの持つウォレットアドレスにビットコインやイーサリアムを送金し、同額のプロジェクトトークンを送り返してもらう。これら一連の取引を、プロジェクト側が開発したスマートコントラクトで実行する仕組みだ。
そのため、ICOではプロジェクト側を完全に信用しなければならず、開発者でなければスマートコントラクトが正常に動作するのかを事前に確認することは難しい。その結果、プロジェクト側がビットコインやイーサリアムを受け取った直後に行方を眩まし資産を持ち逃げする、といった事件が相次いでしまったのだ。
STOはICOの改良版
事件が起きてしまったとはいえ、ICOの仕組み自体は革命的なものだといえる。何といっても、資金調達の一連の流れを全てデジタル上で完結させることができる点が最大の強みだ。発行・管理のコストを劇的に削減できるだけでなく権利移転もスムーズに行え、取引所への上場プロセスも簡素化できる。
そこで誕生したのがSTOだ。STOの場合、IPOにおける証券会社の役割を持つSTO事業者を仲介させる。例えば日本の場合、金融商品取引法下におけるいくつかの認可企業がSTOを主導していく。
今回のSBIグループの例では、SBIグループ自身が認可企業となっており、同じくグループ子会社によるSTOを親会社が主導する座組みだ。先述の通り、国内初を目指した取り組みであることが予想されるが、今後は日本でも幅広くSTOを実施する企業が出てくるだろう。
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