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イーサリアムが実用化に向けまた一歩前進、レイヤー2最有力Optimismが始動へ

Webブラウザ「Brave」が「IPFSプロトコル」をサポート、P2Pの「IPFS://~」のURLが利用可能

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 暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報に解説と合わせて、なぜ重要なのか筆者の考察をお届けします。

イーサリアムレイヤー2最有力プロジェクトOptimismが稼働

 イーサリアムのレイヤー2プロジェクトOptimism(オプティミズム)が、人気DeFiプロトコルSynthetixへのバーチャルマシン導入を発表した。2021年3月までに公開テストネットでの稼働を目指すとしている。

 現状のイーサリアムは、処理性能の低さを意味するスケーラビリティ問題を抱えている。1秒間に処理できるトランザクションの数が少ないため、イーサリアム上で稼働するアプリケーションが増加するほどネットワークが混雑してしまっている状況だ。

 Optimismは、そんなイーサリアムのレイヤー2ソリューション最有力プロジェクトとして注目を集める「Optimistic Rollup」を開発している企業だ。Optimistic Rollupがイーサリアムに実装された場合、1秒間に約10万トランザクションを捌くことができるようになるという。

 今回は、イーサリアム上で稼働するDeFiプロトコルSynthetixでこのOptimisticが導入された(厳密にはOptimismの開発するバーチャルマシンが導入された)。Web3.0を実現するイーサリアムにとってスケーラビリティ問題の解決は不可欠であり、今回の発表はそのための第一歩といえる。

 今週の後半パートでは、Optimisticに代表されるイーサリアムのレイヤー2ソリューションの重要性について解説したい。

参照ソース

Web3.0ブラウザBraveがIPFSのサポートを開始

 ブロックチェーンを使ったWebブラウザBrave(ブレイブ)が、次世代通信プロトコルIPFSへの対応を発表した。これにより、「http://~」で始まるWebサイト以外に、「ipfs://~」で始まるWebサイトをブラウザ上で表示することができるようになる。

 JavaScriptの生みの親であるBrendan Eich氏によって開発されたBraveは、デフォルトで広告を非表示にする機能などが特徴の次世代ブラウザだ。2020年11月時点で、月間アクティブユーザー数が2000万人を超えたと発表されている。

 デフォルトで広告を非表示にする一方で、利用者が自ら広告を閲覧することで報酬として独自トークンBasic Attention Tokenを受け取ることができる。

 そんなBraveは今回、現在の主要通信プロトコルであるHTTPを補完ないし代替すると期待される次世代通信プロトコル「IPFS」へのサポートを開始した。

 HTTPが特定のサーバにデータファイルを保存しておき、その場所(サーバ)を参照することで情報を表示するロケーション指向型であるのに対し、IPFSは分散型のP2P通信プロトコルだ。特定のサーバを経由せず、P2P形式でデータファイルの保存および参照を行うため、サーバの管理者に依存しないプロトコルといえるだろう。

 今回のサポート開始に伴い、Braveを使うことでIPFSによる通信を使ったWebサイトを閲覧することができるようになった。例えば、「ipfs://~」で始まる以下のURIにアクセスすると、下部の画像のようなWebサイトが表示される。

ipfs://bafybeiemxf5abjwjbikoz4mc3a3dla6ual3jsgpdr4cjr3oz3evfyavhwq/wiki/Vincent_van_Gogh.html
(注:Brave以外のWebブラウザではアクセスできません)

 なお、IPFSに対応していないGoogle ChromeやSafariといったブラウザでは上記URLはアクセスできない。プロトコルは使われなければ意味がないが、今回Braveによるサポートが開始された結果、IPFSが通信プロトコルとして徐々に市民権を得るようになるかもしれない。

参照ソース


    Brave Integrates IPFS
    [Brave]
    「空き容量」を使った分散型ストレージ「Filecoin(ファイルコイン)」がついに始動、次世代のインターネットの姿とは
    [INTERNET Watch]

今週の「なぜ」ブロックチェーンのレイヤー2ソリューションはなぜ重要か

 今週はOptimismの取り組みやBraveによるIPFSへのサポート開始に関するトピックを取り上げた。ここからは、Optimismに関連してブロックチェーン(主にイーサリアム)のレイヤー2ソリューションがなぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。

【まとめ】

イーサリアムはスケーラビリティ問題を抱えている
ブロックチェーンアーキテクチャにもレイヤーモデルが必要
現在のイーサリアムには二つのブロックチェーンが存在している

 それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。

イーサリアムの抱える課題

 先述の通り、イーサリアムは処理性能に課題があることを意味するスケーラビリティ問題を抱えている。現状、1秒間に約15トランザクションしか捌くことができないため、取引が活発になる価格変動が激しい際などには特にトランザクション詰まりが発生している。

 これに伴い、ガス代と呼ばれる取引手数料も高騰しているのが悩みのタネだ。イーサリアムでは、取引を行うために手数料が必要になる。これは、DoS攻撃や悪質なbotがかける負荷からネットワークを守るために存在するものだ。

 即時取引を行うには手数料を高める必要があり、その結果手数料が日に日に高くなってしまっている。例えば、100円分のETHを送金する際に1000円の手数料がかかってしまうことも珍しくない。

ブロックチェーンにおけるOSI参照モデルの必要性

 この状況を解決するのが、レイヤー2ソリューションだ。これは、イーサリアムで1秒間に処理できるトランザクション数を増加させるための取り組みである。

 イメージとしては、ネットワークアーキテクチャにおけるOSI参照モデルがあげられるだろう。OSI参照モデルは7層のプロトコルから構成され、各層で異なる役割を持ち全体としてネットワークを支えている。

 例えば、トランスポート層としてのTCPやプレゼンテーション層としてのSMTP、アプリケーション層としてのHTTPなどは頻繁に耳にするのではないか。ブロックチェーンにおいても、同様のレイヤー整備が必要なのだ。

 現在、我々がブロックチェーンと呼んでいるものは、将来的に実用化が進んだ時点におけるアーキテクチャ全体の最下層に過ぎない。そして、今回取り上げたOptimisticはその上に位置するレイヤー2と総称されるものだ。

 イーサリアムにおけるレイヤー2ソリューションの開発に取り組むプロジェクトは、Optimism以外にもPlasmaやSKALE、OmiseGOといったものがあげられる。なお、ビットコインもイーサリアム程ではないが処理性能を高める必要があり、Lightning Networkがレイヤー2ソリューションの代表例だ。

現状のイーサリアムはブロックチェーンが二つ動いている

 レイヤー2ソリューションの開発が進められている一方で、最下層としてのイーサリアム自体のアップデートも進められている。これは、「イーサリアム1.0」と「イーサリアム2.0」として定義されており、異なるブロックチェーンが並存する形で今まさに開発が進んでいる状況だ。

 イーサリアム2.0については、2021年の見通し記事で触れたため参照いただきたい。ここ数ヶ月はイーサリアム2.0に関する動向に注目が集まっていたが、今週はイーサリアム1.0に動きが見られた。

 「Berlin(ベルリン)」と名付けられた次期大型アップデートの内容が公開され、対応するクライアントソフトウェアの準備も整っていると報じられている。イーサリアム2.0の完成はイーサリアム1.0のアップデートが前提となっているため、イーサリアムを追う上では1.0の動向からも目が離せない。

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。“学習するほどトークンがもらえる”オンライン学習サービス「PoL(ポル)」や企業のブロックチェーン導入をサポートする「PoL Enterprise」を提供している。海外カンファレンスでの登壇や行政でのオブザーバー活動も行う。Twitter:@tomohiro_tagami