5分でわかるブロックチェーン講座

DeFiレンディングCompoundが既存金融へサービス提供、DeFiの一般化を実現へ

日本政府がビットコインを外国通貨とは認めない声明を公表

 暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報に解説と合わせて、なぜ重要なのか筆者の考察をお届けします。

米ドルをUSDCに自動換金して運用するサービスが登場

 人気DeFiプロトコルCompoundが、既存金融へのDeFiアクセスを提供する新たな取り組みとして、Compound Treasuryの設立を発表した。ステーブルコインUSDC運営のCircleと提携する。

 Compound Treasuryでは、Circleと提携することで顧客からの米ドルを自動的にUSDCに換金する仕組みを提供するという。換金されたUSDCは実際にCompoundで運用され、年率4%の利子を付与する予定だ。

 つまり顧客は、米ドルをCompound Treasuryに預けるだけでDeFiの高利回りを獲得することができるようになる。平均的な米ドルの普通預金と比較しても、桁違いの利率を実現できる点をアピールした。

 直近のCompoundにおける年率は1%台と低くなっているものの、年間で見た場合には4%を十分に実現可能であると説明している。仮に4%に達しなかった場合には、Compound Treasuryを運営するCompound Labsが差額を補填するという。

 現状、DeFiにアクセスするには、専用のウォレットが必要だったり事前にイーサリアムやDAIなどの暗号資産が必要だったりと、一定以上の知識が求められる状況にある。Compound Treasuryの取り組みにより、DeFiへの資金流入増が期待できそうだ。

参照ソース


    Announcing Compound Treasury, for Businesses & Institutions
    [Compound]

日本政府がビットコインを外通と認めない声明を公表

 日本政府がビットコインを外国通貨とは認めない方針を明らかにした。世界で初めてビットコインを法定通貨として採用したエルサルバドルの動きを受けての声明である。

 参議院議員からの「暗号資産の定義に関する質問主意書」に対して日本政府は、「外国通貨とはある外国が自国における強制通用の効力を認めている通貨と解される。ビットコインは公開されているエルサルバドル共和国のビットコイン法において、その支払いを受け入れる義務が免除される場合が規定されており、当該外国通貨には該当しない。」と回答した。

 ビットコインがエルサルバドルの法定通貨となったことで、諸外国としては外貨として扱う必要があるのではないかとの議論が巻き起こっていた。仮に外貨となる場合、暗号資産として定義している現行の規制を変更する可能性が浮上するため、今回の声明には大きく注目が集まっている。

参照ソース

今週の「なぜ」Compound Treasuryはなぜ重要か

 今週はCompound Treasuryの設立と日本政府がビットコインを外貨とは認めない声明に関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。

【まとめ】

DeFi市場にアクセスするには易しくないハードルが存在する
ステーブルコインを使ってDeFiへのアクセス手段を提供する
既存金融へDeFiを解き放つ

 それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。

DeFiアクセスの課題

 2019年より世界的にブームとなったDeFiは、2020年中旬に日本でも本格的に人気を集め始めたが、2021年にはピークを過ぎて堅実な成長を維持している。DeFi市場に流入する資金量は日々増加傾向にあるものの、新規ユーザーの伸びは鈍化し、一部のユーザーのみが使用する状況にあるといえる。

 理由の1つには、DeFiへアクセスする際のハードルの高さがあげられるだろう。CompoundをはじめとするDeFiサービスを使用するには、MetaMaskなどのウォレットが必要になり、まず何かしたらの暗号資産を入手しておかなければならない。

 また、企業でDeFiを使用するとなると秘密鍵管理の運用体制を整備しなければならず、これは極めて困難だといえる。秘密鍵がなければ資産をDeFi市場に移すことができないが、秘密鍵を現場の人間に管理させるわけにもいかないのだ。

ステーブルコインを介してDeFiへのアクセスを整備

 ここで注目されているのが法定通貨担保型のステーブルコインだ。ステーブルコインには、「法定通貨担保型」「暗号資産担保型」「無担保型」の3種類存在するが、法定通貨担保型は、文字通り法定通貨と暗号資産の橋渡しとして機能している。

 今回のCompound Treasuryと提携したCircleが管理するステーブルコインUSDCは、米ドルを担保資産として預け入れることで発行される。USDCは、DeFi市場で最も使用されている暗号資産の1つであり、USDCを持っていれば基本的に何でもできる。

 Compound TreasuryはCircleと提携することで、ウォレットやイーサリアムなどの暗号資産を用意することなく米ドルだけあればDeFi市場にアクセスできる環境を整備したのだ。

既存金融へDeFiへのアクセス手段を提供する

 Compound Treasuryの顧客は、米ドルを預けておけば自動的にUSDCに換金されるサービスを享受することができる。同時に、Compound Treasuryが顧客のUSDCをCompoundを使って運用してくれるため、ただ米ドルを預けるだけでDeFiの高利回りを得ることができるようになったのだ。

 日本と同様、米国でも銀行の普通預金はすずめの涙程度の利率であることから、同じ米ドルを預けるというだけの作業を行うのであれば、普通預金ではなくDeFiを選ぶのが賢明だろう。加えて、年率4%を達成できなかった場合には自己資金で補填することを約束してさえいる。

 これまで、既存金融のプレイヤーたちはDeFiの高利回りに関心を抱きつつもリスクの大きさとハードルの高さから手が出せずにいた。Compound Treasuryがこの課題を解決することにより、DeFi市場へのさらなる資金増を実現するかもしれない。

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。“学習するほどトークンがもらえる”オンライン学習サービス「PoL(ポル)」や企業のブロックチェーン導入をサポートする「PoL Enterprise」を提供している。海外カンファレンスでの登壇や行政でのオブザーバー活動も行う。Twitter:@tomohiro_tagami