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高低差のための新機能、国土地理院が公開

地理院地図に「地形断面図」「自分で作る色別標高図」など追加

高低差を踏まえたルート選定に役立つ「地形断面図」

 国土地理院は、ウェブ地図サービス「地理院地図」を改良し、いくつかの機能強化を図った。これにより、指定した経路の地形断面図が作成できるようになった。

 使い方は、地図画面の右上にある「機能」ボタンを押し、「断面図」をクリックしてから、地図上をクリックして経路を指定する。経路の最後の地点でダブルクリックすると、断面図が表示される。

経路を指定
断面図

 この断面図では、指定した点の位置や点数に関係なく、始点~終点間を300等分した各点の標高値からグラフを作成している。グラフを保存することも可能で、PNG形式の画像またはCSV形式で出力できる。また、指定した経路をGeoJSON形式またはKML形式で保存することも可能だ。

 この機能を活用することで、通勤・通学や登山・サイクリングなどにおいて高低差を踏まえてルートを選定したり、洪水や津波などの災害時に備えて避難経路を検討したりすることができる。

独自の「色別標高図」が作成可能

 土地の高低差を調べる機能としてもう1つ、目的に応じてユーザーが自由に色分けできる標高図を作成できる「自分で作る色別標高図」が追加された。地理院地図では以前から、標高別に色が塗られた「色別標高図」を提供しているが、色分けの条件が全国一律のため、小さな高低差などを見分けるのは難しかった。

 今回公開された新機能では、ユーザーが自由に色や閾値を設定することができる。使い方は、地図画面の左上の「情報」をクリックし、「起伏を示した地図」を選択してから、「自分で作る色別標高図」をクリックする。

 デフォルトの色分けは0m以下、0~100m、100~300m、300~1000m、1000~2000m、2000~4000m、4000m以上の7段階となっているので、例えば東京の皇居周辺などを見ると緑一色になってしまう。ここで閾値を10mごとに設定して、0m以下、0~10m、10~20m、20~30m、30~40m、40~50m、50m以上の7段階にすると、わずかな高低差がはっきりと分かるようになる。それぞれの色はカラーパレットで細かく指定することが可能で、色分けはグラデーションや陰影を付けることも可能だ。

従来より提供している「色別標高図」
「自分で作る色別標高図」で閾値を10mごとに設定した状態

 なお、個別に設定するのが面倒な場合は、ウインドウ上部の「簡易設定」を選択することにより、最低標高と最高標高、分類数を指定するだけで自動的に色分けを設定できる。色分けの設定はテキストファイルとして保存することが可能で、後で読み込むこともできる。

2画面機能や等距圏・方位線の表示機能も追加

 地理院地図の今回のアップデートでは、このほかにもいくつかの機能強化が行われている。1つ目は、地図の2画面表示が可能になった。右上の「機能」から「ツール」を選び、「2画面表示」をクリックすると画面が左右に分割される。左右の画面は連動をONに設定することで連動してスクロールするようになり、左右に異なる情報を表示して比較することが可能となる。連動を解除して別々にスクロールさせることも可能だ。

左には1945~1950年、右には2007年の空中写真を表示

 2つ目は、検索ワードを使って、地図上に表示される情報が探しやすくなった。地図画面の左上にある「情報」をクリックすると表示されるリストウィンドウの検索バーにキーワードを入力することで、情報を表示できる。「標高」「空中写真」「災害」など、さまざまなキーワードを使って情報を探すことができる。

キーワードで情報を探せる

 3つ目は、地図上に中心点を指定して、等距圏と方位線を表示することが可能となった。地図画面の右上の「機能」から「設定」を選び、「ツール」を選択してから「等距圏」または「方位線」を選ぶと、地図上に線が表示される。等距圏は中心位置をドラッグで動かすことが可能で、距離を指定することも可能だ。方位線は4方向、8方向、16方向の3通りから選べる。

等距圏と方位線を表示可能に

 4つ目は、地理院以外の機関が配信しているXYZ形式のデータを重ねて表示できるようになったこと。「機能」から「ツール」を選択して、「外部タイル読込」をクリックすると読み込むことができる。XYZ形式のファイルは、産官学のさまざまな地理空間情報を調べられる「G空間情報センター」などで探すことができる。

国交省が「G空間情報センター」で公開している新大阪駅周辺の歩行者ネットワークデータ

 このほか、ベースマップの「English」のズームレベル9~11を更新して、地図のデザインを「標準地図」に合わせた。また、「English」において、これまではローマ字表記だった箇所を、英語表記で統一した。例えば「FUJI SAN」は「Mt.Fuji」に、「Motosu ko」は「L.Motosu」に変更している。

山名や湖名が英語表記に統一

片岡 義明

フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。