中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2021/4/29~5/13]
デジタル改革関連6法案成立、G7デジタル・技術大臣会合も開催 ほか
2021年5月14日 15:45
1. 新型コロナ感染症予防のワクチン接種で情報システムも混乱
各地で高齢者を対象とする新型コロナウイルス感染症予防のワクチン接種が開始された。役所から手紙が届いたら、電話やインターネットで接種場所と日時の予約をするというのが基本だが、アクセスが集中したことによる電話の発信規制(ケータイWatch)、そして運悪く予約システムで利用しているSaleseforceの障害が発生(ITmedia)したことで混乱が大きくなった。
平井デジタル改革担当大臣は「ワクチン予約システムを全国共通化する可能性ある」(ITmedia)と述べたことが伝えられている。デジタル庁の創設とともに「ガバメントクラウド」を活用して整備を進めるという考えだ。
そもそも高齢者がスマホやパソコンなどの端末を操作して、ウェブやLINEで予約をすることは困難な場合も多く、結果として電話での問い合わせや予約が発生したとみられる。今後は基礎疾患のある人、そしてだんだんと若年層へと対象が広がっていくが、同じようなトラブルが生じないようなオペレーションを工夫する必要があるだろう。さらに、これからはデジタル庁が設立され、多くの行政手続きのデジタル化も進むと期待されるが、デジタル機器を操作できないことで取り残される人が出たり、インフラが落ちたりすることがないような対応も期待したい。
2. GAFAは大幅増益を発表、一方で今後の不透明さにどう対処するか
「GAFA」と呼ばれている米国のIT大手の2021年1月から3月の業績発表が出そろった。いずれも「コロナ禍のもとで、ネット通販や、生活基盤となったスマートフォンの需要が、根強い」(ITmedia)ということが鮮明になり、各社とも好業績になっている。
一方で、今後の課題となりそうな話題もある。1つはプライバシー保護の観点からサードパーティCookieが廃止される方向にあることだ。インターネットの広告がビジネスの主軸だったサービスは影響が大きい。プライバシーを保護しながら、広告効果を落とさない技術手法を模索している。また、今後、中期にわたる半導体不足の懸念もある。ハードウェア製品が好調でも半導体が足りないような事態がさらに進むと出荷にも影響するし、製品価格にも反映されかねない。さらに、各社のクラウドサービスに求められる社会的な信頼性に応えることができるかという課題もある。肝心なときにサービスがダウンしたり、ハッキングのプロ集団に狙われたりすることへの対処である。
ニュースソース
- 止まらぬデジタル化、追い風 半導体不足や規制強化の不安も GAFA大幅増益[ITmedia]
- iPhoneとM1 Macがばか売れ、Appleの21年1~3月決算が絶好調[日経XTECH]
- Facebook、広告好調で純利益は94%増の95億ドルに[ITmedia]
- アマゾン、売上高44%増--新型コロナで続く外出制限が追い風に[CNET Japan]
3. 米国石油パイプラインがランサムウェアにより停止
米国東海岸にガソリンなどの燃料を運ぶ主要なパイプラインが一時停止した。FBI(米連邦捜査局)によれば、ハッキンググループ「Darkside」が関与しているということだ。 Darksideはランサムウェアを開発し、プラットフォーム化して他の犯罪組織に販売しているという(CNET Japan)。「ランサムウェア・アズ・ア・サービス(RaaS)」ともいわれているようだ。
こうした重要な社会インフラが情報システムのハッキングによって停止に至るということは社会的に重大な事案であり、他のエネルギーインフラや交通システムもその脅威と隣り合わせだという現実を突き付けられている。これは米国の事案であるが、世界各国、もちろん日本も同じようなリスクがあると再認識し、これまでとはさらに違う次元での対処も必要だ。
ニュースソース
- 米石油パイプラインへのサイバー攻撃、犯罪集団Darksideが関与--FBIが断定[CNET Japan]
4. デジタル改革関連6法案成立、G7デジタル・技術大臣会合も開催
菅義政権における看板政策であるデジタル改革関連6法案が参院本会議で可決され、成立した。デジタル改革関連法は「デジタル庁設置」「理念を定めた基本法」「押印の廃止などの社会整備」「マイナンバーと預貯金口座のひも付け」「自治体の情報システムの標準化」という5つの分野で構成される(ITmedia)。
また、G7デジタル・技術大臣会合がテレビ会議形式で開始された。ここでは「G7構成国・地域のほか、招待国、関係国際機関等が参加し、信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)の推進等を議論するとともに、大臣宣言を採択」したと報告されている(総務省)。より具体的には、「安全で強靱性のある多様なデジタル・テレコム・ICTインフラサプライチェーンの推進」「デジタル技術標準」「デジタル技術標準」「インターネットの安全性」「デジタル競争」「電子的移転可能記録」の6つのテーマについてである。
5. イベントカレンダー:「世界デジタルサミット2021」
6月7日・8日の2日間、オンラインで「世界デジタルサミット2021」が開催される(世界デジタルサミット)。参加費は無料で、事前申し込みの受付を行っている。世界と日本のビジネスリーダーが登壇し、デジタル社会構築に向けた課題の指摘、そして解決のための示唆が得られそうな講演が予定されている。
また、海外では2022年1月に開催予定の「CES 2021」がかつてのようにラスベガスでのリアルイベントとして開催される予定であることが発表された(CNET Japan)。さらに、今年9月にベルリンで開催される「IFA」もリアルイベントの開催が計画されている(ITmedia)。欧米ではワクチン接種の効果もあってか新規感染者数が減少に転じていることから、リアルイベントの再開が計画されているということだろうが、変異種の感染状況、さらには各国からの参加者の受け入れなどにおいては世界情勢を見る必要もあることから、変更も十分にあり得ると考えておくべきだ。しかし、産業界が復興に向けて動き出しているという象徴として、捉えることもできる。
ニュースソース
- 世界デジタルサミット2021 ポスト・ニューノーマル ~ レジリエントな社会を目指して[世界デジタルサミット]
- 「CES 2022」、ラスベガスでリアル開催へ--1月5日から[CNET Japan]
- 欧州の家電見本市「IFA 2021」リアル開催へ 「業界に新たな勢いと弾みもたらす」[ITmedia]