中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2019/8/8~8/15]

パスワードの管理を強いることは破綻しているのか? ――「個人情報に関する調査」 ほか

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1. パスワードの管理を強いることは破綻しているのか? ――「個人情報に関する調査」

 CNET Japanとアンケートアプリ運営会社テスティーが共同で行った「個人情報に関する調査」の結果によると、IDやパスワードの管理にスマートフォンのメモや紙などを利用しているユーザーが多いという。また、年代を問わず、半数を超える人が同じような数字や文字列を使い回しているという。こうした問題を解決するためにも暗号化してパスワードを管理する仕組みがOSやブラウザーに標準で付いていたり、別途、有料・無料で配布されていたりしているので、それらを使えばある程度はリスクが軽減されるようにも思うが、その利用率はわずか1割内外のようだ(CNET Japan)。

 パスワードの使い回しの危険性については、大規模なリスト型攻撃や情報漏えいが発生するごとに、これまでも指摘されてきているところだが、こうした数字を見ると、そもそも多数のアプリやサービスを利用するためのパスワードというランダムな文字列を管理すること自体、人間にとって無理があるのではないかと感じる。そうなると、次は啓発や努力目標だけでなく、誰もが追加の出費なく、かつ技術的な理解があまりなくても今日からでも取り組める仕組みづくりをしないと解決しないのかもしれない。もちろん、すでにいくつかの試みはあるようなので、早期の普及を期待したいところだ。

ニュースソース

  • 若者のパスワード管理方法は「スマホメモ」が最多--約2割が個人情報漏えいを経験[CNET Japan

2. メディアビジネス分野企業2社の四半期決算

 KADOKAWAの2020年3月期第1四半期決算が発表になっている。昨年度決算を受け、大きな課題になっていたドワンゴの構造改革が奏功し、「売上高が前年同期比0.2%増の497億4500万円、営業利益が約8.7倍の34億7100万円、最終利益が約7.1倍の26億300万円と増収増益だった」(ITmedia)とし、早くも黒字への転換を果たしたようだ。さらに、出版事業やゲーム事業が好調だったことも要因として挙げられている。

 一方、クックパッドが苦戦をしている。2019年12月期第2四半期決算によれば、「営業利益が前年同期比7割減、純利益は同5割減」(BUSINESS INSIDER)となっている。国内の月間利用者数が減少を続けていることと、プレミアム会員数も2018年第4四半期をピークに減少傾向が見られ、かつての勢いは見られない。

 もちろん、なんの分析も抜きにして、業態の異なるこの両社を単純に比較するつもりで並べたわけではないが、レガシーと思われているメディア企業に勢いが戻り、既存のメディア産業と置き換わりつつあるとも思えたデジタルメディア企業に陰りが見られるという明暗は、今後の産業動向を見据える上でも興味深い課題が含まれていそうだ。

ニュースソース

  • KADOKAWA 2020年3月期第1四半期決算[官報ブログ
  • KADOKAWAの1Q、営業利益は約8.7倍に ドワンゴの「Webサービス事業」が黒字転換 構造改革が奏功[ITmedia
  • クックパッド 2019年12月期第2四半期決算[官報ブログ
  • クックパッド、1~6月期は営業利益7割減。国内利用者「3年間で1000万人減」の正念場[BUSINESS INSIDER

3. QRコード誕生25周年――意外と知られていないこんな使われ方

 スマホ決済をはじめとして、日常的に身の回りで目にするQRコードが誕生して25周年を迎えたことが報じられている(Engadget日本版)。それを記念して、QRコードを開発したデンソーウェーブ社では「QRコード25周年記念サイト」を立ち上げた(デンソーウェーブ)。

 QRコードが日本の企業による発明だということと、25周年という意外と古くから存在していたことに驚く方もいるかもしれない。そもそもは1994年に「『バーコードの読み取りが面倒だ』という製造現場の声をきっかけにしてQRコードが開発」されたというように、コンシューマーの目に触れるような用途ではなく、産業用の技術としてスタートしている。このサイトではそんなQRコードの技術的な特徴をあらためて知ることができるとともに、いままだ思いもよらないような場面でも利用が広がるのではないかという期待も膨らむ。

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4. 「インターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会 報告書」を総務省が公表

 本年4月19日から開催4回開催されてきた総務省の「インターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会」が報告書を公表した(総務省)。ここでは、昨年、知的財産本部で行われ、紛糾したことで大きく報じられた議論とば別に、総務省として「(1)アクセス抑止方策の実施の前提となる法的整理 (2)導入・実施に当たっての技術的可能性の検討 (3)その他アクセスを効果的に抑制するための方策に係る検討」を議題として行われた検討会である(総務省)。

 この報告書によれば、フィルタリングを実施するにあたり、通信事業者側とユーザーとの事前合意が必要となる方法は、実施するまでに多大な困難が伴うことから、端末側、つまりユーザーが主体的になんらかのセキュリティソフトなどを利用して行う方法の即時性が高いとしている。

 もちろん、こうした手法は1つの解決策ではあるものの、ユーザーに任せるだけでは抜本的な解決にはならないことはこれまでの議論でも指摘されてきている。そうしたことからも、この報告書では、これまでの論点の再整理をしたにとどまり、新たな合意や解決策が見いだされたとは言い難い。また、この期間に「漫画村」の主犯格とされる人物らが逮捕されたことも、この課題の緊急性という点で影響があった可能性もありそうだ。

ニュースソース

  • 海賊版サイト対策、アクセス警告方式は「困難」 端末側のフィルタリングなど推奨 有識者検討会が報告書[ITmedia
  • 「インターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会 報告書」の公表[総務省

5. 夏休みには著名人がすすめる本を読んでみては?

 夏はニュースのネタが少なくなるのだが、普段は多忙でなかなか読書に取り組めない方に向け、業界の著名人がおすすめする1冊が紹介されている記事が2本、目に留まった。それぞれ、BUSINESS INSIDERでは「ティム・クック、マーク・ザッカーバーグ…… テック界の大物がオススメする、この夏読むべき1冊」(BUSINESS INSIDER)、Gigazineでは「パーソナルコンピュータの父アラン・ケイが選ぶ『プログラマー必読の古典本』とは?」(Gigazine)という記事だ。ただし、古典本については(オンライン)書店では手に入りにくい可能性もあるが、これを機会に図書館などを探索することも1つの楽しみか。

ニュースソース

  • ティム・クック、マーク・ザッカーバーグ…… テック界の大物がオススメする、この夏読むべき1冊[BUSINESS INSIDER
  • パーソナルコンピュータの父アラン・ケイが選ぶ「プログラマー必読の古典本」とは?[Gigazine

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。