中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2021/5/13~5/20]

グーグルの年次開発者会議「Google I/O」レポートのまとめ ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 新型コロナワクチン予約システムに課題。悪質なケースは法的措置も視野

 防衛省・自衛隊が運営する新型コロナウイルス感染症対策のワクチン大規模接種センターでは5月17日から予約サイトをオープンした(ケータイWatch)。これによって接種のスピードが上がるものと期待されていたが、いきなり予約システムにおける不備が報じられた。自治体から送付された予約番号ではない「架空の番号」でも予約を完了することができてしまうという事象だ。これについて加藤官房長官は「悪質なケースは法的措置も視野」とのコメントを発表している(ITmedia)。

 本来、このような仕様は避けるべきだったのだろうが、さまざまな観点からの意見を総合すると、限られた開発時間でそうできなかった理由も分からなくもないところもある。利用者の性善説に委ねたということか。この出来事はもとより、この1年強のコロナ対策にまつわるさまざまな出来事を踏まえ、将来的な行政のデジタル化のための教訓とすべきだろう。

 なお、IPAでは今回の事象がいわゆる脆弱性にあたるかどうかは別にして、一般論としながらも模倣犯を抑止する意味から「脆弱性や手口を不特定多数に公開するのは望ましくない」とし、「発見時は開発者に報告し、極秘事項にすること」とし、「報告せずに、脆弱性の存在をネット上にいきなり公開することは絶対に行ってはいけない」という考え方を示している(ITmedia)。

ニュースソース

  • 新型コロナワクチン「自衛隊 大規模接種センター」17日予約開始、パソコンやスマホ、LINEで受付[ケータイWatch
  • ワクチンの架空予約 加藤官房長官「悪質なケースは法的措置も視野」[ITmedia
  • 脆弱性の手口、IPA「見つけたらまず開発者やIPA窓口に報告して」 コロナワクチンの架空予約巡り[ITmedia

2. グーグルの年次開発者会議「Google I/O」レポートのまとめ

 米グーグルは現地時間5月18日に年次開発者会議「Google I/O」をオンラインで開催した。昨年は中止となったことから、2年ぶりの開催である。そこでは数々の興味深い発表が行われた(ITmedia)。

 その中でも多くの人が関心を持っているのがAndroid 12についてだろう。詳細は個別の記事に委ねるが「これまでのAndroid史上、最大のデザイン変更がなされている。色から形、光、動きまで、全体を考え直した結果、Android 12はこれまで以上に表現力豊かでダイナミックでパーソナルなものになった」と評されている(ケータイWatch)。そして、Android向けに提供する予定とされる「digital car key」では車の施錠や解錠、エンジン始動をスマートフォンで行えるようになる(ケータイWatch)。

 また、バイタルの状態を検知するセンサーが積極的に搭載されたことで、ここのところ競争も激化しているウェアラブルデバイスの分野においては、グーグルとサムスンが「Wear OS」と「Tizen」を統合したプラットフォームとすることが発表された(ケータイWatch)。

 さらに、この1年、世界中でテレコンファレンスのニーズが急速に高まっているが、「そこに人がいる」感覚の3Dビデオチャット「Project Starline」が発表された(CNET Japan)。記事にある動画によればまさに「拡張現実(AR)や仮想現実(VR)の眼鏡やヘッドセットがなくてもボリューム感と奥行きを作り出せる。この組み合わせにより、Starlineでは、まるで向こう側に人が座っているかのように感じられる」としている。

 そのほか、AIが自然な会話を繰り広げる新技術「LaMDA」(ケータイWatch)、量子コンピューターに関するロードマップ(日経XTECH)なども発表されている。

ニュースソース

  • 基調講演まとめ[ITmedia
  • 「Chrome」、漏えいしたパスワードを1タップで変更可能に--まず米国で[CNET Japan
  • Androidがスマホが車の鍵に――グーグル、これからのAndroid向け新機能を紹介[ケータイWatch
  • グーグルが「Android 12」最初のベータ版をリリース、最大のデザイン変更[ケータイWatch
  • グーグルとサムスン、「Wear OS」「Tizen」を統合[ケータイWatch
  • グーグル、「そこに人がいる」感覚の3Dビデオチャット「Project Starline」を発表[CNET Japan
  • グーグル、AIが自然な会話を繰り広げる新技術「LaMDA」[ケータイWatch
  • グーグルが「量子データセンター」を開設、2029年までの誤り訂正目指す[日経XTECH

3. テスラがビットコインの支払いを停止した理由は「環境問題」

 今年3月、テスラがビットコインでの支払いを受け付けるという記事が掲載されていた。仮想通貨も投機的な性格から、決済の手段へと脱皮するのかなどと想像を膨らませていたわけだが、今度は一転、その受付を停止するという。理由はビットコインの価格下落でもなく、セキュリティ問題でもなく、金融当局の介入でもない。なんと、環境問題だという。つまり、マイニングをするのにエネルギーを大量に消費するためだ。これも市場からの批判が強かったとされているようだが、今後の仮想通貨と環境問題という観点がどのように評価されるようになるのか注目ポイントとなるだろう。

ニュースソース

  • テスラ、ビットコイン支払いの受付を停止--環境問題を懸念[CNET Japan

4. 音楽配信サービスは高音質での競争に

 アップルの音楽配信サービス「Apple Music」で高音質のロスレスオーディオ形式とDolby Atmos形式での配信を開始すると発表した(ITmedia)。対するアマゾンも、同日に音楽配信サービス「Amazon Music Unlimited」の加入者に高音質サービス「Amazon Music HD」を提供すると発表した。さらに、スポティファイも高音質版を準備中だと伝えられていて、ここにきて一気に音楽配信サービスが高品質化という次のステップへと進んだかたちだ(JBPRESS)。

 日本ではまだまだ物理メディアの流通もされているが、国際的には音楽の配信サービスがすでに主軸となっている。配信技術や再生装置の性能向上などもあるだろうが、コロナ禍の影響もあり、消費者による配信コンテンツに対するニーズがさらに上がっているという背景もありそうだ。

ニュースソース

  • Apple Musicがロスレスオーディオに対応 Dolby Atmosも利用可能に[ITmedia
  • アップルとアマゾン、音楽配信は"高音質"競う時代に 「追加料金なし」発表、最大手のスポティファイも追随か[JBPRESS

5. 出版流通のデジタルトランスフォーメーションが進むか?

 集英社、講談社、小学館の出版大手3社は出版流通を手掛ける新会社の設立について、大手商社の丸紅と協議を始めたと発表した(ITmedia)。発表によれば、「書籍・雑誌の流通情報を網羅的に把握」「配本や発行をAIで最適化する仕組み」「RFIDを使った在庫や販売条件の管理」「棚卸の効率化」「売り場でのリコメンド」「万引き防止」などが盛り込まれたシステムの構築が検討されているようだ。

 まさに出版流通のデジタルトランスフォーメーション(DX)ともいえるコンセプトだが、十分な効果を得るためには、このシステムを積極活用する書店や出版社の拡大も必要だろう。さらに消費者にとっても利便性が上がれば売り上げの向上にもつながるとみられる。今後の展開に期待をしたい。

ニュースソース

  • AIで“出版流通改革” 集英社、講談社、小学館が丸紅と新会社[ITmedia
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。