中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2022/4/28~5/12]
情報通信技術の国際協調 ほか
2022年5月16日 08:00
1. アップル、アマゾンの四半期業績動向
5月2日のこのコラムでは、「メタ、アルファベット、マイクロソフトの四半期業績」を紹介した(INTERNET Watch)。今週はアップルとアマゾンの四半期業績について紹介しておく。
アップルの四半期の売上高は約973億ドル(約12兆6885億円)で、前年同期比で+9%(ケータイWatch)。製品カテゴリー別の売上では、「iPhoneが前年同期比+5.5%の約506億ドル(約6兆6000億円)、Macが+15%の約104億ドル(1兆3556億ドル)、iPadが-3%の約76億4600万ドル(約9966億円)、ウェアラブルおよびホームデバイス、アクセサリーが+12%の約88億600万ドル(約1兆1477億円)、サービスが+17%の約198億2100万ドル(約2兆5835億円)」であると報じられている。半導体不足などのなか、ハードウェア売上も順調に伸び、かつサービスが+17%と引き続き順調のようだ。
一方、アマゾンは「パンデミックが落ち着いてきたことで消費者がオンラインショッピングから離れたほか、出資した電気自動車(EV)メーカーRivian Automotiveの株価下落で76億ドルの『営業外費用』が発生したため」赤字決算となった(CNET Japan)。とりわけ、これまで盤石と見られていた物品の売上高が前年同期比で1.8%の減少と報じられている。
ニュースソース
- アップル、2022年度第2四半期の決算、四半期ベースで過去最高の売上[ケータイWatch]
- アマゾンの1Q決算、赤字に転落--ネット通販の減速や出資先の評価損で[CNET Japan]
2. アップル、Google、MSがFIDOの対応を表明
パスワードの不適切な管理はセキュリティホールになりやすいということは言うまでもない。しかし、これほどまでにインターネットが普及し、1人でいくつものパスワードを持ち、それを適切に管理するためにはそれなりの工夫も必要で、誰しもが同じようにできる状況ではないことも事実としてある。
アップル、グーグル、マイクロソフトというオペレーティングシステムを扱う3社が2023年を目指し「FIDOアライアンスとW3C(World Wide Web Consortium)が策定した共通のパスワードレス認証のサポートを拡大する計画」を発表した(Impress Watch)。これにより「ウェブサイトやアプリで、デバイスやプラットフォームを問わず一貫して、安全で容易なパスワードレス認証を提供可能」になることが期待される。
ユーザーが所有する他のデバイスや新しいデバイスで、「FIDO認証資格情報(FIDOクレデンシャル)」に自動的にアクセス可能とし、シームレスにパスワードレス認証を使えるようにすること、OSプラットフォームやブラウザに関係なく、近くにあるモバイルデバイスでFIDO認証を使い、(PCなどの)デバイスのアプリやウェブサイトにサインインできるようにすることが実現される。
技術的な観点からの解説はPublickeyにある。
ニュースソース
- アップル・Google・MSがFIDOの新パスワードレス認証導入。スマホでPCサインイン[Impress Watch]
- Apple、Google、マイクロソフトが対応表明した、パスワードレスがさらに便利になる2つの新機能とは。PCがスマホとBluetooth通信でパスワード不要に、2台目のスマホにもクレデンシャルを簡単リストア[Publickey]
3. 「偽レビュー」撲滅なるか
アマゾンをはじめ、オンラインショッピングサービスではユーザーのレビューコメントが掲載されていることが多い。これを参考に購入の判断をしている人も多いに違いない。こうしたレビューコメントはとても大きな影響力がある。そして、レビューコメントを書くユーザーとメーカーや販売者側との緊張感が「健康的に」作用すれば、より良い製品の開発は販売につながることも期待できる。一方で、偽レビューも横行していることはよく知られている。つまり、メーカーや販売者が「やらせ」のレビューを書き込むということだ。こうした「やらせ」を見破る手がかりとなるためのツールも存在していることは周知の事実といったところで、プラットフォーマーがなんとかしないことにはユーザーではどうにもならない問題でもあった。
