中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2021/6/3~6/10]
年次開発者コンファレンスまとめ:アップル「WWDC」とフェイスブック「F8」 ほか
2021年6月11日 18:30
1. CDN「Fasty」の障害で多くのウェブサービスに影響が及ぶ
6月8日夕方、CDNの「Fasly」に障害が発生し、国内外のいくつかの主要なウェブサービスに影響が出た(INTERNET Watch)。日本では、メルカリ、note、日本経済新聞電子版、Paravi、TVerなどで影響が出た。その原因について、米国Fastly社はその原因がソフトウェアの不具合であったことを発表した。
CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)とは、特定のウェブサーバーにアクセスが集中しないよう、ネットワーク上にいくつかのキャッシュサーバーを配置しておき、アクセスした端末に近いキャッシュサーバーからデータを配信することでトラフィックを分散するサービスである。したがって、今回のようなCDN事業者の不具合が発生すると、いくつものサービスに影響が及ぶことになる。同社では謝罪をするとともに、「今後、ソフトウェアの品質テストの過程でバグを検出できなかった原因の究明とともに、障害対応の事後検証を進める」としている(ITmedia)。
ニュースソース
- CDN「Fastly」に障害が発生、多くのウェブサービスのコンテンツに影響[INTERNET Watch]
- Fastlyの大規模障害、原因はソフトウェアのバグ 提供会社が説明[ITmedia]
2. 主要ブラウザーベンダー4社が拡張機能の改善グループを結成
主要なウェブブラウザーベンダーであるアップル、グーグル、マイクロソフト、モジラの4社はウェブ技術の標準化団体であるW3Cでウェブブラウザーの拡張機能を改善するためのコミュニティーグループとして「WebExtensions Community Group」(WECG)を立ち上げたことを発表した(ITmedia)。
具体的な活動内容として「開発者が簡単に共通の拡張機能を作成できるよう、一貫性のあるモデル、機能、API、アクセス許可の共通コアを指定することや、悪用されにくいアーキテクチャーの概要を説明していく」としている。
ウェブの標準化の動きの中で、「拡張機能」についての技術的な活動があまり見られなかったことは意外だと感じるが、昨今では拡張機能を利用して不正に情報を取得するものもあったことが報じられていたこともあることから、あらためてここで拡張機能の技術について見直すタイミングでもあるのではないか。
ニュースソース
- Apple、Google、Microsoft、MozillaがWebブラウザ拡張機能改善グループ結成[ITmedia]
3. アップル社の年次コンファレンス「WWDC21」での発表のまとめ
アップル社は日本時間の6月8日の未明、年次開発者コンファレンスである「WWDC21」をオンラインで開催した。開発者向けということで、主にソフトウェアプララットフォーム、つまりOSに関する話題が中心で、新たなハードウェアについては言及されていない。下記のニュースソース欄には、そこでの内容を扱った記事を掲載しておく。話題はiOS 15、iPadOS 15、そしてmacOS Montereyに関する事項である。それぞれリリース時期は今秋である。
詳細な機能の要点は下記のように報じられている(ケータイWatch)。
- FaceTimeは映像コンテンツ共有やWindows/Androidにも対応
- 通知方法などを状況に合わせて細かく変更する「集中モード(Focus)」
- iPadとMacで素早く情報を書き留められる「クイックメモ」
- Safariのタブはグループ化して保存したり共有したりできるように
- iPadOSはホーム画面とマルチタスク機能を大幅強化
- 健康管理の「ヘルスケア」強化により、体調の変化にさらに敏感に
- iCloudはプライバシー保護機能を強化
- Siriはオフライン機能も一部サポート。文脈も理解するように
- そのほかのアプリもいろいろ強化
また、すでに発表されているようにApple Musicでは空間オーディオが利用可能になった(CNET Japan)。アマゾンも高音質のサービスを発表し、今後の音楽配信サービスは高音質化の時代へと突入するとみられる。
