5分でわかるブロックチェーン講座
米国の銀行がステーブルコインの使用を開始、国内では日立とみずほが物流ブロックチェーンの実証実験へ
2021年はブロックチェーンコンソーシアムの発足が加速
2021年1月12日 16:25
米国の銀行でステーブルコインを取り扱いへ
米国通貨監督庁(OCC)が、国立銀行に対してステーブルコインの取り扱いを認める書簡を公開した。これは、2020年7月にOCCが公表した、銀行に対する暗号資産カストディ事業の認可をさらに拡張したものとなる。
OCCは、今回公開した書簡の中で次のように解釈を述べた。「国立銀行は、INVN(Independent Node Verification Networks:独立型ノード検証ネットワーク)のノードとして稼働することで、パブリックチェーンおよびステーブルコインを使用した支払いサービスを提供することができる。」
つまり、INVNを通してパブリックブロックチェーンのネットワークに参加することで、ステーブルコインを銀行の決済システムに組み込み可能となることを意味する。暗号資産のカストディと合わせて、米国では銀行の暗号資産市場への参入がまた一歩進んだ形だ。
将来的には、ビットコインやイーサリアムなどに加えステーブルコインを銀行口座で取り扱うことができるようになる可能性が高い。現状、暗号資産を管理するには専用のウォレットが必要だが、国民に広く普及している銀行口座を使用することができれば、更なる市場の盛り上がりが期待できるだろう。
加えて今回の書簡で注目すべきは、パブリックチェーンを使用したサービスを提供できるという部分だ。これは理論上、イーサリアムを使った銀行独自のトークンを発行したり、イーサリアムをカスタマイズしてプライベート型にすることにより処理性能を向上させたりといった未来が想定できるだろう。
参照ソース
US Treasury to Allow Blockchains, Stablecoins for Bank Payments
[Decrypt]
ついに米国の銀行が暗号資産市場に参入、機関投資家の資金は流入するか
[INTERNET Watch]
日立製作所とみずほが物流ブロックチェーンで協業
日立製作所とみずほフィナンシャルグループ、みずほ銀行、みずほ情報総研、Blue Labが、ブロックチェーンを活用した物流の一体管理およびサプライチェーンファイナンスの高度化に関する取り組みを発表した。2021年1月中の実証実験開始を予定している。
今回の実証実験では、物流データと連携したファイナンスの提供を行うことで、輸送代金の早期資金化を目指すという。現状の物流業界では、荷主からの受注後に複数の運送会社へ業務を委託する多重構造の商流が存在しているため、このプロセスをシンプルにするのが狙いだ。
これまでに、日立製作所とみずほはブロックチェーンを活用したサプライチェーンの効率化に取り組んできた。今回の実証実験でも、日立製作所が開発を進めるサプライチェーン決済プラットフォーム上でみずほの開発するファイナンス決済システムを提供していく。
物流業界におけるブロックチェーン活用に関しては、業界最大手のニトリが一歩リードしている。今週の後半パートでは、ニトリの取り組みを含め物流業界におけるブロックチェーン活用について考察していきたい。
参照ソース
日立と<みずほ>が、ブロックチェーン技術を活用した金流・商流・物流の一体管理とサプライチェーンファイナンスの高度化に関わる実証実験を開始
[みずほフィナンシャルグループ]
ニトリがブロックチェーン活用を本格化、ビットコインキャッシュには初の半減期が到来
[INTERNET Watch]
今週の「なぜ」物流業界にブロックチェーンはなぜ重要か
今週は米国銀行のステーブルコイン活用や物流業界におけるブロックチェーン活用に関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。
【まとめ】
インフラはブロックチェーンで統一、手を加えるのはインターフェースのみ
物流業界の課題をブロックチェーンで解決
2021年はエンタープライズブロックチェーンに注目
それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。
インフラをブロックチェーンで統一
ブロックチェーンの特徴としては、分散性や透明性、耐改ざん性といった点があげられるが、これは全てパブリックチェーンのものであり非中央集権を前提にした考え方だといえる。そのため、パブリックチェーンを使ったビジネススキームの構築は難易度が高く、世界的にも未だにこれといった事例が出てきていない。
最近は、ブロックチェーンでビジネスを立ち上げるには、エンタープライズ型(プライベート型)にカスタマイズするのがトレンドになってきている。今週取り上げた物流業界も例に漏れないだろう。
エンタープライズブロックチェーンの強みは、予め定められたプロトコル通りにデータの型を定義し、権限を自由に設定できるようカスタマイズすることで、他社を巻き込んで事業を展開できる点にある。
インフラ部分はブロックチェーンで統一し、インターフェースの開発に集中できる点が他社を巻き込む際には重要な要素になるだろう。
物流業界の課題とブロックチェーンによるソリューション
今回の日立製作所とみずほの取り組みでも、まさにその点が考慮されていると感じた。上図の1~7の作業プロセスには、少なくとも5社の物流事業者が関係している。従来であれば、顧客情報を管理し、データの型を定義し、権限の異なるステークホルダーが参照できるシステムを開発する...といった設計に膨大な時間と資金が費やされていた。
また、現状の物流業界ではドライバー不足や労働環境の悪化、煩雑な帳票管理などの問題が蔓延しており、見積りや受発注管理、配車・運行管理業務、請求管理などの作業もアナログ中心のものになっているという。
今回の取り組みでは、エンタープライズブロックチェーンの中で高いシェアを誇るHyperledger Fabricをカスタマイズした上で使用する方針だ。Hyperledgerのようなエンタープライズブロックチェーンを活用することで、複数の事業者間における決済取引を統合できるだけでなく、関係者間で共有するデータをブロックチェーン上でトークンとして流通させることも可能になる。
加速するエンタープライズブロックチェーン
先述の通り、物流業界ではニトリが先行してブロックチェーン活用に取り組んでいる。ニトリは、書類作業をデジタル化した上でブロックチェーンを使って管理し、本部から現場の担当者まで正確な情報を届けることを目指している。合わせて、他社に委託している輸送作業のプロセスもブロックチェーンで管理し、委託先を拡張した際の共同輸送の効率化も実現していくという。
2021年の見通し記事でも触れたが、今年はコンソーシアム型の取り組みが相次いで立ち上がるだろう。2020年時点でも既に貿易業界でNTTデータや三菱商事が、モビリティ業界ではトヨタやホンダがそれぞれ共同事業をスタートさせている。
考え方としては、使用するブロックチェーンはパブリックチェーンをカスタマイズしたエンタープライズ向けのもの、使用する団体をコンソーシアムないし共同管理者という形で進めるのが一般的だ。