中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2019/6/13~6/20]
フェイスブックが仮想通貨リブラを発表 ほか
2019年6月21日 12:00
1. フェイスブックが仮想通貨リブラを発表
事前のうわさどおり、フェイスブックが独自の仮想通貨リブラ(Libra)を発表した(表記は媒体によって異なって、定まっていない模様)。特徴はステーブルコインで投機的な通貨ではないこと、当面はリブラ協会という組織において、参画企業による多数決制の意思決定制度をとること、そしてスマートコントラクト機能へ対応することなどである。リブラ協会への参加はフェイスブックのほか、PayPal、VISA、Mastercardなど主要な決済機関や、eBay、Uberといったテック企業、ブロックチェーン関連ではCoinbaseなどが含まれている(仮想通貨Watch)。
ところが、すでに米国民主党下院議員からは計画停止を求める声明文が発表されている。これまでフェイスブックは個人情報をないがしろにしてきている経緯があり、それについての行政処分の結論や裁判での判決も出ていないなかで、いまだ十分な規制の枠組みがないこの分野に参入するのはいかがなものかということが趣旨のようだ(ITmedia)。
さらに、経済学者であるヌリエル・ルビーニ氏は、当面はコンソシアム組織で運営されるとはいえ、このシステムを「中央集権的に統制されていて、許可されたノードによって検証・承認される」ことを指して、ブロックチェーンではないとの見方も示しているということも報じられている(coindesk)。
いずれにしてもユーザーは世界規模で莫大な数に上り、大きな影響力を持つことからもこのサービスがどう立ち上がり、利用されていくのかはこれからの注目点といえよう。
ニュースソース
- Facebook、独自仮想通貨Libraの詳細を発表。PayPal、VISA、Mastercard、Uber、eBay、Spotifyなどが参画 ~リーブラ・ブロックチェーンはオープンソース。スマートコントラクトにも対応[仮想通貨Watch]
- Facebookのリブラ・ブロックチェーン、注目すべき4つの特長 ~仮想通貨Libraは運営団体のプール資産を裏付けとするステーブルコイン[仮想通貨Watch]
- フェイスブック、独自仮想通貨リブラの専用ウォレット「Calibra」を発表 ~Facebookアプリから友人にメッセージを送る感覚で送金可能。2020年リリース予定[仮想通貨Watch]
- Facebookの暗号通貨「Libra」に米下院が「待った」[ITmedia]
- コラム:フェイスブック、仮想通貨「リブラ」で批判派に挑戦状[ロイター]
- フェイスブックの仮想通貨は「仮想通貨ではない」。著名経済学者の見解[coindesk]
2. 今週のファーウェイ問題:膠着状態にあるなか、ファーウェイが業績見通しを下方修正
米国をはじめとする各国の安全保障問題のみならず、情報通信技術のイニシアティブを巡る争いの象徴ともいえるファーウェイ問題だが、世界的なファーウェイ製品に対するバッシングを受けて、ファーウェイは業績の下方修正を発表した。報道によれば、ファーウェイの任正非CEOは、米国による制裁が予想以上に効いていると認めた上で、業績の下方修正を発表し、売り上げへの影響が300億ドル(3兆円超)に達するとした(ロイター)。さらに、予定されていたノートパソコンの発表を中止(GIZMODO)、さらには折りたたみスマートフォンのMate Xの発売も秋に延期した(CNN)。
こうした事態を受け、ファーウェイや中国が手をこまねいているとは思えず、今後も動向からは目が離せない。
一方、日本では折しも株主総会シーズンで、NTTドコモの株主総会では当然ながらファーウェイに関する質問も出たようだ。それに対し、阿佐美弘泰副社長が「米国の対応が刻々と変わってることもあり、様子をしっかり見ながら、お客さまに迷惑をかからないようにしながら対応したい」(https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1190983.html)と述べたことが伝えられている。
ニュースソース
- ファーウェイにロシア政府が助け船? Android代替スマホOSの提供を打診か[Engadget日本版]
- ドコモ阿佐美副社長、「ファーウェイと米国の状況」に注視[ケータイWatch]
- ファーウェイ、折り畳みスマホの発売を9月に延期[CNN]