ニュースソース
- 「Apple Music」で「Dolby Atmos」による空間オーディオが利用可能に[CNET Japan]
- 「iOS 15」、AirPods Pro/Maxを「探す」アプリで探せるように、聞き取りやすさ向上なども[ケータイWatch]
- 「iOS 15」でFaceTimeがAndroidやWindowsでも参加可能に、WWDC2021で発表[ケータイWatch]
- 「macOS Monterey」登場。iPadを横に置くだけでMacからマウス操作可能。操作自動化の「ショートカット」も[PC Watch]
- Apple Watch向け「watchOS 8」が今秋登場、その特徴は[ケータイWatch]
- FaceTimeのノイズ低減や通知を減らす集中モードなど、新機能満載の「iOS 15」[PC Watch]
- iOS15/iPadOS 15で5G通信機能を強化――高品質コンテンツダウンロードや5G優先接続など[ケータイWatch]
- アップル、スマートホーム機能を拡充--相互接続規格「Matter」にも対応[CNET Japan]
- アップル、死後に「iCloud」データを託す相手を指定できる新機能[CNET Japan]
- アップル「iOS 15」のヘルスケア、今度は「歩行安定性」[ケータイWatch]
- アップルが「iOS 15」発表、FaceTimeやSharePlay、写真アプリ強化、デジタル身分証明書など[ケータイWatch]
- アップルが「iPadOS 15」発表、ウィジェット機能やマルチタスク改善[ケータイWatch]
- アップルの「iPadOS 15」、iPadだけでアプリを開発・App Storeへ公開できるように[ケータイWatch]
- 6月8日の「WWDC21」発表まとめ、iOS 15/iPadOS 15など[ケータイWatch]
4. フェイスブック社の年次コンファレンス「F8 Refresh」のまとめ
フェイスブック社は日本時間の6月3日、年次開発者コンファレンスである「F8 Refresh」をオンライで開催した。現地メディアの報道によれば、主な話題のポイントは次の通りである。
- 企業向けメッセージング
- Facebook Business Suite
- 拡張現実(AR)
- 人工知能(AI)と機械学習
一言でまとめるとすると、同社が持つ技術プラットフォームのオープン化を進め、さまざまな外部サービスをフェイスブックやインスタグラムのアプリを中心にしてインテグレートできるようになるという印象を得た。また、これまでのユーザー個人の閲覧履歴などを中心としたマーケティングプラットフォームとしての話題より、技術をオープンにするプラットフォームを指向しているのは、昨今の同社へのさまざまなプレッシャーを受けてのことか。
ニュースソース
- Facebook、「開発者にあらためてフォーカス」--「F8 Refresh」開発者会議[ZDnet Japan]
- フェイスブックがSNSを研究する学術コミュニティ向けに「Researcher API」リリース予定[TechCrunch日本版]
- Facebook年次開発者会議「F8 Refresh」基調講演で発表されたことまとめ[ITmedia]
5. ソフトバンクが計画する「NTN(非地上系ネットワーク)」
ソフトバンクが米国スカイロテクノロジーズ社(Skylo)と衛星通信サービスの日本展開に向けて協業することに合意したと報じられている(ケータイWatch)。
ソフトバンクはこれまでも上空を使ったネットワークインフラ(非地上系ネットワーク:NTN)の戦略を進めてきているが、記事に添えられている図はそれを分かりやすくし示しているので紹介をしたい。3種類の高度で別々のサービスを展開する計画だ。上空20kmでは成層圏プラットフォームのHAPS MOBILE、上空1200kmの低軌道衛星はOneWeb、そして今回の上空3万6000kmの静止衛星であるSkyloである。それぞれが上空で役割を担うことで、地上局だけではカバーできないエリアへ通信サービスを提供したり、ルーティングを実現したりする。
ニュースソース
- ソフトバンク、衛星通信サービスによる非地上系ネットワークの構築を推進[ケータイWatch]