中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2019/5/30~6/6]
今週のファーウェイ:制限措置の一部が解除されたものの、影響はさらに広がりつつある ほか
2019年6月7日 20:00
1. 今週のファーウェイ:制限措置の一部が解除されたものの、影響はさらに広がりつつある
米国ニューヨークに本部を置く米国電気電子学会であるIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)が「Huaweiの科学者による論文査読を禁止する」と発表したことが伝えられた。「制裁措置の中でも、Huaweiの科学者たちはさまざまな学会活動に参加できる」とはするものの、「Huaweiの科学者は自分以外の人間が提出した査読前の論文に記載された、技術的情報にアクセスすることが禁止される」という。つまり、公表される前の段階にある最先端の研究成果へのアクセスを制限するという趣旨か。しかし、数日でその制限は解除されたとも報じられている。ファーウェイ排除の動きは、産業のみならず、アカデミアにまで波及をしたことは驚きでもある。
また、アマゾンジャパンでも、一時、販売を見合わせていたファーウェイ製品の販売が再開されたようだ。他の量販店でも取り扱いを見合わせているところはあるので、アマゾンの動きがどう影響するかというところだろう。
一方、ファーウェイも攻めに転じようとしている。米国国防権限法の889条が違憲であるとし、米政府に対して起こした訴訟について、略式判決を出すよう申し立てたという。裁判所がどのような判断をするのかが今後の焦点となりそう。
ニュースソース
- 世界最大の学会が「Huaweiの科学者による論文査読を禁止する」と決定[Gigazine]
- IEEE、ファーウェイの活動制限措置を解除[CNET Japan]
- ファーウェイ、制裁措置に対抗--米裁判所に略式判決を申請[CNET Japan]
- 英5Gへのファーウェイ製品利用、最終決定まだ=保安担当相[ロイター]
- Amazon.co.jpでファーウェイ製品の販売が再開[ケータイWatch]
- ファーウェイ、スマホ世界販売で2位 競合が低迷する中、40%超のプラス成長を達成[JBPRESS]
- ファーウェイ、海底ケーブル事業の51%株式を中国企業に売却へ[ロイター]
- 台湾フォックスコンが中国ファーウェイ端末生産ラインの一部を停止[TechCrunch日本版]
2. アマゾンのプライベートコンファレンス「re:MARS」
日本のメディアではあまり大きく報じられていないようだが、米国ではアマゾンのプライベートコンファレンス「Re:MARS」が開催されていた。テーマは「機械学習、オートメーション、ロボティクス、宇宙に関する新しいグローバルなAIイベント」であるという。主に海外メディアが報じている記事から、そのいくつかを下記のニュースソースに紹介しておく。
まず、パーソナルアシスタントのアレクサを使って、より文脈を理解しながら自然な会話により目的が達成できるようになるというデモが披露された。これはいまのアレクサをしばらく使ったユーザーであれば誰しも必要性を感じていたことだろう。また、ユーザーが求めているものうまく表現できないときにその検索をサポートするAIシステムも興味深い。明示的に指定した単語だけによる検索に限界を感じた人からすると期待したいところである。そして、新型のドローンである。ヘリコプターと航空機の特性をあわせ持っているとされ、また、プロペラは高周波音を低減するように最適化されているということだ。
これらは、いずれも驚くようなとっぴなアイデアや技術のジャンプではないが、人々が潜在的に課題と思っていた部分をうまく取り込んでいる。
そして、自社としては「すでに20万台のロボットを世界に展開している」とも述べている。同社ではこうした技術を外販するにとどまることなく、自社のコア部分でも積極的に技術を取り入れ、最適化しているのもこれまでどおりだ。
ニュースソース
- AIについてインスピレーションが湧く--アマゾン「Re:MARS」開幕[ZDnet Japan]
- AmazonはAlexaとの会話をもっと自然にする[TechCrunch日本版]
- AWS、機械学習を利用したテキスト抽出サービス「Amazon Textract」をGAに[ZDnet Japan]
- アマゾン、「Echo Show 5」発表--プライバシー設定機能など充実[CNET Japan]
