5分でわかるブロックチェーン講座

スクウェア・エニックスがNFT事業の実証実験を終え本格参入を発表

「Play-to-Earn」のAxie Infinityが分散型取引所をローンチ、独自経済圏の拡大進める

 暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報に解説と合わせて、なぜ重要なのか筆者の考察をお届けします。

Axie Infinityの独自DEXがローンチ

 人気ブロックチェーンゲームAxie Infinityが、独自の分散型取引所(DEX)「Katana」をローンチした。Katanaは、Axie Infinityの開発する独自サイドチェーン「Ronin」上で稼働する。

 Axie Infinityのエコシステムがさらなる拡大を見せている。10月に開発計画が明らかとなったばかりの独自DEXが、1カ月もの短い期間でローンチされた。今回のローンチに併せて、Axie Infinityは独自トークン「RON」の発行も開始している。

 これで、AxieエコシステムにはサイドチェーンRoninを基盤として、独自トークン「AXS」「SLP」「RON」、DEXのKatanaと、多くの独自コンポーネントが揃えられた。ブロックチェーンの非中央集権的な思想には反するものの、成長戦略としては正しいと言わざるを得ない。

 今週は、Axie Infinityがここまで独自のエコシステムを形成する理由について、「トークン」「サイドチェーン」「DEX」のそれぞれを深掘っていこうと思う。

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スクウェア・エニックスがNFT市場へ本格参入

 スクウェア・エニックスが2022年3月期第2四半期決算説明会を開催し、NFT活用のブロックチェーンゲーム事業に本格参入することを発表した。3月から進めてきた実証実験を通して好感触が掴めたようだ。

 スクエニは、ブロックチェーン開発企業double jump.tokyoとの提携により、LINEの提供するLINE Blockchainを使ったNFT事業に着手していた。今回の決算では、3つの中期事業戦略の1つとしてブロックチェーンゲームを位置づけていることを発表している。

 スクエニによると、ブロックチェーンがゲームに組み込まれるようになったことで、プレイヤーの行動に変化が現れ始めているという。プレイヤーは、従来のように純粋にゲームを楽しむことに加え、NFTを通してほかのプレイヤーと交流し、またNFTを創ったり集めたりといった行動を重視するようになった。

 プレイヤーがゲームに求める期待やインセンティブも多様化しているといい、今後はトークンエコノミーを前提としたブロックチェーンゲームに注力する必要があると説明している。

 今四半期の決算自体は、前年同期比で減収減益。海外資本の増加も受けて、ゲーム市場がますます激戦区になっていく中、新たな活路としてブロックチェーンゲームへの勝機を見出すか。

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今週の「なぜ」ブロックチェーンビジネスにおいて閉じられたエコシステムはなぜ重要か

 今週はAxie Infinityの独自DEXやスクエニの決算に関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。

【まとめ】

一般的な仕事よりも稼げるブロックチェーンゲーム
エコシステムからユーザーを出さないためのトークン設計
Axie Infinityはすでにマジョリティ層に到達し始めている

 それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。

Axie InfinityとPlay-to-Earn

 Axie Infinityは、「Play-to-Earn」という文字通り稼ぐためにゲームをプレイする新たなムーブメントを巻き起こした。主にフィリピン国民に愛用されており、一般的な仕事に就いて受け取る給料よりも、Axie Infinityでゲームをプレイした方が稼げると話題になっている。

 具体的には、Axie Infinityで育てたキャラクターを販売したり、他のプレイヤーから依頼を受けて代わりにゲームをプレイして報酬をもらう、といった活動があげられる。Axie Infinityを通して獲得したトークンは、法定通貨やほかのトークンに換金できるため、文字通り「Play-to-Earn」と呼ばれるようになった次第だ。

 そんなAxie Infinityには、先述の通り「トークン」「サイドチェーン」「DEX」といった要素が存在する。全て独自で開発したものであり、ブロックチェーンの非中央集権思想には抗っていると言えるだろう。しかし、ブロックチェーンビジネスを行う上では、Axie Infinityの戦略は正しいと言わざるを得ない。

Axie Infinityの独自トークン

 まずはトークンについて。Axie Infinityは、3つの独自トークン「AXS」「SLP」「RON」を発行している。

 AXSは、Axie Infinityのガバナンストークンとして機能したりステーキングに使用することが可能だ。SLPは、キャラクターの成長に必要なコストとして使用される。SLPよりもAXSの方が入手難度が高く、価値が高いものとして設計されている。

 そして今回リリースされたRONは、独自のサイドチェーンRoninの取引手数料に使用される予定だ。イーサリアムにおけるガス代のような役割を担うのだろう。独自トークンを発行することで、ユーザーや開発者をエコシステムに長期間とどめておくことが可能だ。新規の参入ハードルを高めてしまうことは否めないが、一度入ってきたら抜け出せないサイクルを作り出している。

ブロックチェーンビジネスの戦略

 これらのトークンをユーザー間で売買できるようにしたのが、DEXであるKatanaだ。これまでは、Axie Infinityのトークンを売買するのに外部の取引所を使用しなければならなかった。しかし、外部の取引所を使用するということは、資金がエコシステムの外に出てしまうことを意味するため、Axie Infinityとしてはマイナスに働く。

 そこで、DEXを独自に開発することで、ゲームで発生した資金を外部に出さずエコシステムにとどめておく戦略を立てたのだろう。

 最後に、これら全ての要素を支えるのがサイドチェーンRoninだ。ブロックチェーンゲームは、もともとイーサリアム上で稼働するのが基本となっていたが、需要増によりガス代が高騰した結果、Axie Infinityのように独自でチェーンを開発するものが増加している。Roninのほかにも、Dapper LabsのFlowなどがあげられる。

 こういった流れは、ブロックチェーンの非中央集権的思想からは逸脱するものの、その性質を重視するユーザーはイノベーター層の一部に限られるのではないだろうか。Axie Infinityは、フィリピンに限るともはやマジョリティ層にアプローチし始めている。

 思想はもちろん大事にすべきだが、ビジネスとしてブロックチェーンを捉えた場合、割り切った戦略が必要になることは言うまでもない。

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。“学習するほどトークンがもらえる”オンライン学習サービス「PoL(ポル)」や企業のブロックチェーン導入をサポートする「PoL Enterprise」を提供している。海外カンファレンスでの登壇や行政でのオブザーバー活動も行う。Twitter:@tomohiro_tagami