中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2019/8/15~8/22]

香港デモの混乱はインターネットにも広がる ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 香港デモの混乱はインターネットにも広がる

 香港で起きている政府に対する一連のデモ活動と混乱については各メディアの報道でも知られているとおりだが、それだけにとどまらず、混乱はインターネット上にも広がっている。それにともない、情報通信サービスを提供するプラットフォーマーらにとっても、その都度、難しい判断が迫られている。

 米国時間8月19日、ツイッター社が国営報道機関の広告掲載を認めないことを発表したことが報じられている。そして「香港の抗議活動の弱体化を図るものを含めて、香港における政治的不和を植え付けることを目的とした中国からの936件のアカウントを使用停止にした」(CNET Japan)と発表した。

 さらに、「米インターネット通販最大手アマゾン・ドット・コムが香港の反政府デモを支持するスローガンがプリントされたTシャツを販売しているとして中国のソーシャルメディアで槍玉に上がっている」(ロイター)とも報じられている。

 また、中国の電子商取引大手のアリババは「香港で政治的な混乱が高まっていることから、香港市場での最大150億ドル規模の株式上場計画を延期した」ともされる(ロイター)。言うまでもなく同社の事業規模からも世界的大企業であるだけに、こうした戦略変更による影響は同社の経営のみならず、社会的な影響としても決して少なくはないだろう。

ニュースソース

  • TwitterとFacebook、香港デモを批判する中国関与のアカウントを停止[CNET Japan
  • 米アマゾン、香港デモ支持のTシャツ販売に中国で批判殺到[ロイター
  • アリババ、政治混乱高まる香港での株式上場を延期=関係筋[ロイター

2. バイナンスが仮想通貨「ヴィーナス」を発表

 仮想通貨を提供する各社とも、これまでの投機的な通貨ではなく、安定した価値を維持し、決済の用途として実用的な通貨を開発する方向へとシフトしつつあるようだ。

 国際的な仮想通貨交換所大手であるバイナンス社は「リブラのローカル版」とも位置付ける新たな仮想通貨「ヴィーナス(Venus)」をローンチする計画を明らかにし、世界各国の政府や企業に参画を呼び掛けたとされている(仮想通貨Watch)。一時、リブラへの参加もあるのではないかとも噂がされていた同社だが、ここに来て独自の路線へと舵を切ったか。

 また、テザー社は人民元と連動するステーブルコイン「CNHT」を発行する計画があるということが報じられている(仮想通貨Watch)。

 一方、フェイスブックの独自仮想通貨「リブラ」について、世界各国の行政府、金融当局、投資家らの間の評価はいまだ定まっていない。欧州連合(EU)当局は、「データの共有や消費者情報の利用について『競争が制限される』おそれがあることを懸念している」(CNET Japan)とし、さらに、フェイスブックの「メッセンジャー」「WhatsApp」などのメッセージングサービスとの統合されたあとのサービスのあり方にも関心を持っているとされている。

ニュースソース

  • 仮想通貨交換所バイナンス、地域版リブラの仮想通貨「ヴィーナス」を発表 ~政府・企業に参画呼びかけ。最先端ブロックチェーン企業としてのノウハウ生かす[仮想通貨Watch
  • Tether、人民元と連動するステーブルコインCNHTの発行計画 ~中国メディアCHAINNEWSの報道で明らかに[仮想通貨Watch
  • Facebookの仮想通貨「Libra」、EU独禁当局が調査か[CNET Japan

3. Tポイントとau WALLET――仮想通貨と連動する新たなサービスが登場

 仮想通貨が他のポイントシステムやペイメントシステムとの連携をする事例が興味深い。

 1つはbitFlyer社によるもので、Tポイントをビットコインと交換可能にするというもの。具体的には、「ビットコインを購入する際に現金のほか、Tポイントを選べるようにした。Tポイントの場合は100ポイントでビットコイン85円相当を購入できる。Tポイントを登録済みの『Yahoo! JAPAN ID』とbitFlyerのアカウントを連携させて利用する。最低利用は100ポイントから」(日経XTECH)ということだ。

 もう1つは、ディーカレット社の「DeCurretアプリ」からの仮想通貨の出金先として「au WALLET 残高」へのチャージ(入金)ができるようになった(ASCII.jp)。チャージ後は、スマホ決済サービス「au PAY」をはじめ、「au WALLET プリペイドカード」「Apple Pay」での決済サービスとして利用ができる。

 いますぐに日々の生活の場面での明らかな実用性向上に寄与するかどうかということよりも、いままでは銀行口座を介することが主であった仮想通貨という“資産”が、知名度のあるペイメントに利用できるシステムとの間で直接の連携をし始めたという観点において、今後の動向にも注目しておきたい。

ニュースソース

  • KDDI 「au WALLET 残高」へのチャージが仮想通貨から可能に[ASCII.jp
  • Tポイントをビットコインと交換可能に、暗号資産取引所大手のbitFlyer[日経XTECH

4. アマゾンが廃棄商品を減らす取り組みを開始

 電子商取引により、従来よりも消費が活発になることが期待されるとともに、そこで生じる廃棄によるロスも増大してしまうことから、とりわけ先進国においてはいかに廃棄を減らすかということを課題としている。

 そのようななか、アマゾン・ドット・コム社は、業者や個人が出品できる「マーケットプレイス」の売れ残った商品やユーザーから返品された商品を慈善団体に寄付するプログラム「Fulfillment by Amazon(FBA) Donations」の開始を発表したと報じられている(ITmedia)。

 とりわけ、圧倒的な取扱量を誇るアマゾンがこうした取り組みを開始することの意味は大きい。現在、米国と英国のみということだが、その成否によっては、これから各国にも広がる可能性もありそうだ。さらに、国をまたいで、災害の発生した地域や、経済的に恵まれない地域に対する支援という観点も期待できそうだ。

ニュースソース

  • Amazon.com、マーケットプレイスの売れ残り商品を慈善団体に寄付するプログラム[ITmedia

5. ドキュメンタリー番組「天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する」――ネットフリックスでこの9月から配信予定

 ネットフリックスが新たなドキュメンタリー作品を配信することが発表されている(CNET Japan)。

 それは、マイクロソフト社の創業者として知られるビル・ゲイツ氏の半生記だ。記事によれば、「Inside Bill's Brain: Decoding Bill Gates(天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する)」というタイトルの3回シリーズとなるドキュメンタリー番組で、この9月に配信開始されるようだ。すでに日本語のプロモーションページもあることから、日本語版も用意されるのではないかとみられる。

ニュースソース

  • ゲイツ氏のドキュメンタリー「天才の頭の中」、Netflixで配信へ[CNET Japan

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。