中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2019/7/25~8/1]

「CEATEC 2019」のキーノートスピーカーと企画展示テーマが発表される ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 「CEATEC 2019」のキーノートスピーカーと企画展示テーマが発表される

 一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)など業界3団体で構成するCEATEC実施協議会は、2019年10月15日~18日に開催されるイベント「CEATEC 2019」(幕張メッセ)における企画展示、およびキーノートスピーカーを発表した。

 かつてのCEATECは映像音響機器などをはじめとしたデジタル家電製品などを中心とした展示会だったが、時代の流れとともに、この数年はより幅広いデジタル技術の総合展示会になり、出展社やスピーカーの業種などの幅も大きく広がっている(INTERNET Watch)。

 まず、企画展示は「Society 5.0 TOWN」を展開すると発表した。ここでは、2030年を想定した未来の“まち”で実現されるであろうエネルギー、交通、インフラ、防災などの都市機能サービス、物流、販売。金融などの商業サービス、医療、娯楽、生涯学習などの生活サービスなどを、複数の出展企業や団体らによる連携により展示するとしている。参画企業や団体は発表段階では24社であり、半数以上が初参画となっていることも注目点といえよう。これまでに接点のない業界の動向を知ったり、関係を構築するチャンスにもなろう。

 また、基調講演の登壇者としてもそれを踏まえるように、航空会社、総合建設会社、交通関連企業らのトップが名前を連ねている。国の政策としてのSociety 5.0を具体的にイメージできる場となることも期待される。

ニュースソース

  • 「CEATEC 2019」に「Society 5.0 TOWN」出現、2030年の“まち”で実現するサービスを見せる企画展示 初参画のANA、関西電力、大成建設などを含む24社・団体が参画[INTERNET Watch
  • CEATEC 2019、AI で社会課題の解決を目指すエクサウィザーズ 石山洸社長によるキーノートが決定[JEITA
  • CEATEC 2019、JapanTaxi 川鍋一朗社長によるキーノートが決定[JEITA
  • CEATEC 2019、JTB 田川博己会長によるキーノートが決定[JEITA
  • CEATEC 2019、オープニングキーノートにANA ホールディングス 片野坂真哉社長の登壇が決定[JEITA
  • CEATEC 2019、ファナック 稲葉善治会長によるキーノートが決定[JEITA
  • CEATEC 2019、メディアアーティスト 落合陽一氏によるキーノートが決定[JEITA
  • CEATEC 2019、竹中工務店 佐々木正人社長によるキーノートが決定[JEITA

2. 知的財産推進計画2020策定に向けた検討――知的財産戦略本部

 政府の知的財産戦略本部は「知的財産推進計画2020策定に向けた検討」の第1回会合を7月26日に開催した。

 記事執筆時には議事録はまだ公開されていないタイミングであるが、この会議の配布資料が公表(内閣府知的財産戦略本部)され、そのなかに「インターネット上の海賊版対策について」と題するファイルが含まれている。

 この資料によれば、2018年の「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」でも俎上にあがった、海賊版対策に関するさまざまな施策が整理されたうえで再掲され、2019年、2020年、2021年以降とそれぞれの担当省庁においてできるところから段階的に実施したり、法案提出の準備をしたり、さらなる検討をしたりするというようにそれぞれの事項がまとめられている。

 すでに、2018年には「漫画村」のような“大手違法サイト”が事実上消滅し、今年に入ってから実行犯の摘発も進んだことから、関連企業の業績の数字や各種市場規模推計からも売り上げの改善が確認されているところであり、今後も具体的な対策がとられることは産業にとって重要な課題であろう。

 一方で、昨年の会議以来、議論の中心となっている海賊版サイトに対するDNS操作によるアクセス遮断、つまり「ブロッキング」に関しては「内閣府および関係省庁」において「他の取り組みの効果や被害状況を見ながら検討」とされ、先送りとも読めることからか、この会議に参加した有識者のなかからは議論再開の意見が出たということが報じられている(時事ドットコム)。

