趣味のインターネット地図ウォッチ

登山計画・山岳地図サービス「コンパス」のスマホアプリが登場、遭難時には県警らと登山届の情報共有

 株式会社インタレスティングとインフカム株式会社は、登山者向け山岳情報サービス「山と自然ネットワーク コンパス」のiOS/Androidアプリ版「コンパスアプリ」をリリースした。

 コンパスは、公益社団法人日本山岳ガイド協会とインフカム株式会社が企画・開発し、2014年4月に本格稼働を開始した登山者向け山岳情報ネットワークサービス。インターネット上で登山届と山岳関連の情報を共有するシステムとして、長野県警察や岐阜県、神奈川県警察、静岡県警察、山梨県/山梨県警察、新潟県などと協定を締結している。コンパスと提携している自治体では、コンパスに登録された登山届の情報を、県警察本部が遭難者を救助する場合に限って活用することができる。遭難した登山者の計画を警察が直接確認できるため、素早い救助に役立てることが可能だ。コンパスは現在、ほかにも中部、近畿、東北地方などの自治体や警察との提携を調整中だという。

ウェブ版「コンパス」

 今回リリースしたコンパスアプリは、コンパスのiOS/Androidアプリで、インタレスティングがインフカムより委託を受けて運営・管理を行っている。同アプリには、コンパスのPC版サービスで提供している登山届の提出機能も搭載しており、日本全山域の登山に対応している。登山計画はフォームから作成する方法と、マップから作成する方法の2種類を用意している。

コンパスアプリ
メインメニュー

 フォームでは、山域、登山の目的(ハイキング/登山/3000m高山/縦走/バリエーション/フリークライミング/アルパインクライミング無雪期/雪山など)、入山口(都道府県/地点名)、出発日・時間、経由地(到着時間/出発時間)、下山口(都道府県/地点名/到着日・時間)、エスケープルート、装備・備品(食料◯食分/行動食◯回分/飲料水の有無/個人および共同で持つ装備)、同行者人数・氏名、緊急連絡先、無線機器等の携行、山岳関連団体への加盟、山岳遭難保険(加入済み/未加入)など、情報を細かく入力して作成できる。

入力フォーム
食料やパーティーの構成も入力

 マップ上で作成する場合は、山域を選んで地図が表示されるので、登るルートに沿って地図上をタップしながら入山口や経由地、山頂、下山口などを指定していく。地点を指定し終えたら右サイド上部の「登山ルート」をタップすると地点の一覧が表示されるので、到着予想時間や出発時間などを入力し、「登山届へ」をタップするとフォーム画面へと移行する。フォームには、地図上で登録した地点の情報が反映されているので、あとはほかのフォームを埋めれば登山届が完成する。

 提出した登山届の内容はアプリ上で内容を確認できる。また、登山口などで登山届の提出を求められた場合には、登山届が提出済みであることを示す「登山届証明」の画面を表示させることも可能だ。

マップ上で登山口や経由地などを指定
各地点の到着予想時刻や出発時刻などを入力
作成した登山届
登山届証明

 さらに、登山が無事に終了したあとは「下山届」を出すこともできる。下山届の機能は、登録している緊急連絡者に下山の確認・未確認を知らせる機能で、下山届の処理を行わないと3時間経過後に提出者本人に対して「下山未確認メール」が自動的に送信されて、以降は5時間経過後、7時間経過後にも送信される。このメールは下山届を提出すると送信が止まる。7時間経過後も未確認の場合は、緊急連絡者に下山未確認メールが送信されるので、緊急連絡者はそれを確認して警察に捜索依頼するという流れとなる。

 なお、登山届の作成機能については、日帰り登山での利用を想定した「簡易入山届」を提出する機能も加わる予定で、現在準備中とのこと。簡易入山届の場合は未登録者でも利用可能だ。

下山届
簡易入山届を提出する機能も準備中

 このほか、オフライン環境で利用可能な地図(国土地理院長の承認を得て電子地形図25000を複製したもの)をダウンロードして保存する機能も搭載している。これらの地図は登山前にダウンロードすることにより、電波が届かない山間地でも使用できる。地図上では現在地の緯度・経度や標高が表示されるほか、登山口や頂上、経由地、水場、山小屋、危険箇所などの情報がアイコンで表示される。アイコンは非表示に切り替えることも可能だ。

国土地理院の地図をダウンロード可能

 さらに、ワンタップで現在の位置情報と定型メッセージを送れる「いまここ機能」も搭載しており、メールを受け取った相手は登山者の状況と現在地をマップ上で確認できる。山行の軌跡を記録する機能「あしあと機能」も搭載しており、マップ上に登山履歴を保存できる。

 登山届を作成する際はフォームの入力項目が多くて少々面倒だが、スマートフォン上で登山届を作成して提出できるのは便利だ。今まで登山届を提出する習慣のなかった人でも、これならば利用してみようという気になるかもしれない。ちなみに神奈川県警のウェブサイトでは、登山者向けの案内の中で登山届の提出方法をいくつか紹介しており、その中で「協定に基づいて、このシステムに登録された情報を閲覧し、迅速な捜索救助活動ができることになりました。したがって、コンパスへの届出をおすすめします」と、「コンパス」の積極的な利用を呼び掛けている。この夏、登山を計画している人は、いざというときのために「コンパス」で登山届を提出してみてはいかがだろうか。

片岡 義明

IT・家電・街歩きなどの分野で活動中のライター。特に地図や位置情報に関す ることを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから法 人向け地図ソリューション、紙地図、測位システム、ナビゲーションデバイス、 オープンデータなど幅広い地図関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報ビッグデータ」(共著)が発売中。