中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2020/5/12~5/21]

いざ出社、その前に――緊急事態宣言解除後のセキュリティチェックリスト ほか

eHrach/Shutterstock.com

1.「濃厚接触通知アプリ」の開発動向

 アップル社がiOS 13.5をリリースした(ケータイWatch)が、これには「濃厚接触通知アプリ」をサポートするためのAPIであるExposure Notification APIが実装されている(ケータイWatch)。この上に各国の保健当局が濃厚接触通知アプリを実装することになる。

 日本政府の「新型コロナウイルス感染症対策テックチーム」はこのアプリの開発状況について公表をしている(ケータイWatch)が、エンジニアの民間団体「コード・フォー・ジャパン」が開発をしてきた「まもりあいJAPAN」はアップル社とグーグル社が定めたこの技術に準拠していたものの、「この標準技術を(使って)実装できるのは1つの国につき1アプリのみ」と定められていることから、現状でのソースコードをオープンソースとして公開し、今後は厚労省のアプリ開発に協力する方針に切り替えたと報じられている(ITmedia)。

 なお、米国では疾病予防管理センター(CDC)、ホワイトハウス・コロナウイルス・タスクフォース、連邦緊急事態管理庁(FEMA)が共同で「COVID-19 3.1」を開発し、リリースした。すでに、米国のApp Storeにて無償配布を開始している(ITmedia)。なお、日本からはダウンロードできない。

 また、フランス政府も「濃厚接触通知アプリ」の開発を進めているが、アップル社とグーグル社が提唱した仕様とは異なる(TechCrunch日本版)。

 今後、このアプリが日本でいつどのようにリリースされるかは明らかにされてはいないが、国際的な開発動向からしても、それほど遅くないタイミングでリリースされることになるのだろう。ただし、プライバシーがどのように保護されるのかということについての懸念はもとより、かなり多くの人がインストールしなければ実効性を持たないと考えられることから、今後の国民への十分な説明や周知などが課題となるだろう。

ニュースソース

  • 「iOS 13.5」登場、マスク着用でもFace IDのロック解除が手軽に、「濃厚接触通知アプリ」をサポート[ケータイWatch
  • 政府の新型コロナ陽性者との接触を通知するアプリ、開発状況を公表[ケータイWatch
  • Apple、「COVID-19 3.1」を配布開始 検疫のベストプラクティス追加[ITmedia
  • アップルとグーグル、新型コロナ「濃厚接触通知アプリ」APIを正式提供[ケータイWatch
  • フランス政府が接触者追跡アプリのソースコードの一部を公開[TechCrunch日本版
  • Apple-Google方式か国に集約か 新型コロナ感染をスマホで追跡[ITmedia
  • Code for Japan、「濃厚接触確認アプリ」をオープンソース化 政府主導の開発決定でアプリ公開は取りやめ[ITmedia

2. 新しい日常――リモート接客への試みのいろいろ

 5月21日、政府は新型コロナウイルス感染症対策本部会議を開き、新型コロナウイルスの流行が落ち着いたと判断した京都、大阪、兵庫の関西3府県で緊急事態宣言を解除した。首都圏や北海道でも減少の傾向は見られることから、近いうちに解除されることになると見込まれる。しかし、直ちにこれまでどおりに戻るとは考えにくく、何らかのかたちでの「新しい生活」を意識した方法へと転換が進むのではないだろうか。そのようななか、店舗や旅行会社などではさまざまな試みも始まっている。

 伊勢神宮の内宮に向かうおはらい町通りにある老舗の土産物店「ゑびや商店」は、ウェブで観光気分を味わってもらうウェブ来店を開始した(CNET Japan)。これは、ユーザーがスマホなどの端末から店舗へアクセスし、店員がリアルタイムの動画で商品の場所へと移動しながら、説明するというものだ。

 さらに、旅行会社ではビデオ会議システムを使ったバーチャルバスツアーを企画している(ITmedia)。それは香川県の琴平バスの「おうちでオンラインバスツアー」というサービスだ。「添乗員によるガイドや、観光地の動画、ライブ映像、現地の人や他の参加者との会話を楽しめる他、事前に届くご当地弁当も食べられる」としている。なお、参加費は5800円(税別)からだという。

