中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2022/2/24~3/3]
ウクライナ情勢をめぐるIT業界の動き ほか
2022年3月4日 16:30
1. ウクライナ情勢をめぐるIT業界の動き(国際)
ウクライナ情勢をめぐる国際的なIT業界の動きをまとめておく。
アップルは、ロシアのアップルストアの休業を発表している(ケータイWatch)。ウクライナ副首相はアップルストアへのアクセス停止などを要請したとも報じられていて、それとも呼応する。
Facebook、Instagramなどのメタのサービスは、ロシア国営メディアの投稿したコンテンツの表示順位を下げると発表した(CNET Japan)。さらに、FacebookやYouTubeは「ロシアの国営メディアであるRTとSputnikへのアクセスを欧州全域で制限しようとしている」とも報じられいてる(CNET Japan)。そして、グーグルは「ウクライナでGoogleマップのリアルタイム交通状況ツールを無効に」したと報じられている(TechCrunch日本版)。
イーロン・マスク氏はウクライナで衛星サービス「スターリンク」の開始を表明している(ZDnet Japan)。通信インフラが物理的に破壊され、地上の回線網が途絶えたとしても、上空を通じた通信は最低限確保される見込みということだろう。
一方、ランサムウェアで攻撃をする集団もコメントを出している。「Lockbit 2.0」はロシアのウクライナ侵攻には関与しないという声明を出し、そのうえで「無害な仕事から得る金銭にしか興味がない」とまで述べている(ITmedia)。つまり、この混乱に乗じた何らかの行動をする可能性があることを示唆し、それは誰でもターゲットになりうるという意味と捉えるべきか。
ニュースソース
- ウクライナ副首相、ロシアでの「App Store」アクセス停止などアップルに要請[CNET Japan]
- アップル、ロシア版サイトで「Apple Store」休業を案内[ケータイWatch]
- FacebookとInstagram、ロシア国営メディアの表示順位を引き下げへ[CNET Japan]
- FacebookやYouTube、ロシア国営メディアへのアクセスを欧州全域で制限へ[CNET Japan]
- Meta(旧Facebook)、ウクライナ標的の約40件の偽ペルソナネットワークを削除[ITmedia]
- Microsoft、ウクライナに対するサイバー攻撃に対し政府に助言[PC Watch]
- ウクライナに対するロシアの軍事侵攻で、ダウンロードされるアプリの顔ぶれに劇的な変化が?[INTERNET Watch]
- グーグル、ウクライナでGoogleマップのリアルタイム交通状況ツールを無効に[TechCrunch日本版]
- グーグルがPlayストアからロシア国営メディアアプリを削除、EU禁止措置が迫るなか[TechCrunch日本版]
- ユーチューブとメタ、ロシア国営メディアの収益化に制限[CNN]
- ランサムウェアグループ、ロシア政府支持を一時表明 ロシアを標的としたサイバー攻撃に「持てるリソースを全て注ぎ込み報復」[ITmedia]
- ランサムウェア集団「Lockbit 2.0」、ロシアのウクライナ侵攻に関与しないと声明 「無害な仕事から得る金銭にしか興味がない」[ITmedia]
- E・マスク氏、ウクライナで衛星ネットサービス「Starlink」を開始と表明[ZDnet Japan]
2. ウクライナ情勢をめぐるIT業界の動き(国内)
ウクライナ情勢に対する動きは日本国内でも出てきている。
内閣サイバーセキュリティセンターは、経済産業省や警察庁など6つの省庁と連名で、「昨今の情勢を踏まえるとサイバー攻撃事案のリスクは高まっていると考えられます」とし、「対策の強化に努めていただきますようお願いいたします」という注意喚起をしている(経済産業省)。これはトヨタ自動車の取引先がランサムウェアによる攻撃を受け、操業を停止せざるを得なくなった状況を踏まえ、出されているものである。目に見える攻撃だけでなく、こうしたインターネット空間での攻撃はあらゆる国がターゲットとなる可能性があり、「(地理的に)日本の遠くで起こっている紛争」ではないことをあらためて認識させられる。
企業では、楽天がウクライナなどでインターネットを使う音声通話アプリ「Viber」を無料で提供するとしている(ケータイWatch)。ソフトバンクもウクライナへ渡航中の同社ユーザーについて、3月の「海外パケットし放題」のデータ通信料を無償にすると発表した(ケータイWatch)。ZOZOは「ウクライナを支援するチャリティーTシャツの予約受付」を開始し、その売上は全額寄付するとしている(ITmedia)。
