中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2023/3/9~3/15]

ChatGPTを組み込んだ事例が続々と ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. OpenAIが新バージョン「GPT-4」を発表

 OpenAIはAI技術基盤「GPT」を大幅にアップグレードした新バージョン「GPT-4」を発表した(CNET Japan)。現在、チャットボット「ChatGPT」の有料版「ChatGPT Plus」を通じて利用できる。OpenAI日本担当のシェイン・グウ氏は「月額2,400円、『未来』を『先に』試せます」とツイートしている(ITmedia)。

 新バージョンでの注目点は主に質的(精度)向上だ。OpenAIが示したデモ動画では、「記事を要約する様子やDiscordでGPT-4のbotを作成する様子」のほか、「手書きのラフスケッチからWebサイトを構築するためのHTMLやJavaScriptを出力するデモ」「家族の税務計算を行う様子」などを示している(ITmedia)。

 もちろん、全てを頼りきるのは早いだろうが、技術の進化を実感できる変化だ。あと1年後にどうなっているのか。いずれは疑いなく任せることができる時代がやってくるのだろうか。

ニュースソース

  • OpenAI、「GPT-4」を発表--精度が向上、画像に関する質問にも対応[CNET Japan
  • 「GPT-4」で何ができる? ラフからWebサイトを瞬間生成、税務計算もラクラク──OpenAIがライブデモ[ITmedia
  • GPT-4をいち早く試すなら「ChatGPT Plus」 月額2400円だが、画像入力など「お楽しみはこれから」[ITmedia

2. ChatGPTを組み込んだ事例が続々と

 基盤技術の進歩にも目をみはるものはあるが、それを利用したサービスの進歩は実に興味深い。こうして日常の仕事や作業を支援してくれるようになるなら、大いに歓迎したいところだ。特に自然言語を扱う分野では革命的な進歩だ。

 まず、Slackでは、「数秒でメッセージの下書きを作成」「チャンネルやスレッドにおける最新のやり取りの内容を要約」などができる(CNET Japan)。

 チャットサービス「Discord」では、「ルールに違反する可能性がある投稿についてモデレーターに警告」「会話を要約」のほか、「共有ホワイトボード機能で、生成型AIでテキストから生成した画像を描く」ことなども検討されている(ITmedia)。

 検索エンジンを手掛けるDuckDuckGoでは、「検索バーに質問を入力すると、DuckAssistは『Wikipedia』と、場合によっては『Britannica』(ブリタニカ百科事典)などを参照して回答を生成する」という(CNET Japan)。

 語学学習用アプリ「Duolingo」では、「ユーザーの回答について『なぜ間違えたのか』について文脈に応じたAIによる解説を確認できる『スマート解説』のほか、ユーザーと学習者が対話型AIで会話力を鍛えられる『ロールプレイ』を利用できる」としている(ケータイWatch)。

 スペル・文法チェックツールを手掛ける米Grammarlyでは、「フランクな文体をフォーマルに書き換えたり、文意を明瞭に改善したり、短く要約したりする。新規作成は、プロンプトを入力することで行う」ことができる(ITmedia)。

 セールスフォースは「Einstein GPT」を発表した。「営業担当者は顧客にあわせてパーソナライズしたEメールを作成したり、カスタマーサービス担当者は顧客の質問への具体的な回答をより迅速に作成したりできる。マーケティング担当者はキャンペーンの反応率を向上させるターゲットを絞ったコンテンツを作成したり、開発者向けにコードを自動生成したりできる」とうたっている(Web担当者フォーラム)。

 日本でも、Rimo合同会社がAI文字起こし・議事録サービスRimo Voiceで、要約機能のベータ版の提供を開始した(INTERNET Watch)。

 ソースネクストのAIボイスレコーダー「AutoMemo」でも、「特に会議などの複数人での音声やマイクから距離の離れた小さな音声の認識精度の向上」を図っている(CNET Japan)。

