中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2021/11/4~11/11]
NTTコモの「home 5G」が8万契約に ほか
2021年11月12日 12:22
1. 岸田内閣で本格化するデジタル社会に向けた検討会議
政府は社会のデジタル化を加速させることを念頭に置いた「デジタル臨時行政調査会(臨調)」と「デジタル田園都市国家構想実現会議」の民間有識者を発表した(ITmedia)。
デジタル臨調の会長は岸田総理大臣、副会長を松野博一官房長官と牧島かれんデジタル大臣が務める。有識者として、慶應義塾大学の村井純教授、KADOKAWAの夏野剛代表取締役社長をはじめ、大学、産業、地方行政の立場から8名が就任した(発表名簿)。報道によれば「デジタル化を遅らせる要因となっている法規制の見直しや、オンライン診療の普及策などを議論。国と地方自治体とのデータ共有の円滑化策も検討する」としている。
デジタル田園都市国家構想実現会議は議長に岸田総理大臣、副議長に牧島かれんデジタル大臣ら3名、構成員として関係省庁の大臣、竹中平蔵慶應義塾大学名誉教授、増田寛也東京大学公共政策大学院客員教授、村井純慶應義塾大学教授のほか、80代でスマートフォンアプリを開発したことでも知られている若宮正子氏らが就任している(発表名簿)。会議では「地方での第5世代(5G)移動通信システムやデータセンターの整備など、地方からデジタル化を進める構想を検討する」としている。
会議とメンバーが決まったことで、来春に向け、さまざまな具体的な政策が立案され、議論が進むものと期待される。
さらに、デジタル庁では、デジタル社会の実現に向けた道しるべとなる「新重点計画」の策定について議論を進めていて、「新重点計画の構成イメージ案」を公開し、意見募集を実施している(Impress Watch)。
ニュースソース
- デジタル庁、デジタル社会の「新重点計画」について意見募集[Impress Watch]
- 政府がデジタル会議の民間メンバー発表 DeNA会長、80代プログラマーなど[ITmedia]
2.「Beyond 5G国際カンファレンス 2021」で語られたモバイル通信事業者の取り組み
総務省とBeyond 5G推進コンソーシアムによる「Beyond 5G国際カンファレンス 2021」が開催され、Beyond 5G推進に向けた取り組みの共有や、必要な研究開発等の要素について議論された。NTT持株会社からは澤田純社長が、モバイル通信事業者からはNTTドコモの井伊基之社長、KDDIの髙橋誠社長、ソフトバンクの宮川潤一社長、楽天モバイルの山田善久社長が登壇し、各社の取り組みについてのプレゼンテーションが行われた(ケータイWatch)。
各社とも、Beyond 5Gが社会の基幹インフラになるということから、基礎技術の開発はもとより、さまざまなユースケースについての検討や実証が進みつつある。もちろん、国際競争も激しくなり、技術的な優位性のみならず、いかにリーダーシップを取っていくかということも重要となる。それに加えて、省エネルギーなどの要素も考慮する必要もあり、企業の研究開発力だけでなく、国としての総合力が求められる段階に入りつつあると感じる。
ニュースソース
- ドコモ・KDDI・ソフトバンク・楽天の社長が「Beyond 5G」への取り組みを語る[ケータイWatch]
3. NTTコモの「home 5G」が8万契約に
今年の夏、NTTドコモが発売をしたホームインターネットサービス「home 5G」はこの9月末時点で8万契約になったと報じられている(ケータイWatch)。home 5Gは宅内からインターネットを利用するための光ファイバーのような固定回線を引き込まなくても、5Gのワイヤレス通信網を使って、大容量のデータ通信を利用できるというサービスで、専用端末「home 5G HR01」が必要となる。料金は月額4950円(端末別だが、端末は各種の割引キャッシュバックのキャンペーンもある模様)と、十分に光ファイバーの代替ともなり得るサービスである。
ただし、留意すべきは「移動して使えない通信サービス」であるということ。「基地局の在圏情報(どの基地局の配下にいるかどうかの情報)や端末のGPS機能を使って、移動を検知すると通信をストップする」という仕組みが内包される。引っ越しにあたっては事前の手続きも必要になる(ITmedia)。
しかし、集合住宅など、光ファイバーケーブルの引き込みが困難な場合、宅内の配線が困難な場合など、ワイヤレスのメリットを生かせる場面は多くある。一方で、使用環境(場所や時間)による回線速度の違いがあることはいうまでもない。こうしたポイントを踏まえたうえで、物理的なケーブルの引き込みを伴わない方法として、普及する可能性がありそうだ。
4. AR開発プラットフォームが続々
「Ingress」や「Pokémon GO」で知られる米国ナイアンティック社は、AR開発者向けプラットフォーム「Lightship」の国際展開戦略について発表した(ケータイWatch)。日本では、ソフトバンクや集英社、LIFULLなどがパートナー企業として名前を連ねている。記事によれば、Lightshipは「同社が手掛けてきたAR(拡張現実)技術をもとに、より多くの企業や開発者がARコンテンツを展開できるようにするプラットフォーム」であるとしている。
パートナー企業である集英社では、XR事業開発課を新設し、XR事業「集英社XR」を開始すると発表した。「ARやVRに限らず、5Gやそれ以降の未来のインターネット技術を使い、社会におけるXR(超越現実)体験の提供を目指す」という(ITmedia)。
いよいよ各社から、得意分野を生かした本格的なARコンテンツやサービスが登場してくることになりそうだ。
5. 記事の文意・文脈をAIで解析――「コンテクスチュアルターゲティング」広告
朝日新聞社は「朝日新聞デジタル」などのデジタル媒体向けに、「コンテクスチュアルターゲティング」という「記事の文意・文脈をAIで解析し、関連する広告を表示する」広告手法を開始すると発表した(CNET Japan)。ターゲティング広告はこれまでCookie(クッキー)を利用することで実現してきたが、時代の流れとともに、国際的にもCookieに対する制限が強まる傾向にある。また、個人情報保護を目的とした法的な規制も今後は加わる。コンテクスチュアルターゲティング広告はこうした状況を踏まえて開発された手法で、「日本のメディアで初めての展開」としている。記事によれば、事前の検証でもノンターゲティング広告との比較において、十分に広告効果は高く、個人情報にも配慮した新たな広告技術として推進していくとしている。
今後は各社からもさまざまな手法も発表されていくことになると予想される。
ニュースソース
- 朝日新聞社、AI解析で「記事文脈にあわせた広告」--改正個人情報保護法など見据え[CNET Japan]