中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2022/1/20~1/27]
Coinhive事件で最高裁が「無罪」の判決 ほか
2022年1月28日 13:30
1. TikTok日本法人にステマの疑い、再発防止策を発表
動画アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営するバイトダンスの日本法人のステルスマーケティング疑惑が報じられた(朝日新聞デジタル)。同社はTwitterの利用者に報酬を支払い、特定の動画を投稿させていたとされる。投稿には「広告」であることが明示されてなくい、いわゆる「ステルスマーケティング(ステマ)」にあたるのではないかという指摘が相次いでいる。
これに対して、バイトダンスの日本法人では「TikTokコンテンツをTwitterインフルエンサーに対価を支払って投稿依頼していた件に関するお詫び」を公表(ニュースリリース)し、「管理体制の徹底に向けた組織体制の見直し、社内ルールの整備に加え、専門家や外部機関等第三者の知見を取り入れ、再発防止に取り組むとともに、積極的な情報開示等透明性を高める努力を継続的に行う」としている。
2. Coinhive事件で最高裁が「無罪」の判決
仮想通貨のマイニングツール「Coinhive」を自身のウェブページに掲載し、その閲覧者のコンピューターリソースを無断で利用してマイニングを行ったとして、不正指令電磁的記録保管罪に問われた「Coinhive事件」について、最高裁で二審の有罪判決を破棄した無罪の判決が出た(ITmedia)。「『広告表示と比較しても影響に有意な差異は認められず、社会的に許容し得る範囲内』とした上で『プログラムコードの反意図性は認められるが不正性は認められないため、不正指令電磁的記録とは認められない』」ということがその理由であると報じられている。
また、この判決を受け、日本ハッカー協会は1月31日の15時~18時に「Coinhive事件」を総括するイベントを開催するとしている(INTERNET Watch)。
ニュースソース
- Coinhive事件、最高裁判決は「無罪」 二審判決を棄却し、逆転無罪[ITmedia]
- 逆転無罪の「Coinhive事件」を総括する日本ハッカー協会のイベント、31日に開催決定[INTERNET Watch]
3. 大手IT企業もNFT市場に参入か
NFTに対する取り組みは国内外で活発だが、いよいよメタ(フェイスブックやインスタグラム)やYouTube、TwitterでもNFTに参入をする動きがある(CNET Japan、Engadget日本版)。現地メディアによれば「ソーシャルネットワークでNFT(非代替性トークン)をプロフィール画像にする機能と、新しいマーケットプレイスでNFTを作成および取引する機能を準備している」という。
すでにTwitterでは「所有NFTアートをプロフィール画像にできる機能」を一部で提供し始めている(Impress Watch)。
また、グーグルでも「ブロックチェーンやその他の次世代分散コンピューティングとデータストレージ技術」に取り組む組織ができると報じられている(CNET Japan)。
ここ半年くらいのNFTブームは一過性ではなく、Web3というキーワードとともに、次世代のインターネットの基盤技術になっていくのだろうか。
ニュースソース
- FacebookとInstagram、NFTの作成や取引に対応する可能性[CNET Japan]
- YouTubeもNFTに参入へ。クリエイターのNFT活用を支援[Engadget日本版]
- Twitter、所有NFTアートをプロフィール画像にできる機能[Impress Watch]
- グーグル、ブロックチェーン部門を設立か[CNET Japan]
4. ビッグデータは人流を制御できるか
NTTドコモ、NTT、JR東日本が「鉄道の利用者に混雑を避ける行動を効果的に促す技術(行動変容促進技術)の有効性を検証するための共同実験」を実施すると発表した(ケータイWatch)。また、NTTドコモとNTT、NTTコムウェアの3社は「幕張新都心でwithコロナ社会における安心・安全を考慮した回遊性の向上に関する実証事業」を実施すると発表している(ケータイWatch)。いずれも、データや情報によって、人流や人々の行動に影響を与えることができるかという課題の解決を目指している。
さらに、JR東日本では「Suica利用データを集計し、統計情報を駅ごとにまとめた分析レポート『駅カルテ』を作成」し、駅ビルのマーケティングなど、JR東日本グループのサービス向上に活用するほか、自治体をはじめとした社外への販売を検討すると発表している(ケータイWatch)。2013年、「Suicaに関するデータの社外への提供」を検討した際、「多くの利用者から個人情報の保護や消費者意識に対する配慮に欠けているのではないかという批判」から、提供を中止したこともあるが、「厳格なデータ管理を徹底しつつ、統計情報の社内での活用促進、公益目的の提供、除外手続きの継続などの取り組みを実施」しており、引き続き、プライバシーに配慮した形で運用されるとしている。
5. 2021年の出版市場、紙+電子は3.6%増の1兆6742億円、電子と紙書籍の伸長で3年連続のプラス
出版業界の調査・研究機関である全国出版協会・出版科学研究所は2021年1月~12月の出版市場規模を発表した(出版科学研究所)。それによると「紙と電子を合算した出版市場(推定販売金額)は、前年比3.6%増の1兆6,742億円と3年連続でプラス成長」となった。とりわけ、電子出版が同18.6%増と拡大を牽引し、紙の書籍も同2.1%増と15年ぶりに増加に転じた。そして、出版市場全体に対する電子出版の占有率は27.8%となり、前年の24.3%から増加している。長らく出版市場は縮小傾向が続いてきたが、コロナ禍による外出自粛、電子コミックのヒット作などにより、流れが変わった。
家計簿ソフト「Zaim」を運営するZaimが、記録されたデータを分析し、「ステイホームが広がった2020年3月に大きくデジタル化が進み、4月には7.5%まで上昇。その後、非デジタルの回復もあったが、直近1年間は4.3%で推移している」という結果を発表している(ITmedia)。「19年対比で大きく伸びたのは、電子マンガと音楽配信だ」という調査結果も出版市場の調査結果と一致する。
米国では出版社の業界団体であるAAP(Association of American Publishers)が2021年通期での出版市場規模推移を発表している(AAP)。それによると、一般書分野では「2021年通期の売上高が11.8%増の95億ドルとなり、そのうちの電子書籍の売上高は、2020年通期と比べて4.7%減の11億ドルとなった」としている。一方で、「ダウンロードオーディオ(オーディオブック)は、13.4%増の7億6,620万ドルに成長」したとしている。