中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2019/8/22~8/28]

フェイスブックの独自仮想通貨「リブラ」に対する強気と弱気 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. フェイスブックの独自仮想通貨「リブラ」に対する強気と弱気

 「リブラ」に対しては、相変わらず米国を含む各国の議会や金融当局から厳しい見方をされている。

 そのようななか、フェイスブックはロビー活動を行うコンサルティング企業として、FSベクター社との契約を発表した。FSベクター社の共同経営者であるジョン・コリンズ氏は、米国で有名な暗号通貨取引所「コインベース(Coinbase)」で政策責任者を務めた経歴を持つと報じられている(MIT Technology Review)。

 だが、リブラの運営団体として設立されたリブラ協会加盟会社のなかにはいくぶん弱気の姿勢も見え始めているとも言われている。「最近の報道によると、一部の加盟企業は、当初の決意が揺るいでいるようだ」(coindesk)と報じられている。これはリブラに対して積極的な姿勢を見せることによって、既存事業も含めて、規制当局からのプレッシャーを受ける可能性があることを危惧しているとも見られる。

 フェイスブック自体も認可されることの難しさはこれまでも認識していることから、一連の動きはより強固な体制づくりと、実力のあるコンサルティング会社との契約を必要としているということだろう。

ニュースソース

  • フェイスブックがロビー会社と契約、暗号通貨「リブラ」実現へ本腰[MIT Technology Review
  • リブラ協会に加盟する仮想通貨関連企業、規制当局の反発に動じず[coindesk

2. 日本語対応もお願いします! ――文法チェックと画像内テキスト検索

 グーグルは2つの機能追加を英語向けに開始する。

 1つはGmailへのスペルや文法のチェック機能の追加だ。スペルチェックはほかにも方法はあったが、文法チェックはネイティブスピーカーではない私たちにも役に立ちそうな機能追加だ。個人的には文法チェックとしては、「Grammarly」を利用することがあり、それなりに便利に感じているのだが、グーグルの最新の技術によってどこまで進化させられたかが楽しみだ。

 もう1つはGoogle フォトで撮影した画像内のテキスト検索機能だ。スマートフォンのカメラでは風景や食べ物だけでなく、パワーポイントや印刷された資料などを撮影することも多いと思うが、これをあとから検索したいということはみんなが感じていたことではないだろうか。

 あっと驚くようなアイデアの実装よりも、こうした質的な向上を狙った実装という点では、まだまだほかにも改良の余地がありそう。

ニュースソース

  • 「Gmail」にAI活用のスペル/文法チェック機能--「G Suite」向け、英語で利用可能に[ZDnet Japan
  • Googleフォト、画像内テキストによる検索が可能に(まずは英語)[ITmedia

3. NTTドコモが「ケータイ社会白書2019年版」を無償公開

 NTTドコモの研究部門であるモバイル社会研究所が2010年~2019年のスマートフォンやケータイの利用動向をまとめた「ケータイ社会白書2019年版」を無償公開した(モバイル社会研究所)。

 大きな話題としては、高齢者層のスマートフォン所有率が初めてケータイ(ガラケー)を上回ったことなどが挙げられていて、「同研究所ではこれを『幅広い世代においてスマートフォンが生活の一部として根付いてきた結果』」だとしている(ケータイWatch)。それ以外にも、コミュニケーション手段の変化や消費の変化などにもついて触れている。ひとつひとつは個別の専門調査でも指摘されてきたことも多いが、要約版を見るだけでも、いまのモバイル時代を一般にわかりやすく可視化した資料として興味深い。

ニュースソース

  • 高齢者層のスマホ率が初のケータイ超え、「ケータイ社会白書2019年版」が公開[ケータイWatch
  • 「ケータイ社会白書2019年版」(モバイル社会研究所)[モバイル社会研究所

4. 米国の電子書籍市場は軟調、一方でオーディオブックは急成長――2019年上期の米国電子出版市場レポート

 米国出版社協会(AAP:The Association of American Publishers)は2019年上半期(1月~6月)までの(加盟)出版社の売上レポートを発表した。

 それによると、売上金額規模では対前年同期比で6.9%の増加となっていることから、日本のような長期縮小傾向は見られない。ただし、電子書籍は対前年同期比で3.8%の減少となり、全一般書売上の14.3%になった。こうした電子書籍市場規模の減少傾向はこの数年続いているものだ。一方、ダウンロードオーディオ(オーディオブック)は対前年同期比で33.8%の増加をしていて、これは全一般書売上の8%を占めるにまで急成長したことになる。この両者を「電子版」としてくくるとすると、それは全一般書売上の22.3%になる。

 なお、このAAPの統計はあくまでも加盟している出版社を中心にした調査結果で、ここに加盟していない独立系出版社、セルフパブリッシングなどの市場は含まれていない。また、ジャンルも一般書分野のみであり、教科書、専門書などは含まれていないので、日本の統計との比較する場合には要注意である。

ニュースソース

  • AAP StatShot: Publisher Revenue at $6 Billion for First Six Months of 2019[AAP

5. イベントカレンダー:いよいよ「FIN/SUM 2019」開催

 9月3日~6日、東京・丸の内において、金融庁と日本経済新聞社は共催で「FIN/SUM 2019」という国際会議を開催する。これは「日本におけるフィンテック(金融とテクノロジーの融合)の発展と成長を世界に発信するとともに、日本をハブにしたグローバルで多様なフィンテック・ステークホルダー・エコシステムの構築と新たな形での連携・協力を目指すイベント」(金融庁)である。

 これまで積み重ねてきた地球規模でも情報通信インフラの広がり、情報処理関連技術の発達がいよいよ世界経済に直接的に大きな影響を及ぼことが見込まれることから、暗号通貨をはじめとして、さまざまな金融分野において、期待だけではなく、重要な課題も生じている。共催とはいえ、金融庁自らがこうしたイベントをリードし、専門家との知見を共有する機会を設けるというのは珍しい。

 登壇者も麻生太郎財務大臣・金融担当大臣をはじめとし、遠藤俊英金融庁長官、黒田東彦日本銀行総裁、高島誠全国銀行協会会長、そして世界各国からも学識経験者や事業者ら多数が登壇する予定になっている。

 「仮想通貨 Watch」でも、その内容をレポートする予定になっているので、ご期待をいただきたい。

ニュースソース

  • 「FIN/SUM 2019」の開催について[金融庁

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。