中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2019/8/1~8/8]

名機「PC-8001」発売40周年~LAVIE記念モデルよりもミニチュア版に注目?! ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 医学とICTによる次のステップ

 医療分野におけるICTの利用はこれまでも積極的に進められてきている。これまでも医療記録のビッグデータ化、AIによる画像診断の支援、IoTによるバイタルなどの遠隔把握などはよく知られた事例である。

 今週、一般に報じられて記事で目に留まったのは、研究段階にあるものとして、理化学研究所などの研究チームが妊婦への超音波検査において、AIで胎児の心臓の異常を見つける技術、そしてUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の検証試験による、VRを利用した手術訓練による技能向上性に関する成果である。

 さらに、楽天のプライベートイベント「Rakuten Optimism 2019」では「医療最前線:がん治療の革命児たち」と題したパネルディスカッションが開催され、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授は、「一人一人に合った治療を行うため個人の健康に関するデータを集めることが重要だ」とがん治療の研究開発におけるIT業界への期待を語ったことが報じられている。こうしたデータを収集することは、これまでも議論が続いているが、とりわけプライバシーに関わる部分も多く、一般には流出などの懸念も拭い切れないが、そうしたことを克服した技術基盤をどう作るか情報通信技術産業としての課題といえるのではないだろうか。

ニュースソース

  • 胎児の心臓病、AIで発見 理研、超音波画像使い新技術[朝日新聞デジタル
  • iPS細胞の山中教授、がん治療法の開発のために「IT業界の力を貸して」[日経XTECH
  • VR手術訓練に一定の効果。医学校とVRスタートアップが検証試験[Engadget日本版

2. 名機「PC-8001」発売40周年~LAVIE記念モデルよりもミニチュア版に注目?!

 「PC-8001」とは、1979年にNECから発売された8ビットパソコンで、コンピューター業界の歴史上においては“記念碑”といえる製品である。そのPC-8001が発売されて今年が40周年となる。それに合わせて、「LAVIE Pro Mobile」のスペシャルエディションが発売(PC Watch)されるとともに、プレス向けには記念の記者会見も開催された。当時のキーパーソンであった方々が登壇したこともあり、各メディアともかつてのパソコン業界を振り返る記事が多数、掲載された(ASCII.jp)。

 このPC-8001は日本独自仕様であり、いまでいうところのガラパゴスなマシンだったのだが、パーソナルコンピューターというものが広く普及をするうえでは大きなインパクトがあり、この産業の発達には大きく貢献したことに異論を唱える人はいないだろう。その後、16ビット化された「PC-9801」へと引き継がれていき、ビジネス用途などへも本格的な広がりを見せていく。このあたりの逸話については登壇した各氏を紹介した記事に詳しい。

 また、今回、記念モデルであるLAVIEにはハル研究所が開発したミニチュアコンピューター「PasocomMini PC-8001」が付属するという。内部はRaspberry Pi Zero WHで構成され、ソフトウェアとしてはPC-8001のエミュレーターが載り、N−BASIC(1.1)をはじめ、当時のソフトウェアもマシン語レベルで作動するという(AKIBA PC Hotline!)。往年のパソコンユーザーのなかには、オタクゴコロがくすぐられた人も多かったようだ。

ニュースソース

  • PC-8001のミニ復刻機やゲーミングブランドの予告も!NEC PC「PC-8001誕生40周年記者会見」[ASCII.jp
  • PC界のレジェント西和彦氏、久々の表舞台でビル・ゲイツとの思い出を大いに語る[Engadget日本版
  • 誕生から40年、N-BASICが動く「PasocomMini PC-8001」が降臨!開発者に聞いた[AKIBA PC HOTLINE!
  • 発売40年のPC-8001、ヒットの裏にあったNECの「非常識」な決断とは[日経XTECH
  • NEC PC、PC-8001生誕40周年を記念した「LAVIE Pro Mobile」 ~旧NECロゴ採用。直販500台限定で「PasocomMini PC-8001」が添付[PC Watch
  • TK-80、PC-8001、NECのパソコンはこんな偶然から始まった[ASCII.jp

