中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2021/6/10~6/17]

Linux Foundationがワクチン接種証明書をブロックチェーンで管理 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 利活用範囲が広がるドローン

 KDDI、KDDI総合研究所、プロドローンが世界で初めて、モバイル通信で自律走行する「水空合体ドローン」を開発し、技術実証を行ったと報じられている(ケータイWatchケータイWatch)。用途としては、ダムや港湾設備点検、水産漁場の監視などが想定されている。これは「ドローンが点検箇所まで自立飛行し、着水後に本体下部に備えられている水中ドローンを切り離し、遠隔で水中の点検ができる」と工夫されている。また、水中ドローンが「水面に浮かぶ飛行ドローンと有線で接続し、水中のカメラなどからのデータを飛行ドローン経由で送信する」。こうした工夫により、空と水中の双方の環境での運用が現実的になった。

 さらに、エアロネクスト、ACCESS、吉野家、出前館は「出前館のアプリで注文された吉野家の牛丼弁当を、横須賀市立市民病院の医療従事者にオンデマンドでドローン配送する実証実験」を実施した(Impress Watch)。「ドローンは立石公園から離陸。海上4.5km、陸上0.7kmの合計約5.2kmの航路を約10分間飛行」したが、「牛丼のたれのこぼれや中身の偏りなく、高い配送品質で届けられるかを実証した」としている。

 そして、最新のドローンの動向について、パーソルプロセス&テクノロジーはPwCコンサルティングと共同で「ドローンユーザーの動向調査」を実施、その調査結果を公開している(ドローンジャーナル)。簡単なプロフィールの入力することで、無償でダウンロードが可能だ。

ニュースソース

  • KDDIら3社、世界初の自律走行できる「水空合体ドローン」を開発――2021年内の商用化を目指す[ケータイWatch
  • KDDIがこだわる「モバイル通信できるドローン」ソリューションとは[ケータイWatch
  • 吉野家の牛丼をドローンで配送。「空の産業革命」実証[Impress Watch
  • パーソルP&TとPwCコンサルティング、ドローンユーザーの動向調査を実施[ドローンジャーナル

2. 地方自治のデジタルトランスフォーメーションの成果

 官民ともにデジタルトランスフォーメーション(DX)が求められているなか、地方自治体での積極的取り組み事例が紹介されている。

 愛知県豊田市の事例で、衛星データをAIで解析することにより、水道管の漏水調査を行ったという(ITmedia)。実績としては「市内の556区域を調査したところ、154区域の259カ所で漏水を発見。従来の調査方法だと約5年かかる作業を7カ月程度で完了できた」という。具体的には「人工衛星から地下1~2mまで届くマイクロ波を照射し、対象地域の画像データを取得」し、反射されたマイクロ波の特徴をAIで解析した。インフラの劣化と更新の必要性はかねてより指摘されてきているが、画期的な手法ということがいえそうだ。

ニュースソース

  • 衛星データ+AIで水道管の漏水検出 5年かかる調査が約7カ月で 豊田市で実施[ITmedia

3. Linux Foundationがワクチン接種証明書をブロックチェーンで管理

 Linux Foundationが新型コロナウイルスのワクチン接種証明書をブロックチェーンで管理するプロジェクトを立ち上げたと報じられている(INTERNET Watch)。記事によれば「オープンソース化することで、ゆくゆくは参画団体以外にもシステムを提供していく予定」だとしている。Linux Foundationはエンタープライズ向けブロックチェーン基盤である「Hyperledger」の開発を手がける非営利団体。「Hyperledgerの共通規格を活用することで、特定の管理者を必要とせず共通の証明書を発行・管理できることが期待される」としている。

 いうまでもなく、各国ではワクチン接種が進みつつあり、国境を越えた交流をコロナ前の状態に戻すうえでは、接種証明書が必要とされていて、航空業界をはじめ、いくつかの団体ではすでに実証実験に乗り出しているところだが、「特定の管理者を必要としない」という特性を生かした今後の動向について注目しておくべき話題だろう。

