中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2019/8/28~9/5]

ガートナーが「先進テクノロジーのハイプサイクル:2019年」を発表 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 今週の行政・政策動向:マイナンバーを利用する新ポイントシステム案が浮上

 今週、情報通信技術分野と関わりのある行政・政策に関する話題が多く報じられている。

 このなかで一般メディアでも多く報じられたのがマイナンバーをひも付けたキャッシュレスシステムでのポイント還元施策の案である(Impress Watch)。多額の予算を投じたものの、いまだ遅れているマイナンバーカードの普及と、消費税増税の負担軽減、そしてキャッシュレス化の推進という3つの要素を一気に促進することが狙いと思われる。もちろん、セキュリティ面などから生じる不安もあるがどう解決されるのかは今後の具体化に向けたプロセスのなかで注目すべきポイントだろう。

 また、公正取引委員会は巨大IT企業を、独占禁止法に基づいて規制する指針案を公表した(公正取引委員会)。多くの人が利用する情報通信サービスなどを運営し、大きなシェアを持つこれらの企業がその立場を利用して、不当に消費者から個人情報を入手することが「優越的地位の濫用」にあたる可能性があるとしていて、今後の法制化を検討している。9月30日まで一般からの意見を募集している。

 さらに、「令和2年度総務省所管予算概算要求の概要」が発表されている(総務省)。

ニュースソース

  • Society 5.0時代の持続可能な地域社会の構築(総務省重点施策2020)[総務省
  • デジタル時代の安全保障、欧州機構と議論 外務省[朝日新聞デジタル
  • マイナンバーカード普及に向け新ポイント還元導入へ。〇〇ペイ連携[Impress Watch
  • 金融庁、仮想通貨交換所のサイバーセキュリティ体制見直しの方針 ~令和元年度の金融行政の方針を発表。改正法対応とJVCEAや海外当局との連携強化など[仮想通貨Watch
  • 「デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(案)」に対する意見募集について[公正取引委員会
  • 公取委、プラットフォーマーの個人情報取得を規制 指針案を公表[ITmedia
  • 総務省、“駆け込み購入”あおるスマホ広告を問題視 10月の携帯料金規制強化で[ITmedia
  • 東京都、5Gの早期エリア構築に向けICT戦略「TOKYO Data Highway構想」発表[CNET Japan
  • 令和2年度総務省所管予算概算要求の概要[総務省

2. センシングとモビリティ、高度なAI/アナリティクスなど――ガートナーが「先進テクノロジーのハイプサイクル:2019年」を発表

 米ガートナー社が2019年の「先進テクノロジーのハイプサイクル」を発表した(ガートナー)。これはビジネス戦略の担当者や研究開発のリーダーらが先進テクノロジーのポートフォリオを策定する際に考慮すべきテクノロジーとトレンドを表すために毎年発表している。このチャートでは、テクノロジー普及の過程を「黎明期」「過剰な期待のピーク期」「幻滅期」「啓蒙活動期」「生産性の安定期」という5段階に分け、それぞれのテクノロジーをプロットしている。なお、誤解されがちなのが「幻滅期」というフェーズだが、決して「ダメな技術」という烙印が押されたという意味ではなく、夢の技術としてもてはやされ、さまざまな取り組みに着手すると、困難もあるということ現実に向かい合った段階を意味している。それを乗り越えることがさらなる次の普及へとつながると考えられている。本年版において、ガートナー社では、センシングとモビリティ、オーグメンテッドヒューマン、ポストクラシカルなコンピューティングとコミュニケーション、デジタルエコシステム、高度なAI/アナリティクスの5つのトレンドに着目している。

 さらに、筆者の観点からすると、自律走行(レベル4)が幻滅期に、5Gが「過剰な期待のピーク期」にプロットされたことは象徴的で、今後の技術や産業の進展に向けた大きな節目に到達しているといってもよいのではないか。

ニュースソース

  • ガートナー、先進テクノロジーのハイプサイクル2019年版を発表、5Gやエッジ分析が期待のピーク[IT Leaders
  • ガートナー、「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2019年」を発表[ガートナー

3. 日本ABC協会が新聞・雑誌系ウェブメディアのページビューを発表

 一般社団法人日本ABC協会が新聞・雑誌系ウェブメディアのページビューやユニークユーザーを発表した(日本ABC協会)。日本ABC協会は新聞・雑誌メディア業界において「第三者として部数を公査(監査)し、発表・認定している機構」で、「広告の売り手である発行社と、買い手である広告主、仲介する広告会社の三者で構成」されている団体。「公正な広告取引を目的とし、一定のルールのもとに公正な立場から調査し、公表」をしている。

 一般的に、新興のウェブメディアに対して、既存のプリントメディアは劣勢とも思われるが、このランキング上位のメディアではそのブランド認知度や編集企画力を生かしつつ、デジタルメディア分野においてもその存在を確かにしつつある。この1年くらいの間の大手出版社の決算数字からもウェブメディアへの取り組みが奏功しつつある様子もうかがえることとも符合する。

ニュースソース

  • 特別公開〈雑誌発行社会員〉Web指標一覧 2019年4-6月期[日本ABC協会
  • 新聞・雑誌系ウェブメディアのページビュー上位5サイトは? 日本ABC協会が2019年第2四半期のウェブメディアUU・PV数を発表[ガジェット通信

4. 「顔」の次は「手」? ――アマゾンの個人認証技術

 MIT Technology Reviewの記事によると、「アマゾンが、手をかざすことで個人を識別できるスキャナーを使ったショッピング体験をテスト中」だという(アマゾンはコメントを拒否しているとしている)(MIT Technology Review)。

 一般消費者が利用する個人を認証の方法はこれまでにも指紋や顔などいくつかの方法が試されてきた。しかし、アマゾンにとっては、同社の顔認証技術に人種差別的な要素があると指摘されていたり、街を歩いているだけでも認識されてしまうことのプライバシーへの問題が指摘されたり、さらには識別精度的な不正確さについても指摘がなされてきた。そして、一部の都市では法律による規制にまでつながった。

 こうした経緯があったからというわけでもないのだろうが、発見された課題の解決に向けては、新たな研究開発によってより高いユーザービリティや社会からの安心感の得られる方法を積極的に模索し続け、そこから得られた知見はぜひとも社会ともシェアしてほしいと感じる。

ニュースソース

  • アマゾンが今度は「手で認証」を実験中、店舗決済に導入か[MIT Technology Review

5. イベントカレンダー:日本時間9月11日午前2時、いよいよ新型iPhoneが発表

 いよいよ日本時間9月11日午前2時、アップル社が新製品発表をすると報じられている(ケータイWatch)。iPhone本体については、すでにリーク情報なども流れていることから、おおよその予測はついているともいえるが、それに加えて、同時になにか他のものも発表されのではないかということも注目点となろう。それとともに、高額になりすぎたともいわれるiPhoneの価格と日本の大手携帯通信事業者の端末割引や料金体系の変更と、「長期契約の縛り」がゆるくなったことによる顧客がどう通信事業者を移動するのかという動静にも注目が集まる。

ニュースソース

  • 欧州家電見本市、主役はスタートアップ きょう開幕[日本経済新聞
  • Apple、9月11日2時(日本時間)にスペシャルイベントを開催[ケータイWatch
  • アップル、紛失防止タグを近く発表か--「iOS 13」内部ビルドに手掛かり[CNET Japan
  • 次期Apple Watchは睡眠トラッキング機能を搭載か[TechCrunch日本版

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。