中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2022/5/12~5/19]

「メタバース」が大手企業各社の経営戦略に ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. ハードウェアの進化と新サービス――「Google I/O」まとめ

 米国時間5月11日、グーグルは年次開発者会議「Google I/O」をオンラインで開催した。以下のニュースソースにはその発表の概要をまとめてある。

 基調講演においては、CEOのスンダー・ピチャイ氏が「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスし、使えるようにする(Organize the world's information and make it universally accessible and useful)」というグーグルのミッションの下での既存サービスや製品の紹介をし、これからの新製品や新サービスについてのプレゼンテーションが行われた(ITmedia)。

 発表された話題のなかでも注目のスマートフォンやタブレット分野では、Pixel 6aの発表(ケータイWatch)、Pixel 7/7 proを今秋に発表することの予告(ケータイWatch)、Pixel tabletの2023年発売予告(ケータイWatch)である。また、Pixel Buds Pro(ケータイWatch)、Pixel Watch(ITmedia)の発表も行われている。

 さらに、サービスの分野ではパスワードレスやバーチャルカードなどの計画についても触れている。

 一方で、メタバースが各所で話題となっているなか、あえて「メタバース礼賛の世情を批判するかのように『リアルな世界は素晴らしい』と強調し、GoogleのAR技術はリアルな世界を便利にするためのものだ」と語ったとも報じられている。今回の発表において、メタバースを露骨に扱っていないことなども踏まえると、今後のメタバースへの対応、あるいはそれに対抗する対応についても注目をしておくべきか。

ニュースソース

  • グーグル、画像の情報から近くの店舗などを検索する機能[ケータイWatch
  • Google マップに新機能、ランドマークを没入感ある表現「Immersive View」など[ケータイWatch
  • Google アシスタントがウェイクワードなしで起動可能に、米国では今週から[ケータイWatch
  • Google翻訳でアフリカやアジアの24言語が新たにサポート[ケータイWatch
  • グーグル、「Pixel 6a」を発表[ケータイWatch
  • グーグル、「Pixel 7/7 Pro」を今秋発表と予告[ケータイWatch
  • グーグルが「Pixel tablet」予告、2023年登場へ[ケータイWatch
  • グーグルのフルワイヤレスイヤホン「Pixel Buds Pro」7月発売、ANCや空間オーディオ対応も[ケータイWatch
  • グーグル、翻訳&文字起こしするメガネ型ARデバイスを試作[ケータイWatch
  • Google Payは「Google Wallet」へ、免許証や接種証明などもデジタル化[ケータイWatch
  • Google フォトに「リアルトーン」、肌をより忠実に表現[ケータイWatch
  • Google、AIのチカラで「基地局設置」を最適化[ケータイWatch
  • Google、「Pixel Watch」を発表 発売は今秋[ITmedia
  • Google I/O 2022基調講演まとめ[ITmedia

2. 「メタバース」が大手企業各社の経営戦略に

 各社は2022年3月期の決算発表と、今後の経営戦略について発表をするタイミングとなっている。

 そのなかで、先週報じられた記事のなかで、KDDI(ケータイWatch)、ソニー(Impress Watch)、三井住友海上火災保険(IT Leaders)という大手企業がメタバースについて触れていることは興味深い。もちろん、これ以外の多くの企業でもすでに経営戦略のなかにメタバースを明確に位置付けていたり、これからの発表でそれを発表する例は増加する傾向にありそうだ。

 そもそも、メタバースはフェイスブック社が社名を「メタ・プラットフォームズ(略称:メタ)」に改称してまで次の中心戦略として位置付けたあたりから、各社がメタバースへの取り組みを表明しているというトレンドに見える。大手IT企業の戦略には追従すべしということか。

 一方で、いくつかのメタバースの実用事例は見られるものの、市場では急速な拡大をしている段階にはなさそうだ。MMD研究所が発表した調査結果(ITmedia)によると、「『メタバースを利用したことがある人』は5.1%」で、残念ながら「『全く知らない』が56.6%」という状況だ。今後の普及の鍵は、いずれかの企業がキラーコンテンツで市場での認識を上げることか。

ニュースソース

  • KDDI、2022~2024年度の中期経営戦略を発表――5G浸透やメタバースなど注力[ケータイWatch
  • 「メタバースとモビリティで成長する」 10億人とつながるソニー経営方針[Impress Watch
  • 三井住友海上火災保険、メタバース上にビジネス拠点を開設、リアル/仮想空間を行き来しながら商品開発[IT Leaders
  • 「メタバースを利用したことがある人」は5.1% 経験者の7割が男性 MMD調査[ITmedia

