中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2023/8/17~8/23]

ガートナーが2023年版「先進テクノロジのハイプサイクル」を発表 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. ガートナーが2023年版「先進テクノロジのハイプサイクル」を発表

 毎年の恒例となっている「先進テクノロジのハイプサイクル」の2023年版がガートナーから発表された。そして、予想どおり「生成AI」が「過度な期待のピーク」にあると位置付けされている。

 この「先進テクノロジのハイプ・サイクル」は2000を超える技術などから25の技術が選び出され、今後、2年から10年で、ビジネスを変革していくことが見込まれるとしている。それぞれは「黎明期」「過度な期待のピーク期」「幻滅期」「啓発期」「生産性の安定期」と推移するという仮説のもと、どこに位置しているかを示している。「生成AI」以外にも、「AIシミュレーション」「コーザルAI」「連合機械学習」「グラフデータサイエンス」「ニューロシンボリックAI」「強化学習」などが、注目すべき新興AI技術として扱われている。

 また、ガートナーの日本法人のガートナー・ジャパンは「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2023年」を発表している。日本市場での位置付けを示しているもので、「2022年版で『過度な期待』のピーク期にあったメタバースやWeb3、NFT、量子コンピューティングは、2023年版では幻滅期に入った」としている。

ニュースソース

  • ガートナーが2023年の日本版ハイプ・サイクル発表、生成AIは過度な期待のピーク期[日経XTECH
  • 生成AIは「過度な期待」のピーク期--ガートナー「先進テクノロジのハイプサイクル」[CNET Japan

2. 「東京ゲームショウ VR」の概要が発表される

 9月21日から24日まで、幕張メッセ(千葉市美浜)で開催が予定されている「東京ゲームショー2023」の一環として開催されるバーチャル会場「東京ゲームショウ VR 2023」についての概要が発表された(CNET Japan)。「東京ゲームショウ VR」とは、メタバースに離れた場所からゲームファンが集い、交流を楽しむという催しもの。入場料は無料。今年は、新たにスマートフォンからでも参加が可能になった。また、リアル会場終了後もバーチャル会場を楽しめるよう、開催期間も9月21日から10月1日までの11日間と、「東京ゲームショー2023」よりも1週間長く開催するとしている。

 エンターテインメント性の高いイベントでのVRは、制作側もそれなりのノウハウを投入してくると予想されるので、そのクオリティなども期待できる。

ニュースソース

  • 「東京ゲームショウ VR 2023」の概要が公開--初のスマホ対応や会期延長で参加しやすく[CNET Japan

3. 生成AIにまつわる著作権保護策の再検討を求める共同声明、新聞・雑誌・写真・書籍の4団が発表

 日本新聞協会、日本雑誌協会、日本写真著作権協会、日本書籍出版協会の4団体は、生成AIにまつわる著作権保護策の再検討を求める共同声明を発表した(ITmedia)。

 この声明のなかで、日本の著作権法第30条の4が「諸外国に比べ、AI学習に極めて有利に作られていることは大きな課題」と指摘している。そのうえで、AIに学習させる著作物データの保護をめぐり、権利者団体と関係当局の意見交換を求めている。

 著作権法第30条の4では、ネットワーク上のデータを大量に収集して、情報解析をしたり、情報処理の過程で利用したりすることは「著作権者の利益を不当に害する」場合を除き、著作権を侵害しないとされている。これを決めたときには、検索などのインデックス化が主なユースケースで、AIによる学習を想定していなかったということだろう。

ニュースソース

  • 「生成AIは著作権保護の検討が不十分」新聞協会など声明 「著作権法30条の4は大きな課題」[ITmedia

4. あくまでも「人間が関与した著作物性の根幹」が重要

 AIが生成した作品は著作権で保護されないとの判決を米連邦裁判所が下したことがCNETで報じられている(CNET Japan)。判決文では「人間の手にまったく導かれることなく動作する、新しい形態の技術によって生成される作品を保護するほど、著作権法が範囲を広げられたことはない。人間の創造物であることが基本要件だ」と述べている。これは、かつて(2018年)サルが撮影した自撮り写真をめぐる裁判で、同様の判決を下したことと通じる。「その自撮り写真は人間が撮影したものではないため、著作権で保護されないとの判断」である。あくまでも人間が関与したこと著作物性が重要ということである。

 これは、米国の映画業界のストライキにも影響があるかもしれない。「AIを利用して脚本を制作するという概念が勢いを増す中、AIが生成した作品が法的保護を受けないという考え方」は、クリエイティブな分野に携わる人々にとって追い風となるかもしれない。

 また、Forbes誌では、米国の映画業界のストライキについて、データ・フォー・プログレスが実施した世論調査の結果を報じている(Forbes JAPAN)。それによれば「全米脚本家組合(WGA)と全米俳優組合(SAG-AFTRA)によるストライキを支持する米国人は67%と推定され、反対派は18%という」ことだ。さらに「圧倒的多数の米国人が両組合の要求に賛成しており、俳優や脚本家がストリーミング事業者のために行った仕事に対して適切な報酬を得るべきだという意見に賛成する者は87%、俳優が自身の肖像や声の権利を持ち、人工知能(AI)に複製された場合に追加の報酬を得るべきであるという意見に賛成する者が85%だった」と伝えている。

ニュースソース

  • AIが生成した作品は著作権で保護されない--米裁判所が判決[CNET Japan
  • 米国人の7割が映画業界のストに賛同、6割がスタジオを非難[Forbes JAPAN

5. イーロン・マスク氏の次の施策

 イーロン・マスク氏は、Twitterを買収後、次々と新たな施策を打ち、ユーザーは戸惑うばかりだが、次の施策も明らかになりつつある。

 1つは「ブロック」の廃止だ。イーロン・マスク氏は「DM以外のブロックは機能として削除する予定」「意味がない」とXにポストした(Impress Watch)。

 もう1つはXにおけるニュース記事の投稿で、見出しやテキストを削除し、画像のみ表示するということだ(ケータイWatch)。つまり、画像がアイコンのように表示され、内容はクリックしないと分からないということか。

 「ブロック」については、一方的に絡んで来る人から自身を守る意味で利用する人が多いが、一方で、閉鎖的な関係の構築につながるという側面がある。河野太郎大臣がブロックを連発したときにはそのことが批判の理由となった。一般的には政治家のように広く意見を聞かなければならない人ばかりではないので、「ブロック」機能がなくなることでメンタルなどへ影響が及ばないのかも懸念される。

 そのようなイーロン・マスク氏が目指すXについて、CEOのリンダ・リンダ・ヤッカリーノ氏がインタビューに答えている(DIGIDAY日本版)。そのなかで「表現の自由の核心とは何なのかを忘れてはならない。私たちは健全な討論と議論を行いたい。その核となる表現の自由は、あなたが支持できない誰かが、あなたが同意しないことを言ったときにのみ、本当に存続する。そして、もし私たちが同意できない人々のあいだで健全で建設的な議論を行なうことができたなら、この世はなんと素晴らしい場所になるだろうか」という。

ニュースソース

  • X、タイムライン上のニュース記事は「見出しなし&画像のみ表示」へ[ケータイWatch
  • Xが「ブロック」機能を削除へ マスク氏「意味がない」[Impress Watch
  • イーロン・マスク が目指すXの姿。リンダ・ヤッカリーノCEOインタビューから探る[DIGIDAY日本版
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。