 そして、シャープはRoBoHoN(ロボホン)を使った遠隔接客ソリューションを提供する(ASCII.jp)。これは「ホテルなどの受付業務において、ロボホンを活用した遠隔接客を実現します。離れた場所にある事務所などから、スマートフォンやタブレット端末を用いてお客様の映像や音声を確認し、お客様の名前の確認や問いかけたい内容、質問への回答などをタブレット端末に文字で入力すると、ロボホンがスタッフに代わって発話します」というもので、人との距離(ソーシャルディスタンシング)を維持しながら接客をする。

 こうしたアイデアは自粛期間中に各社とも頭をひねってきたところで、これからもさまざまな試みが登場してくると思われる。

ニュースソース

  • ゑびや、伊勢のお土産をリモート販売する「WEB来店」を開始[CNET Japan
  • Zoomで仮想バスツアー 香川のバス会社が企画 ガイド、おしゃべり、お弁当──行程をオンラインで再現[ITmedia
  • シャープのモバイル型ロボット「RoBoHoN(ロボホン)」を活用した遠隔接客に関するオンライン相談 & お試しキャンペーンを実施[ASCII.jp

3.「Collision from Home」カンファレンスに、WHOのテドロス事務局長が登壇

 2020年6月23日から25日(米国時間)まで、「Collision from Home」というオンラインカンファレンスが開催される。

 Coillisionは世界最大級のテクノロジーカンファレンスで、大企業、スタートアップ、政府関係者、メディアなどが参加する。テーマとしてはデータ、AI、自動運転、ヘルス、マーケティング、クリエイティブなど、注目されている各業界にわたる。今年は、新型コロナウイルスの影響により開催が延期されていたが、オンラインで開催されることになった(TECHWAVE)。

 注目点は、世界保健機関(WHO)の事務局長であるテドロス・アダノム氏が登壇し、COVID-19パンデミックについて議論するというところだろう。それに加え、米国の感染症に関する研究者らも登壇すると発表されていて、ヘルステックの分野における先進的な議論が展開されると見られる。

 情報通信やバイオなどのさまざまなテクノロジーという武器により、現代の人類がこの難局をいかに乗り切るかというアジェンダは大変に興味深いところだ。

ニュースソース

  • 北米最速成長率を誇るテックカンファレンス"コリジョン"にWHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェソス氏が登壇決定![TECHWAVE

4. いざ出社、その前に――緊急事態宣言解除後のセキュリティチェックリスト

 特定非営利活動法人日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)は、緊急事態宣言解除後のセキュリティチェックリストを公表した(JNSA)。

 緊急事態宣言の発令などを受け、この1カ月から2カ月ほどの間にテレワークへと移行した組織も多い。つまり、オフィスなどにある機器の電源が落とされていたり、業務用の機器を自宅に持ち帰っていたり、プライベートの機器を業務で利用していたりという人が多かったことになる。

 緊急事態宣言が解除されて、オフィスに人が戻ってくるとなると、そこにはさまざまなリスクが生じることを忘れてはならない。冷静に考えても、「自宅でマルウェア等に感染してしまった端末や外部記憶媒体を無防備に企業内ネットワークに接続してしまう」ことや、オフィス内にある停止していた機器のセキュリティ対策の最新化が行われているかなどについても留意が必要である。

 また、これを期に、懸念される新型コロナウイルスの感染拡大の第2波、第3波に備えて、テレワークに対する課題の検討や改善、システムの見直しなども意味があるだろう。このリストはそうした考察をするうえで有効な資料といえるだろう。

ニュースソース

  • 緊急事態宣言解除後のセキュリティ・チェックリスト[JNSA

5. WIDEプロジェクト、研究会を「公開開催」

 産学の研究者らによる研究組織であるWIDEプロジェクトでは、2020年6月のWIDE研究会について、参加メンバーを限定しないオープン開催とすると発表した(WIDE Project)。いうまでもなく、インターネット黎明期から、日本のみならず、世界のインターネットの技術基盤や標準技術の研究開発をリードしてきているグループである。WIDEプロジェクトの研究トピックに関心のある方、今後のWIDEの活動に関心のある方の参加を呼び掛けている。

ニュースソース

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。