- ファーウェイの新製品ノートPC「MateBook」発表中止[GIZMODO]
- ファーウェイ業績見通し下方修正、「米制裁が予想以上に打撃」[ロイター]
- Huawei独自OS登場の真実味と虚構。Androidベースならば可能性はあるかもしれない[Engadget日本版]
3. チケット不正転売禁止法が施行
6月14日、コンサートやスポーツイベントなどのチケットの不正な転売を禁止する「チケット不正転売禁止法」が施行された(NHK)。それにあわせて、playground社ではさらに不正転売対策が強化された電子チケットのサービスの提供が開始されている(CNET Japan)。さらに、このplayground社はプロサッカー選手である本田圭佑氏の個人ファンドを引受先とした第三者割当増資の実施も発表した(CNET Japan)。
不正なチケット転売対策は関係各社にとっては頭の痛い問題とされていて、これまでもさまざまな試みがなされてきたが、法律の施行タイミングをビジネスチャンスとする各社の参入も期待される分野である。また、チケット機能の提供にとどまらず、それに新たな付加価値サービスが生まれることにも期待をしたい。
ニュースソース
- チケット不正転売禁止法 きょう施行[NHK]
- 電子チケットのplayground、本田圭佑氏の個人ファンドから資金調達--アンバサダーに就任[CNET Japan]
- 電子チケット「ticket board」、“切り替わるQRコード”で不正防止する入場アプリ[CNET Japan]
4. サブスクリプション化へ向かうゲーム産業
オンラインでのゲーム配信サービスが競争が激化しつつある。すでに、グーグル、アップル、マイクロソフトらが参入を発表し、マイクロソフトはソニーとも戦略的提携を発表した。そこへ新たに、ネットフリックスも名乗りを上げている(ITmedia)。これまでのソフトウェア、音楽、動画、本などのテキスト型コンテンツなどの流れを見れば、ゲームの配信もサブスクリプション型のサービスへと向かっていくのは必然ともいえるので驚きではないものの、これまでの経験値や市場の受け入れ姿勢を考えると、これまでになく一気に進みそうな気配を感じる。
一方で、アマゾンはこの分野では苦戦をしている模様だ。CNETが報じたところによれば、「Amazon Game Studiosは一部のチームを再編し、New World、Crucible、そして今後の発表しようと考えている新しい未発表のプロジェクトの開発を優先する(広報担当者)」(CNET Japan)ということだ。
ニュースソース
- Netflix、ゲーム参入を発表 競争激化へ[ITmedia]
- Amazon Game Studiosが従業員をレイオフ[CNET Japan]
- ゲームの世界も“Netflix化”していくのか[ITmedia]
5. 今週の注目サービス2題:ようやくサービスが時代に追いついた?!
LINEがクラウド型新卒採用支援ツール「LINE採用コネクト」の提供を2019年秋に開始すると発表した(ケータイWatch)。さまざまな定量調査によれば、もはや多くの学生がLINEを日常的に使っているとされていることから、もっと早期に提供されていてもおかしくない分野だったのかもしれない。ただ、「新卒採用・就職活動」という場面において、LINEを使っていない学生や使いたくない学生、そもそも一般的なSNSになじめない学生はその段階において企業から「ご活躍をお祈り」されてしまうのか? それともそうした画一的でない個性的なゾーンに逸材がいると見るのか? 採用担当者と学生の新たな腹の探り合いのポイントになりそう。
そして、また1つパッケージメディアの役目が終わる。街の写真館で証明写真などを撮影すると、データをCD-ROMなどのパッケージメディアに焼いて渡してくれるサービスが一般的だったが、データをクラウドに保存し、そこへアクセスするためのQRコードが印刷されたカードが渡されるようになりそうだ(CNET Japan)。いまどき、店頭で「円盤」やメモリーカードを渡されても、手元にスマホしか持ってなくて、読み込むこともできない人もいるはずなので、こちらもようやくサービスが時代に追いついたともいうべきか。
ニュースソース
- LINEの企業アカウントを通じた就活、新卒採用支援ツール「LINE採用コネクト」2019年秋に提供[ケータイWatch]
- 写真館の撮影データの受け渡し、CD-ROMからQRカードへ--「moovin studio」開始[CNET Japan]