そのようななか、アマゾンは偽レビューの大手ブローカーを提訴したと報じられている(INTERNET Watch)。記事によれば「Amazonのポリシーに違反した偽レビューの投稿と引き換えに報酬を支払っている大手ブローカーに対して、サイトの停止を求めるとともに、同ブローカーに協力していたユーザーについての情報提出を求めるというもの。対象となっているのは香港を拠点とするExtreme Rebate社で、同社はユーザーに提供した無料製品に関して写真や動画を含んだ15語以上からなる5つ星のレビューを投稿すると、最大4ドルをメンバーに支払うスキームを実行している」という。そして、「今回の法的措置が認められれば、報酬につられて過去に協力したことのあるユーザーは一網打尽」になりそうだとされている。これまでも、アマゾンは同様な偽レビューのブローカー3社に対して法的措置を取ってきていて、約35万人を対象に行われていた不正スキームをすでに停止させた実績があるようだ。
一方、英国では「Eコマースサイトに偽のレビュー掲載する企業に厳しい罰則を適用する。違反した場合、売上高の最大10%を罰金として徴収される場合がある」と報じられている(Forbes JAPAN)。
ニュースソース
- Amazon、偽レビューの大手ブローカーを提訴。協力していたユーザーの情報提出も要求[INTERNET Watch]
- 英国がEコマースの「偽レビュー」規制を強化、罰金も導入[Forbes JAPAN]
4. 情報通信技術の国際協調
米ホワイトハウスは「未来のインターネットに関する宣言」を発表したと報じられている(ZDnet Japan)。これには、米国、EU加盟国、英国のほか、約30カ国が賛同している。ただし、中国やロシアは不参加とされている。この宣言の趣旨は「選挙のあり方を揺るがすオンラインの偽情報の流布」「違法なスパイ行為の禁止」などによって、オンラインにおける民主主義の強化を図ることを目指すとされている。また、「インターネットの安全性」「公平なインターネットの利用を推進」「政府の介入によるインターネットサービスの遮断の抑止」をはじめ、「信頼性の高いインターネットサービス」の提供に向けて尽くすことを宣言している。
そして、金子恭之総務大臣はEUの執行機関であるヨーロッパ委員会のデジタル分野の幹部と会談したと報じられている(NHK)。「ビヨンド5Gと呼ばれる次世代の通信規格の研究開発などで日本とEUが協力を強化していくことで一致した」とされている。5Gではファーウェイ社など、中国勢によって技術が主導されたことから、西側諸国との間での緊張も生まれたことは記憶にも新しい。特定の国や特定の大手IT企業だけが技術をコントロールしていくのではなく、国際協調のうえでの技術開発、製品開発、運用がより一層、重要になっていくのではないか。
また、日米欧の先進7カ国(G7)デジタル政策を担当する大臣による会合がドイツのデュッセルドルフで開かれた(ITmedia)。「ロシアによるウクライナ侵攻で、インターネット環境を支える光ファイバーなどデジタルインフラが被害に遭っていることを受け、デジタルインフラを守る重要性を強調するサイバーレジリエンス(強靭(きょうじん)化)の『共同宣言』をまとめる」見通しだと報じられている。さらに「デジタル化と環境」「デジタル保護主義への反対の再確認」「データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト(信頼性のある自由なデータ流通、DFFT)」の推進などについても話し合われるということだ。
ニュースソース
- G7デジタル相会合開幕 デジタルインフラ強靭化で共同宣言へ[ITmedia]
- 次世代通信規格「ビヨンド5G」 日本とEUが協力強化で合意[NHK]
- 「未来のインターネット」宣言、米主導で世界60カ国が賛同--中国やロシア不参加[ZDnet Japan]
5. DX、メタバース、セキュリティ、データ流通――「デジタルトラスト」構築の道すじ
総務省と日本経済新聞社が6月6日・7日の2日間、「世界デジタルサミット2022『デジタルトラスト』~ 信頼できるネット社会へ」を開催すると告知している(総務省)。参加費は無料で、会場は日経ホール(東京都千代田区)だが、オンラインでの視聴も可能だ。ただし、事前の申し込みも必要。プログラムによると、金子恭之総務大臣や牧島かれんデジタル大臣が登壇予定となっている。また、「デジタルトラスト育む技術とツール」「Web3が拓く未来とは」「メタバースは世界をどう変えるのか?」「信頼できるデジタルインフラの確保に向けて」と題されたパネルディスカッションが予定されている。
ニュースソース
- 「世界デジタルサミット2022」の開催[総務省]