 これまでの議論で、ブロッキングがそもそものインターネットのコンセプトやアーキテクチャーと整合するのかということや、通信の秘密等の問題やオーバーブロッキングなどの問題も指摘されている手法だけに、引き続き、慎重な議論や検討が必要だろう。

ニュースソース

3. 今週のブロックチェーン:各国におけるブロックチェーンへの対応

 フェイスブックの独自仮想通貨「リブラ」については各国がスタンスを発表し終わったこともあり、ニュースの露出数としては減少しているように見える。そのなかで、日本のマネックスがリブラ協会への加盟を申請中であるということが報じられている(coindesk)。リブラ協会へは国際企業が多数参加するなか、日本企業の名前がなかったことを懸念する声もあった。他にも申請中の企業はあってもおかしくはないので、今後のローンチメンバーの顔ぶれは注目点になりそうだ。

 そして、フェイスブックは「リブラの提供時期は保証できない」(仮想通貨Watch)としながらも、「規制当局から賛同を得られるように時間を費やす」(coindesk)と、当局からは厳しい対応がされているなかでも粘り強く説明していくとしている。

 一方、先進各国以外の政府や金融機関での仮想通貨に関する対応状況が報じられている。下記のニュースソースでは、イラン(仮想通貨Watch)、インド(MIT Technology Review)、クロアチア(coindesk)、ベネズエラ(coindesk)、スイス(coindesk)、韓国(BUSINESS INSIDER)などについての記事が並んでいる。それぞれは禁止をするということだったり、積極的に取り組むということだったりとまちまちだが、仮想通貨の影響は各国へと広がりつつあると見てよいだろう。

ニュースソース

  • イラン政府、仮想通貨マイニングを承認し「米国の経済制裁の影響軽減」 ~電力需要ピーク時には制限も。ライセンス制による認可[仮想通貨Watch
  • インド、暗号通貨の全面禁止を検討=政府委員会が提案[MIT Technology Review
  • クロアチア郵便局、仮想通貨交換サービスの広域展開に先駆け、試験運用を開始[coindesk
  • ベネズエラ、空港税収入をビットコインに交換──仮想通貨を利用してドルを獲得:報道[coindesk
  • 仮想通貨特化の金融アプリ、スイス規制機関からライセンスを取得[coindesk
  • 韓国、釜山をブロックチェーン特区に。文在寅大統領は「国の生き残りかけた規制緩和」と発言[BUSINESS INSIDER
  • 米財務長官「ビットコインは話題にもしない」リブラへの懸念強調 ~Facebookは仮想通貨ローンチ前に規制当局の懸念解消が必須[仮想通貨Watch
  • ブロックチェーンを活用した金融サービスを展開するドイツのスタートアップBitwala GmbH に出資[ソニーファイナンシャルベンチャーズ
  • マネックス、リブラ協会への加盟を申請中──VISA、ウーバー、eBayなどに次ぐ29社目になるか[coindesk
  • Facebook「仮想通貨リブラの提供時期保証できない」——CNBC報道 ~複数の法域で当局の監査継続のため。2019年第2四半期決算報告より[仮想通貨Watch
  • ザッカーバーグ氏「どれだけの時間がかかっても」──FBリブラへの規制当局の賛同を得るために[coindesk
  • 仮想通貨マイニング2位の中国カナン社が米国で秘密裏にIPO申請 ~相場に阻まれ政治に阻まれ3連敗。4度目の正直なるか?[仮想通貨Watch
  • 米リップル、米国議会に向け仮想通貨をひとくくりにした規制案に忠言 ~「米国内のイノベーション促進には通貨の分類と規制の明確化が必須」[仮想通貨Watch