3. 国立国会図書館の絶版資料がオンラインで入手可能に

 国立国会図書館が「個人向けデジタル化資料送信サービス」を開始した(PC Watch)。これは、同館が保有するデジタル化資料のうち一部を個人でもインターネット経由で閲覧できるというもの。対象となるのは、「国立国会図書館デジタルコレクション」のうち、「絶版などの理由で入手が困難であることが確認された約153万点(2022年1月時点)」とされている。これは2021年6月の改正著作権法公布により実現した。なお、現時点では閲覧のみのサービスだが、2023年1月には印刷機能の提供も行われる予定だとしている。

 デジタルアーカイブは多くの権利者との関係、出版ビジネスとの関係などもあり、利便性だけでは語れない難しい課題ではあることは承知しているが、こうしたサービスが開始されたことは、大きな一歩であることは間違いないだろう。

ニュースソース

  • 国立国会図書館の絶版資料などがネット経由で見れるサービス、本日提供開始[PC Watch

4. 楽天モバイル「0円」廃止の影響

 楽天モバイルが今年7月から新料金体系である「Rakuten UN-LIMIT VII」を適用し、これまでのセールスポイントであった「0円」がなくなり、「月額980円~2980円」となる(ケータイWatch)。

 これを受けて、市場では「裏切られた」「乗り換えようかな」などといった反発の声もあると報じられている(ITmedia)。そして、タイミングを同じくして、povo(ITmedia)やIIJmio(ITmedia)の申し込みが集中したことによる対応の遅れも報じられている。原因は明らかにされてはいないが、楽天からの移行組の可能性も考えられる。

 楽天グループの三木谷氏は記者会見で「ぶっちゃけ、0円でずっと使われても困る」と発言したことが多く報じられている(ケータイWatch)。モバイルインフラの整備などに多額に費用を投じていることから、ビジネス的な観点では当然の経営判断であることとはいえ、多くのメディアを使った強いマーケティングメッセージを受けて契約をした消費者としては納得がいかないという声が出るのも分からなくはない。今後の「楽天経済圏」全体としてのマーケティング手法の変化にも注目が集まる。

ニュースソース

  • 楽天モバイルが7月から新料金「Rakuten UN-LIMIT VII」、0円なくなり月額980円~2980円、ポイント倍率はアップ[ケータイWatch
  • 0円廃止/特典アップを選んだ楽天、決算会見の質疑で三木谷氏が語ったこと[ケータイWatch
  • 楽天モバイル三木谷氏「ぶっちゃけ、0円でずっと使われても困る」[ケータイWatch
  • 新料金プラン発表の楽天モバイル、発表後の質疑応答で語られたこととは[ケータイWatch
  • IIJmioにも申し込みが集中 本人確認と商品発送に遅れ 要因は非公表[ITmedia
  • povoに申し込み集中で本人確認に時間がかかる事態に 楽天モバイルからの移行も[ITmedia
  • “0円終了”楽天モバイルに反発の声 「裏切られた」「乗り換えようかな」 余波で「povo2.0」トレンド入り[ITmedia

5. イベントカレンダー:ドローンとNHK技研公開

 コロナ禍の沈静化に伴い、リアルイベントの開催が増加しそうだ。オンラインイベントに慣れてきたところではあるし、その利便性も高いのだが、こうして現物を目にすることができるリアルイベントは価値がある。開催が困難だったこの2年間の技術の蓄積が一気に花開くことが期待される。

 5月25日~27日、東京ビッグサイトでは「ワイヤレスジャパン2022」が開催される。「日本全国400万社のための5G&IoT実装宣言」と題している(RIC TETECOM)。

 そして、5月26日~5月29日には、東京都世田谷区にあるNHK放送技術研究所で「技研公開2022」が開催される。こちらはオンラインとの併催となっている(NHK)。

 また、6月21日~23日には千葉市の幕張メッセで第7回となる「JapanDrone2022」の開催も予定されている。「実現間近、ドローンのレベル4飛行と有人飛行」がテーマとなっている(ドローンジャーナル)。

ニュースソース

  • JapanDrone2021のドローン製品を振り返る、無料レポート配信開始[ドローンジャーナル
  • ワイヤレスジャパン2022[RIC TETECOM
  • 技研公開2022「技術が紡ぐ未来のメディア」[NHK
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。