3. フェイスブックの仮想通貨「リブラ」・その後

 「リブラ」に関してはその後も各方面から懸念の声が上がっている。中国最高の学術機関である中国社会科学院学部委員で国家金融発展実験室理事長の李揚氏は「従来のデジタル通貨とは違う。周到に準備され、詳細な審査に耐えられるプロジェクトだ。ローンチしたら短期間のうちに国際決済で優勢なポジションを取る」(仮想通貨Watch)という論評を発表した。一方で、米国の中央銀行の1つであるセントルイス連邦準備銀行のブラード総裁は「リブラが米ドルに取って代わることはない」と語ったとする報道もある(MIT Technology Review)。いまだ、専門家の間、そして国家の利害を背景とした意見の相違が際立つ。

 そして、フェイスブックは同社の四半期報告書において、リブラが「新しい、実証されていないテクノロジーに基づいている」ことから、デジタル通貨を取り巻く法的環境は「変化しており、不確定要素がある」と記載されていることも報じられているところだ(MIT Technology Review)。ここまでの国際的な懸念が広がることが想定されていたのかどうかは不明だが、同社としても、決して認可されることを安易に考えていることもなく、さらに力ずくで規制を突破しようということではない冷静な姿勢を感じる。

ニュースソース

  • 「Facebookの仮想通貨リブラは中国の安保戦略にも影響」——中国社科院 ~ローンチされたら短期間で普及[仮想通貨Watch
  • フェイスブックの国際デジタル通貨Libraはプライバシー対策が曖昧だと監視団体が警告[TechCrunch日本版
  • 「リブラは米ドルにとって脅威でない」セントルイス連銀総裁語る[MIT Technology Review
  • Facebookの「リブラ」複数国のデータ保護当局が共同で懸念を表明[coindesk
  • 「リブラは実現しない可能性がある」 フェイスブック認める[MIT Technology Review
  • Libraが「銀行」に挑戦状、見えてきたフェイスブックの狙いとリスク[日経XTECH

4. 「情報セキュリティ白書2019」発行

 8月8日、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は「情報セキュリティ白書2019」を発表した。印刷版は有料で、アマゾン(アマゾン)、全国官報販売共同組合(全国官報販売共同組合)、IPAへ直接注文することで購入(IPA)することができる。一方、PDF版は会員登録の上、簡単なアンケートに回答することで無償で入手することもできる(IPA)。

 今年度版の副題は「新しい基盤、巧妙化する攻撃:未知のリスクに対応する力を」とされていて、IoT、AI、ブロックチェーンなどの新たな基盤に対する攻撃や今後の懸念とともに、ユーザーの心理的な脆弱性を突くような手法の巧妙化について指摘をしている。とりわけ、事件発生時点で、一般に報道されているよな攻撃の名称や定量的な観測だけでなく、より具体的に手口などが解説されていることから一読の価値はある。

ニュースソース

  • 情報セキュリティ白書2019:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構[IPA

5. イベントカレンダー:ブロックチェーンとSociety 5.0

 秋に計画されているカンファレンスの概要が発表されつつある。

 まず、ブロックチェーンカンファレンス「b.tokyo 2019」が10月2日から3日に東京で開催される(coindesk)。さらに、Ethereum財団が主催するEthereumの開発者向けカンファレンス「Devcon 5」が10月8日~11日に大阪で開催される(仮想通貨Watch)。どちらも関連ビジネスや技術に興味を持つ人にとっては注目すべきイベントといえる。

 また、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)はSociety 5.0にまつわるセミナーを東京(JEITA)と大阪(JEITA)で計画している。こちらは5G、モビリティ、AIなどの技術動向や標準化がテーマとなりそうだ。

ニュースソース

  • 【b. tokyo】 「地域通貨」再考─トークンは小さな経済圏をつくるか?[coindesk
  • 【b. tokyo】ノン・ファンジブル・トークン(NFT)の可能性──ブロックチェーンの"価値づくり"とは何か?[coindesk
  • 世界最大のブロックチェーン開発者イベントDevcon5、チケット第2弾を8月6日販売 ~10月大阪ATCホールに世界中のイーサリアム関係者が集う[仮想通貨Watch
  • JEITA 2019 技術セミナー~日本が目指すSociety5.0を支える技術[JEITA
  • JEITA 国際戦略・標準化セミナー~Society5.0を創造する新たな標準化の取組み[JEITA

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。