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衛星画像からAIで駐車台数を推計、都市の変化も解析~パスコが変自動抽出技術を確立

 株式会社パスコは、同社が保有する人工衛星画像をもとに、AI(人工知能)技術を使って変化状況を自動抽出する技術を確立したと発表した。同社はその成果として、「都市変化解析マップ」と「駐車車両数推計マップ」の提供を開始する。

 パスコは以前から、人工衛星や航空機、専用車両などを使って収集した画像を活用して、過去の変化過程と現状を把握し、災害・環境対策や都市開発・インフラ整備の計画立案、企業戦略の意志決定を支援するための空間情報サービスを提供してきた。こうした中で近年、入手可能な衛星画像が増加しており、その撮影成果を活用するための処理能力の高度化や自動化が求められている。今回のサービスは、このような社会要請に応えるためのものだという。

 「都市変化解析マップ」では、合成開口レーダー衛星画像に深層学習(ディープラーニング)を適用することで、土地被覆分類マップを自動生成し、異なる2つの時期の土地被覆分類マップの比較から、都市の変化状況を抽出し、土地被覆変化マップを生成する。合成開口レーダーは、衛星から地上に向けてマイクロ波を照射し、その反射波を使って観測するため、雲や噴煙を透過し、地上の様子を観測することが可能で、夜間の観測も可能なため計画的・安定的に観測できる。

衛星画像から都市の変化を解析

 抽出する土地被覆分類は、「人工物」「裸地」「水域」「草地」「森林/樹木」に大別される。それぞれの状況を地図で表現するほか、面積の推定や複数時期の変化過程から都市化や森林減少の速度も推計することが可能だ。

 パスコによると、同マップで利用しているAI技術はディープラーニングの中でも画像認識に特化したCNN(Convolutional Neural Network)を利用しており、画像データと、土地被覆分類の教師データ(訓練データ)をペアとして、画像データから色や凹凸などの特徴を自動的に学習する。大量のペアデータから学習を行い、土地被覆分類用のCNNモデルを作成し、このモデルを使って分類処理を実行する。

 一方、「駐車車両推計マップ」は、高分解能の光学衛星画像(50cm分解能)で撮影した駐車場の撮影画像にディープラーニングを適用することで駐車車両の台数を推計する。

各グリッド中の車両台数を直接推定

 隣接した車両間の境界の判読には衛星画像の解像度に大きく依存し、正確な台数を数えることは人間の目視による作業でも困難なため、同社は画像中の駐車車両をオブジェクトとして抽出する手法とは別の手法を新たに開発した。

 この手法では、あるグリッドサイズで分割した領域ごとに駐車車両の台数を直接推定し、グリッドごとの画像に対して“教師”となる正解の駐車台数データをペアとして学習することにより実現している。

 活用事例としては、例えば国内外の港湾のモータープールに駐車している輸出入台数を観測することで、高潮などの被害を最小限に抑えるとともに、被災時の影響を迅速に把握することが可能となる。また、この解析手法は、建物棟数など車両以外の対象物の抽出にも応用できるという。

片岡 義明

フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。