4. 「7pay」が9月末で終了へ

 サービスインとともに、不正アクセス事件で一気に信頼を失ったQRコード決済「7pay」が9月末でサービスを終了すると発表した(日経XTECH)。また、その前にリスト型攻撃への対応策として同社によって実施されたユーザーのパスワード強制リセットについても、その実効性の観点から識者の評判は悪く、さらに火に油を注いだ感がある(INTERNET Watch)。

 同社がこれほどまでに早い終了の判断をしたのには、10月の消費税増税時に政府の経済政策として計画されているキャッシュバックキャンペーンのタイミングに、システムの改修やユーザーの獲得などのマーケティング施策が間に合わないということがあるのだろう。また、新たにシステムを改修するにしてもさらなる多額の費用が見込まれるうえ、その後も愉快犯の標的とされる可能性が高い。そうした意味で、これ以上の事件化は避けたという判断もあったと思われる。

 一方で、ここでの撤退がこれからのキャッシュレス化というトレンドに対して、中長期で業界大手の同社にどのような影響があるかということも気になるところだ。すでに「nanaco」という非接触型カードでの電子決済があるので、そちらを伸ばしていくという選択肢も考えられる。また、こぞって各社が参入したことで乱立ぎみともいえるQRコードによるスマホ決済そのものが日本に定着するのかどうかについて、客観的に確証が持てるようなムーブメントには至っていないように見える。ある市場調査によれば、消費者はあくまでサービスローンチ直後の大型割引キャンペーンだけが目当てで、その本質的利便性を評価し、その後の支払い手段の習慣化にまでは到達していなさそうだ。さらに、そもそも信頼性が高いことで知られている日本の紙幣を使った払いで十分という人も少なくはなく、増税分のキャッシュバックのメリットは受けつつも、ここから一気に支払い方法に対する習慣が変わりそうな気配も感じないのだが……。

ニュースソース

  • セブン&アイが「7iD」パスワードを強制リセット、ユーザーに再設定を呼び掛け 7月29日時点で「7pay」被害額は3860万円に[INTERNET Watch
  • セブン&アイが7pay終了へ、再開の可能性は「今後検証」[日経XTECH

5. 成果をあげつつある気球型成層圏インターネットインフラ

 インターネットの全世界の人口に対する普及率は年々増加しつつあり、およそ60%にまで成長した。一方、地球の面積に対するインフラのカバー率はまだまだといったところだ。日本ですらLTEの国土面積カバー率は60%ともいわれている。つまり、この日本でも農地や山岳地域ではいまだカバーされていないところがあるということを意味し、さらに世界を見渡せば砂漠やジャングルのような過酷な環境で人口の少ない地域は推して知るべしである。とりわけ開発途上国においてはインフラ整備は経済的にも大きな課題ともいえるだろう。今後、地球上における情報の地域格差を減少させ、それによって経済、医療、教育、災害対策などの基本的な社会課題を解決に導くためにはいかに情報インフラを整備するかが重要となる。

 それを実現するうえで、成層圏でのインフラは重要なソリューションの1つである。これは無線通信基地局を搭載した気球を成層圏で飛行させ、一気に広い範囲をカバーしようという試みである。しかも、衛星を打ち上げるよりも安価であり、さらに成層圏は各国の領空であるとされているため、衛星のように上空を利用することによる政治的なあつれきも生じにくいとされている。

 そのようななか、グーグルの兄弟会社であるLoonが気球による成層圏飛行が100万時間を突破したと発表している(CNET Japan)。当初、これは本当に実用になる方法なのかとにわかには信じられない計画とも感じたが、着実な実績を出しつつあるようだ。

 こうした気球を使った成層圏インフラとは別に、OneWebをはじめとする低軌道の通信衛星を多数打ち上げる計画も結果を出しつつあり、近い将来、成層圏のインフラとの相互運用による地球上のインターネットカバー率向上につながることが期待される。

ニュースソース

  • グーグル兄弟会社のLoon、ネット接続用の気球による成層圏飛行が100万時間を突破[CNET Japan

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。