中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2022/4/21~4/28]

「PayPayポイント」のグループ外への解放により、ポイント経済圏の拡大を狙う ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. Twitter社がイーロン・マスク氏からの買収提案に合意

 イーロン・マスク氏はTwitter社の株を取得して大株主となったのち、取締役就任を辞退し、Twitter社に対して買収提案を行った。Twitter社はそれに対する対抗策をとる意向を示したと報じられてきたが、ここにきてそれに買収提案に合意するという判断をしたようだ(INTERNET Watch)。急に態度を変化させた理由は明らかではないが、対抗策のための資金を用意できなかったことなどの理由が考えられる。結果として、イーロン・マスク氏による買収総額は5.6兆円という規模になりそうだ。現地メディアでは、イーロン・マスク氏はTwitter社の社員総会でも社員からのさまざまな質問や懸念に答えたという報道もされている(CNN)。

 イーロン・マスク氏は、Twitterを「言論の自由が民主主義の基盤」であり、「人類の未来を議論できる『デジタルな街の広場(digital town square)』」であるとし、「新機能による製品の強化(the product with new features)」「アルゴリズムのオープンソース化による信頼性の向上(making the algorithms open source to increase trust)」「スパムボットの撃退(defeating the spam bots)」「すべての人間の認証(authenticating all humans)」を目指すとしている(ケータイWatch)。

 この買収に対して、ユーザーの7割は肯定的に捉えているという報道もある(INTERNET Watch)が、一方で、「Twitter有料化」を懸念する声もみられる(ITmedia)。

 また、技術的には「新たなセキュリティリスクをもたらす可能性がある一方で、透明性を高める効果はほとんどない」とも指摘する専門家もいる(MIT Technology Review)。

 これまでもSNSは難しい判断を迫られてきた。一民間企業でありながら、政治家や国際情勢を踏まえた政治的な判断も迫られている。もちろん、社会からも厳しい目が向けられている。そうした影響力を持つプラットフォームが、今後、どう技術的に実装され、どう運営されるべきかという大きな岐路にあるといえよう。

ニュースソース

  • Twitter、イーロン・マスク氏による買収提案に合意、総額約5.6兆円[INTERNET Watch
  • イーロン・マスク氏、買収後のTwitterを「スパムボットを打倒し、すべての人間を認証する」[ケータイWatch
  • イーロン・マスク氏が買収のツイッター、全社会議で従業員から質問相次ぐ[CNN
  • イーロン・マスク氏による5.6兆円でのTwitter買収、ユーザーの7割は肯定的?[INTERNET Watch
  • 「Twitter有料化」がトレンド入り イーロン・マスク氏の買収でTwitter民がつぶやく“期待と不安”[ITmedia
  • Eマスクがツイッター買収でぶち上げたオープンソース化が危うい理由[MIT Technology Review

2. EUで「デジタルサービス法」が合意に至る

 ヨーロッパ連合(EU)はソーシャルメディアサイトやデジタルプラットフォームから悪影響を排除することを目的とする主要法案の基本事項について合意したことが報じられている(CNET Japan)。

 かねて、EUでは米国に本拠を置く大手IT企業に対し、プライバシーの保護、租税の回避、市場の独占、フェイクニュースの拡散など、さまざまな問題で厳しく対応をしてきた。

 今回合意した「デジタルサービス法(Digital Services Act:DSA)」では、「Facebook、Google、Twitterなどの大手サービスがそれぞれのプラットフォームで偽情報の拡散を取り締まることや、アルゴリズムがユーザーにどのようにコンテンツを推奨するかを明らかにすること」などが含まれる。さらに、「子ども向けや、ユーザーの民族性や性的指向に合わせて作成されたターゲティング広告など、プラットフォームで特定の種類の広告を禁止する」という内容も含まれている。3月に暫定合意したデジタル市場法(DMA)は「反競争的な行為などの問題に対応することを目的」とし、さらに「個人情報の収集や共有を管理する権利などをユーザーに付与する」ことを意図する一般データ保護規則(GDPR)とともに3本柱ともいえる構成となっている。

 ちょうど米国ではイーロン・マスク氏がTwitter社の全株式を取得して経営権を取得する方向にあり、欧州委員会の委員からは、その動きを受けイーロン・マスク氏はDSAを「守る必要がある」と述べていることも報じられている(CNET Japan)。

 つまり、デジタルプラットフォームの透明性や健全性に対する要求は国際的にますます高まり、一企業の行うサービスという範疇をはるかに超え、その存在のありようが改めて問われている。

ニュースソース

  • EU、「デジタルサービス法」で合意--違法コンテンツなど、大手IT企業への規制強化[CNET Japan
  • Twitterを買収するマスク氏に欧州委員が警告--「規則を守る必要がある」[CNET Japan