ニュースソース

  • 「Slack」に「ChatGPT」導入へ--要約や下書き作成が可能に[CNET Japan
  • Discord、ChatGPTと同じ技術採用のチャットbot「Clyde」や会話要約機能などを発表[ITmedia
  • DuckDuckGo、AI検索機能「DuckAssist」を発表--OpenAIなどの技術を活用[CNET Japan
  • 語学アプリ「Duolingo」に「GPT-4」活用のレッスン、米国などで提供[ケータイWatch
  • 文法チェックのGrammarlyも生成系AIツール提供へ 状況に合わせた文章を生成[ITmedia
  • 「ChatGPT」による要約機能、AI文字起こし/議事録サービス「Rimo Voice」がベータ版提供[INTERNET Watch
  • 「あー、ええと」などフィラー音を自動除去--AIボイスレコーダー「AutoMemo」が新エンジンに[CNET Japan
  • セールスフォースが生成AI「Einstein GPT」発表、独自のAIとOpenAIの「ChatGPT」統合[Web担当者フォーラム

3. AIに人生相談

 起業家として知られる家入一真氏が開発したのが「HOTOKE AI」だ(ITmedia)。「相談内容を入力すると、仏教や心理学、コーチングの視点から解決方針や心掛けを自動生成する」というもの。ジョークのように聞こえるかもしれないが、家入氏は浄土真宗で得度(僧侶になるための出家の儀式)もしているそうだ。

ニュースソース

  • 「生きる理由が分かりません」 メカニカルなAI仏様に相談してみよう! ChatGPTと同エンジン搭載[ITmedia

4. PC/タブレット/スマホの出荷統計

 MM総研が2022年の国内PC出荷台数を発表した。「出荷台数は1,127.2万台で前年比14.7%減」と2年連続の減少となった(PC Watch)。また、国内タブレット市場は「2013年以降の10年間では最少の631万台」としている。2020年と2021年はGIGAスクール構想の特需があり、900万台以上を出荷していた(PC Watch)。

 IDC Japanは2022年通年の国内のスマートフォンおよびフィーチャーフォン端末の出荷台数を発表した(ケータイWatch)。「出荷台数は前年比8.1%減の3430万台」としている。なお、ベンダー別で見ると、アップルが48.4%を占めてトップとなり、2位は380万台(11.1%)のシャープ、3位は350万台(10.3%)のFCNT、4位は310万台(9.0%)のサムスン、5位は260万台(7.5%)のソニーとなっている。

 これらの理由としては、部品の供給不足、為替変動、特需明けなどである。

ニュースソース

  • 2022年のスマホ出荷は8.1%減、第4四半期は16%減――IDC調査[ケータイWatch
  • 2022年の国内タブレット出荷は過去10年で最少。MM総研調べ[PC Watch
  • MM総研、2022年度のPC出荷台数は前年比14.7%減。しかし出荷金額は前年比8.8%増[PC Watch

5. 恒例の大手IT企業のプライベートイベントスケジュール公開

 毎春の恒例となっているITジャイアントのプライベートカンファレンスの予定が発表になってきている。

 まず、グーグルの「Google I/O」は5月10日の開催となっている(ケータイWatch)。Android 14、Pixel 7a、Pixel Tablet、折りたたみPixel、ARに期待する声もあるが(Gizmode)、なんと言ってもAIがメインテーマになるのではないか。従来の検索技術と競合することから、ここで魅力的な技術のアピールをする必要がある。

 また、マイクロソフトも「Microsoft Build」を5月23日から開催する(ITmedia)。Windows 11、「新しいBing」と「新しいEdge」が期待されるが、OSやオフィススイートでのAIの応用にまつわるものが増えると思われる。

 メタ、アップルらがどう対応するかも今後の注目点である。

ニュースソース

  • 2023年の「Google I/O」は5月10日~、登録受付がスタート[ケータイWatch
  • Microsoft Build 2023は5月23日~25日にハイブリッド開催[ITmedia
  • Google I/O 2023に期待すること[Gizmode
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。