中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2021/4/22~4/29]

大手IT企業が好決算を発表 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. LINEに行政指導――個人情報の管理体制強化を求める

 LINEユーザーの個人情報が中国の関連会社からアクセス可能になっていた問題を受け、個人情報保護委員会は個人情報保護法に基づく行政指導を行ったと報じられている(Impress Watch)。

 その内容は「委託先のシステム開発者に個人データへのアクセス権限を付与する場合は、必要性や権限付与の範囲を組織的に検討した上、必要な技術的安全管理措置を講ずるほか、不正閲覧等を防止するため、アクセスしたデータの適切な検証を可能とするログの保存・分析」とともに、「委託先の定期的に監査」などを求めている。さらに、ユーザーに対して「メッセージ等の個人情報を取得する場合、取得する個人情報の範囲を分かりやすく通知。通知内容が適切に表示されているか確認する体制を整備」するように求めている。

 しかし、国境のないインターネットにおいて、実効性がある対策が具体的にはどのようにとられるのかが今後の注目点であるとともに、とりわけ、利用者との合意についてはより解決が困難な課題かもしれない。小さな文字で細かく書かれている規約に具体的に追記さえすれば利用者との合意が深まったというわけでもないからだ(もちろん、同じ内容を大きな文字で書けばいいというわけでもない)。

ニュースソース

  • LINEに行政指導。個人情報保護委員会[Impress Watch

2. 仮想通貨の預託金残高が過去最高に、対前年比6倍

 一般社団法人日本暗号資産取引業協会(JVCEA)が国内仮想通貨取引業者の預託金残高などを公表した。2021年3月の仮想通貨現物の預託金残高は過去最高の1兆4100億円となり、1年前と比較すると6.1倍に増加しているという(ITmedia)。理由として、口座数の増加と代表的な仮想通貨であるビットコインの価格が高騰したことが挙げられている。

 なお、米国では仮想通貨を投棄的なものとしてではなく、有名企業が商品やサービスの決済に利用する動きもいくつか報じられているところで、今後の風向きの変化には要注目か。

ニュースソース

  • 仮想通貨の預託金残高1.4兆円 対前年6倍で過去最高[ITmedia

3. セガがNFTコンテンツの販売に向けて動き出す

 セガはdouble jump.tokyoと協業し、ブロックチェーンの技術を活用するNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)を用いたデジタルコンテンツの販売を今年夏をめどに開始すると発表した。同社が持つ「ビジュアルアートや、ゲーム内で使用された映像やBGMといった豊富なデジタル資産」がその対象となるようだ(CNET Japan)。現在、NFTはデジタルコンテンツの真正性を担保する仕組みとして、各分野でその技術的な仕組みの利用が模索されているが、今後はより多くの人に知られているコンテンツで利用されれば、その認知も一般に広がることが期待され、そこには新たな経済的価値の創出などにもつながると見込まれる。

ニュースソース

  • セガ、ブロックチェーン技術を活用したNFTコンテンツを販売--double jump.tokyoと協業[CNET Japan

4. 大手IT企業が好決算を発表

 大手IT企業各社が好決算を発表している。

 グーグルの親会社アルファベットの第1四半期の総売上高は前年同期比34%増の553億1400万ドルと発表した。とりわけ、クラウド事業の売上高が40億4700万ドルに達し、前年同期比46%増となっている(CNET Japan)。

 アップルの第2四半期の売上高は896億ドルに達した。「新型コロナウイルス流行に伴うリモートワーク・ラーニングなどの広がりを背景にMacやiPadの販売も好調」と報じられている(ロイター)。

 フェイスブックの第1四半期の売上高は対前年同期比48%増の261億7000万ドルと発表した。ただし、今後「米アップルの広告向けプライバシー規約変更が重しとなり、年内に売り上げの伸びが大幅に落ちる恐れがある」との見方も示している(ロイター)。

 マイクロソフトの売上高は対前年同期比19%増の417億ドルで、「企業が広範なデジタル変革を推進する動きから利益を得られている」と分析されている(CNET Japan)。

 世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大により、まだまだ予断を許さない状況が続くなか、全体的にはリモートワークやオンライン消費などが拡大したことが追い風となる。その一方で、懸念される半導体不足、プライバシー保護強化に伴うビジネスモデルへの影響など、大きな懸念材料も指摘されるが、デジタル経済は明るい方向性にあることが確認されているといえよう。

ニュースソース

  • Alphabet決算、グーグルのクラウド事業が46%増収--収益の柱の広告も好調[CNET Japan
  • アップル、四半期利益・売上高が予想超え iPhone販売好調[ロイター
  • フェイスブック、第1四半期売上高は予想上回る 年内に大幅減速も[ロイター
  • マイクロソフト、好調な第3四半期決算--「Azure」売上高は50%増[CNET Japan

5. 「CES 2022」の計画を発表、ラスベガスでリアルイベントとして再開

 新型コロナウイルス感染症拡大により、世界最大級のデジタルテクノロジーの展示会であるCESはオンラインだけでの開催を余儀なくされてきた。しかし、主催団体であるCTAは2022年1月に開催予定のCESを、従来と同じくラスベガスで開催すると発表した(TechCrunch日本版)。これから予定される会期までの半年間で、世界におけるワクチン接種が進み、人が集まることのリスクが軽減されるという見通しからのことと思われる。そして、すでに1000社が出展を表明しているとしている。もちろん、今後の新型コロナウイルス感染症の状況によって、計画の変更もありえるだろうが、情報通信産業にとっては明るいニュースの1つだ。

 オンラインでの開催で情報を取得することは、もちろん時間的、費用的、そして体力的にも、少ないコストで済むことは実感した人も多いに違いないが、会場で現物を見たり、体験したり、話をすることによる理解には至らないことも実感している。来年の1月にこのイベントが開催されるほどに世界の状況が好転していることを願いたい。

ニュースソース

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。