3. メタ、アルファベット、マイクロソフトの四半期業績

 メタ(Facebook)、アルファベット、マイクロソフトという大手IT企業の四半期業績が開示されている。

 Facebookのデイリーアクティブユーザー数(DAU)は前年同期比4%増の19億6000万人で、前四半期の19億2900万人からも増加している(CNET Japan)。前四半期の決算における「FacebookのDAUが減少した」という発表は衝撃的に捉えられ、同社の株価は一時急落したことは記憶に新しい。今回は増加に転じていることから、まだ伸びしろがあると捉えられているようだ。しかし、「Appleのプライバシーに関する変更、規制、ウクライナ紛争などのFacebookが直面している課題」は同社にとって深刻なものであり、さらに「ロシアはFacebookとInstagramをブロック」し、「Metaはロシアの国営メディアによる広告配信などを世界的に禁止」するなど、世界情勢も混沌としている。

 アルファベットは「クラウド事業は好調だったが、YouTubeの広告収入が振るわなかった」としている。それに加え「経費が大幅に増加」したと報告している(ITmedia)。

 マイクロソフトは「Microsoft Cloudの売上高は前年同期比32%増の234億ドルだった。Microsoft Azureと『その他のクラウドサービス』の売上高は前年同期比46%増」と発表している(ZDnet Japan)。そして、「ロシアによるウクライナ侵攻がMicrosoftに及ぼす影響について、ロシアからの売上が占める割合は1%未満だと述べた」と報じられていて、こちらへの影響は軽微か。

ニュースソース

  • Meta第1四半期、Facebookのアクティブユーザー数は再び増加[CNET Japan
  • Alphabet決算は増収減益、クラウドは好調もYouTube広告が鈍化[ITmedia
  • マイクロソフトの3Q決算、クラウドなど好調--「Microsoft Cloud」は32%増[ZDnet Japan

4. デジタル監の石倉洋子氏が退任し、浅沼尚氏が就任

 デジタル庁の事務方トップであるデジタル監の石倉洋子氏が退任した(ITmedia)。体調問題などがあり、道半ばとしつつも、デジタル庁が立ち上がった段階での退任となったようだ。後任にはデジタル庁発足以来CDO(最高デザイン責任者)を務めてきた浅沼尚氏が就任した(ITmedia)。

 また、デジタル庁では、4月15日から5月5日まで、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の改定に向けた意見募集を実施している。この計画は「日本が目指すデジタル社会の姿を描き、実現のために必要な方策を取りまとめたもの」で、「誰一人取り残されないデジタル社会の実現について」「スタートアップ企業の創出・成長について」「その他、豊かなデジタル社会の実現に向けて」という3つのテーマについて広く意見を募っている(カレントアウェアネス)。

ニュースソース

  • デジタル監の石倉氏退任へ[ITmedia
  • 新デジタル監の浅沼 尚氏が就任会見 2つの注力ポイントとは?[ITmedia
  • デジタル庁、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の改定に向けた意見募集を実施中[カレントアウェアネス

5. 「PayPayポイント」のグループ外への解放により、ポイント経済圏の拡大を狙う

 今年10月以降、PayPayが「PayPayポイント」をグループ外へ開放するという計画を発表している。より具体的にいうと「これまでPayPayが主催していたポイント還元のキャンペーンとは異なり、店舗側がプロモーション用にPayPayポイントを購入し、販促につなげられるしくみのこと」であるという。それにより、PayPayポイントの発行額について、「2023年には発行額1位を目指す」という意欲を示している(ケータイWatch)。今回のような施策が実施された場合、ポイントを材料とする積極的なインセンティブ施策が行われる可能性もありそうだ(Impress WatchケータイWatch)。

 さて、そのPayPayだが、最新の発表によると、この4月時点での登録者数は4700万人を突破したという。また、加盟店の数は、366万カ所を超えたという(ケータイWatch)。さらに、2021年4月~2022年3月の1年間にPayPayで決済された回数は36億回を超え、そのうち下期(2021年10月~2022年3月)に19億回となり、前年同期と比べて約1.8倍にまで増えたとし、強い拡大傾向にあることを示した。

 既報のとおり、ほぼ全てのコンビニチェーンで使用でき、ユーザーとしてもレジ前で「PayPayで」ということに対する安心感も出ている。スマホ決済は乱立をし、レジ前にはたくさんの決済システムのロゴマークが並ぶが、今後はいずれかの少数のサービスに収斂する方向に向かうのか。

ニュースソース

  • 「PayPay」ユーザーは4700万人突破、加盟店は366万カ所に[ケータイWatch
  • 「PayPayポイント」10月以降にグループ外へ開放、加盟店も付与できる共通ポイントに[ケータイWatch
  • PayPayはふたたび大型還元をするのか――中山社長の一問一答[ケータイWatch
  • 規模感でポイント経済圏を攻略する。PayPayの新ポイント戦略[Impress Watch
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。