- アマゾン、「StyleSnap」を発表--AIで洋服のショッピングをサポート[CNET Japan]
- アマゾン、Prime Airの新しい配達ドローンを披露--数カ月のうちに商品を配送へ[CNET Japan]
- アマゾンが20万台以上のロボットを世界に展開中[TechCrunch日本版]
3. 海賊版は技術で撲滅できるのか? 「インターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会」第2回会合
6月3日に総務省は「インターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会」の第2回会合を開催した。昨年度、内閣府における研究会では主に「DNSフィルタリング」を検討したが、委員からは賛否両論が噴出し、中間報告もまとまらなかった。
今回も総務省の会合では、そのときにも提示された「アクセス警告方式」を中心に検討しているようだが、こちらでもコストに対しての実効性への疑問があらためて指摘された。さらに、「通信の秘密、検閲の禁止など憲法上の問題をクリアできていない」「海賊版コンテンツを閲覧またはダウンロードしたい利用者は回避可能なため、効果が限定的である」という指摘も引き続き解決されてなく、落とし所は再び不透明になりつつある。
ニュースソース
- 「アクセス警告方式」は実効性に疑問 海賊版サイト対策の有識者検討会[ITmedia]
4. アップルのWWDCの注目点はハードでもOSでもなく、セキュリティか?
今週、アップル社のデベロッパーコンファレンスWWDCが開催された。秋にリリースが予定される各種OSのバージョンアップやプロフェッショナル向けのハイパフォーマンス製品などが大きく報じられるなか、各誌がアナリシスとして掲載した話題は「Sign In with Apple」のようだ。
つまり、アップル社にとってユーザーのプライバシーとセキュリティを担保する、すなわちそれらを収益化の商材としないことが他のITジャイアントとの大きな差別化ポイントであることがアピールされたいってよいだろう。いまでは、なにかというと新たにアカウントを作ることが要求され、そこにひも付けた個人情報や行動履歴などをキーにして、さまざまな事業の収益化を行おうとする各社のビジネスモデルが目に余るともいわれている。それなりの体制を敷いていると思われる国際企業でも情報の漏えいや不適切な利用が目につく。一方のアップルも、ここへきてハードウェアの売り上げに依存する体質から、サービスやコンテンツの売り上げを拡大しようというビジネスモデルの変更をしようとしているなかで、ここを収益モデルの根本的な相違点とすることで顧客の獲得を目指すものと思われる。
そうはいってもアップル社も1つの事業者にすぎない。今後はさらに特定の事業者に委ねない技術的な方法も編み出されるだろうが、それが社会へインストールされるためには社会課題やユーザーの意識との同期も必要で、それなりの試行錯誤のための時間も必要とされるのではないだろうか。
ニュースソース
- アップルがGoogleとFacebookを名指しで批判した理由[現代ビジネス]
- Appleがセキュリティで攻めに転じた「Sign In with Apple」のインパクト[Engadget日本版]
- アップルが狙うのは脱GAFA? プライバシー問題でグーグルやFacebookと一線を画す[BUSINESS INSIDER]
- 「Appleでサインイン」はユーザーのプライバシーを守れるか[TechCrunch日本版]
5. これからのイベント
下記のニュースソースには、今週発表されたこれからのイベントを紹介しておく。JEITA(一般社団法人電子情報技術産業協会)では「Society 5.0」をテーマとしたコンファレンスが予定されている。そして、今週、KDDIは5Gのコンファレンスを発表している。「5G時代におけるビジネスの変革や、5Gのビッグデータを活用する新たな収益モデルについてのセッション、5G時代のドローンなどについてのセッションが行われる他、5Gを用いた展示物や体験ブースなども用意される」ということで、今後を見通す上で参考になりそうだ。
また、6月12日(水曜日)からはINTEROPが開催される。6月12日午後4時10分からの基調講演は「インターネットから見たブロックチェーンの発展」というテーマで行われることが予定されている。