ニュースソース

  • Linux Foundation、「コロナワクチン接種をブロックチェーンで管理する」プロジェクトを発足[INTERNET Watch

4. NFT基盤の相次ぐリリースと利用事例――WWWのソースコードもオークションに

 NFT(代替不可能なトークン)は最近の注目キーワードであるが、ここにきて大手事業者からNFTに関するサービスが相次いで発表されている。

 まず、GMOインターネットグループは「NFTを活用したコンテンツの流通を行うNFTマーケットプレイス『Adam byGMO』のベータ版を8月にオープンする」と発表した(Impress Watch)。同社の傘下にあるGMOフィナンシャルホールディングス、GMOインターネット、サムライパートナーズなどとの共同出資で「GMOアダム株式会社」を設立している。GMOインターネット代表取締役会長兼社長グループ代表の熊谷正寿氏は「コンテンツのコピーが氾濫するとアーティストやクリエイター、コンテンツホルダーが収益を得にくい“影の部分”あるとしたうえで、NFTはこれを解決し『デジタルコンテンツの流通革命』を実現できる」と期待を説明している。

 また、LINEの暗号資産事業とブロックチェーン関連事業を展開するLVCはデジタルアセット管理ウォレット「LINE BITMAX Wallet」内で「LINE Blockchain」を基盤としたNFTの取引ができる「NFTマーケット」の提供を開始すると発表した(CNET Japan)。

 さらに、コインチェックはサイバーエージェント子会社のCyberZとNFT事業において協業を開始すると発表した(TechCrunch日本版)。コインチェックはすでにNFTマーケットプレイス「Coincheck NFT(β版)」を提供していて、サイバーエージェント社の関係資産でもあるタレント/アーティスト/アニメ・ゲームなどを展開する多くのエンターテインメント事業者に対し、NFTの利用を推進するとみられる。

 海外でも大変に興味深い話題が報じられている。オークションハウスの英サザビーズがワールドワイドウェブの発明者ティム・バーナーズ=リー氏が書いたソースコード(「Sir Timによってデジタル署名された、WWWのソースコードを含む最初のタイムスタンプ付きファイル」)をオークションに出品するという(CNET Japan)。

ニュースソース

  • 「デジタルコンテンツの流通革命」GMOがNFTマーケット8月公開[Impress Watch
  • GMO熊谷社長、「NFT」取引所の開設を宣言 坂本龍一や村上龍も参加[ITmedia
  • LINE、「NFTマーケット」提供へ--独自ブロックチェーンで発行されたNFTの二次流通に[CNET Japan
  • NFTマーケットプレイスを手がける暗号資産取引所コインチェックがCyberZとエンタメ領域で協業[TechCrunch日本版
  • SKE48「おでかけNFTトレカ」、Coincheck NFT(β版)で全20種限定販売[ITmedia
  • T・バーナーズ・リー氏のソースコードがNFTに--サザビーズで競売へ[CNET Japan

5. 「ワイヤレスジャパン2021」での注目講演まとめ

 6月2日から4日まで「ワイヤレスジャパン2021」が開催された。そこではキャリアの戦略について興味深い講演が行われた。

 まず、NTTドコモの常務執行役員(CTO)R&Dイノベーション本部長の谷直樹氏が「社会・産業のデジタル変革を加速する5Gの進化」と題した講演を行い、「サイバー・フィジカル融合における5Gの活用や、Beyond 5G/6Gに向けた活動」について述べたことが報じられている(ITmedia)。また、KDDI総合研究所先端技術研究所長の小西聡氏は「Beyond 5G時代のライフスタイルとテクノロジー」と題して講演をし、「5Gの最新動向と、Society 5.0を加速するための次世代社会基盤構想「KDDI Accelerate 5.0」を紹介した」と報じられている(ITmedia)。

 具体的な内容についてはそれぞれの記事を参照していただきたい。これまでの5Gの特性として「大容量」「低遅延」「多接続」といわれてはいたものの、一般の利用者とどう関係してくるのかは捉えにくい側面もあった。各社とも実証実験などを踏まえつつ、実現される社会のイメージが具体化しつつある。

ニュースソース

  • 5Gの課題とは? そして6Gに向けた展望は? ドコモが技術面での取り組みを解説[ITmedia
  • Beyond 5G/6G時代のライフスタイルを実現する技術とは? KDDI総合研究所小西氏が解説[ITmedia
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。