3. 電子コミック市場が対前年比20%の大幅成長
出版科学研究所、2021年のコミック市場の推定販売金額を発表した(ITmedia)。それによると、「紙と電子を合わせて6759億円(前年比10.3%増)、電子のみで4114億円(同20.3%増)になった」としている。いずれも過去最高値となり、とりわけ電子コミック市場が4000億円を突破したことは大きな成長を続けていることを示している。その理由として「コロナ禍の自粛生活で拡大した新規ユーザーがそのまま定着して電子コミックを購入、さらに『縦スクロールコミック』が漫画を読んでこなかった新たなユーザーを掘り起こしている」(同研究所)と分析をしている。さらに、海賊版に対して業界が厳しい対処をしてきたことが売上につながっているともみられる。
ニュースソース
- 電子コミック市場、前年比20%成長で過去最高に コロナ、縦スクロール漫画で需要増[ITmedia]
4. 3月9日はアップルの新製品発表会
アップルは、来たる日本時間の3月9日午前3時から新製品の発表をオンラインで行うとしている。この模様は、オンラインで中継される。なお、招待状には「最高峰を解禁。」とタイトルが付けられている。うわさでは「iPhone SE」新モデルではないかとされているが、新プロセッサを搭載する高性能モデルの発表もあるかもしれない。
ニュースソース
- アップルが3月9日3時から発表会、どんな新製品が出る?[ケータイWatch]
5. 社会的にもインパクトが大きくなってきたサイバーセキュリティ問題
サイバー攻撃による社会的なインパクトが大きくなっている。
トヨタ自動車の取引先企業がランサムウェアの攻撃を受けたことにより、トヨタ自動車の工場の操業が1日間停止に追い込まれた事件は大きく報じられた(ITmedia)。トヨタ自動車自体ではなく、取引先への攻撃でもサプライチェーンが停止するとなるとここまでの被害が出るということだ。
また、「Emotet」の感染例も増えてきている。JPCERT/CCによれば、「Emotetに感染した.jpメールアドレス数が2020年の感染ピーク時の5倍にまで急増している」という(ITmedia)。この1週間だけでも、紀伊國屋(ITmedia)、日本気象協会(INTERNET Watch)などの事案が報じられている。
また、クレジット決済企業メタップスペイメントへの不正アクセスにより、最大46万件ともされる情報が流出したとみられる(CNET Japan)。この決済システムを採用している企業からはリスクに対する告知がなされているが、規模としては大きな事件ということができる。
もちろん、フィッシング詐欺も収まらない。フィッシング対策協議会は2022年1月のフィッシング報告状況を発表している。それによると「フィッシング報告件数は5万615件で、前月より1万2544件減少した」(INTERNET Watch)ということだが、いまだ高い水準を維持している。とりわけ、Amazon、メルカリ、JCB、三井住友カードを名乗るものが全体の7割近いという。引き続き留意する必要がある。
ニュースソース
- トヨタ、サイバー攻撃受け国内全工場稼働停止[ITmedia]
- トヨタ、国内の全工場あす再開へ 3月1日は停止[ITmedia]
- Emotet感染メールアドレス数、2020年の5倍に 取引先からの添付ファイル、URLにも注意[ITmedia]
- 紀伊國屋がEmotetに感染 不審メールを送信 受け取っても開かずごみ箱へ[ITmedia]
- 日本気象協会、職員のPCが「Emotet」に感染と発表。不審なメールに注意呼び掛け[INTERNET Watch]
- 最大46万件超えの情報流出--メタップスペイメントの不正アクセス、調査結果を発表[CNET Japan]
- 上智大Webサイトが改ざん被害に 不正なサイトに閲覧者を誘導[ITmedia]
- 1月のフィッシング報告は5万615件、Amazonのほかメルカリ、JCB、三井住友カードをかたる詐欺が上位に[INTERNET Watch]
- 日本生命でも最大約1.5万件のカード情報流出か メタップス不正アクセス問題の影響で[ITmedia]
- ワコムのECサイトがサービス停止、物流パートナーにサイバー攻撃 個人情報の流出はなし[ITmedia]
- PayPay、同社をかたるフィッシング詐欺に注意呼びかけ[ケータイWatch]