中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2023/8/24~8/30]

OpenAIのクローラーを拒否する動き ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. OpenAIのクローラーを拒否する動き

 生成AIがコンテンツを学習することについて、「著作権法第30条の4」によって認められていると考えられるが、それを定めたときは検索などのインデックスを想定していて、AIの学習は想定していなかったとして、改めて、著作権法改正を検討する必要があるのではないかという声が上がっている。

 日本雑誌協会、日本写真著作権協会、日本書籍出版協会、日本新聞協会の4団体は「生成AIに関する共同声明」を発表し、そのなかで、「『情報解析の用に供する場合』などを挙げた著作権法第30条の4が、『諸外国に比べ、AI学習に極めて有利に作られている』と指摘」している(新文化)。

 また、生成AIによるアウトプットについて、日本写真家協会は「生成AIで作成した画像は『二次的著作物』にあたり、原著作者の権利を保護するルール作りが必要だと問題提起」をしている(ITmedia)。そして、「生成AI技術の使用が適切にコントロールされないと、写真家の著作権をはじめ、知的財産権などが損なわれフリーライド(ただ乗り)が発生する」という懸念を表明した。

 そのようななか、海外のメディアでは、OpenAIのクローラーをブロックする動きが出てきている(INTERNET Watch)。「現時点で明らかになっているのはNew York Times、CNN、Reutersなどで、なかでもNew York Timesはこれに先立って自社のコンテンツをAIのトレーニングに用いることを禁止する条項を利用規約に追加。その後robots.txtに、GPTBotを『Disallow』とする旨を追記したと」と報じられている。

 今後の動向については、日本国内だけでなく、海外動向も踏まえて注視しておく必要があるだろう。

ニュースソース

  • 雑書協など4団体、「生成AIに関する共同声明」発表[新文化
  • 生成AI画像は「二次的著作物」と日本写真家協会 「出典の明記を」[ITmedia
  • 「AI学習に利用するべからず」OpenAIのクローラーをブロックする動き、海外で広がる[INTERNET Watch

2. 経済産業省が「電子商取引に関する市場調査」の結果を公表

 経済産業省が「令和4年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」を実施し、日本の電子商取引市場の実態等について調査結果を公表した(経済産業省)。

 それによると、日本国内の消費者向け電子商取引の市場規模は、22.7兆円になり、前年の20.7兆円から拡大を続けている。その内訳としては、食品、家電、書籍・ソフト、生活雑貨などの「物販系分野」が5.34%の増加、旅行、飲食、チケット、金融などの「サービス系分野」が32.43%の増加、電子出版、配信などの「デジタル系分野」が6.10%の減少となっている。

 また、商取引金額(商取引市場規模)に対する、電子商取引市場規模の割合である「EC化率」では、「書籍、映像・音楽ソフト」が52.16%と半数を超えたほか、「生活家電、AV機器、PC、周辺機器等」が42.01%と拡大した。他方、「食品、飲料、種類」は4.16%、「化粧品・医薬品」は8.24%といまだ少なく、今後の成長余地を感じさせる結果となっている。

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3. アップルが日本時間9月13日午前2時に新製品発表会を開催

 アップルは、日本時間9月13日午前2時から米国アップル本社において新製品発表イベントを開催する(ケータイWatch)。オンラインでの配信も行われる。

 いうまでもなく、iPhone 15の発表が期待されるところだ。すでにさまざまなうわさがインターネット上を駆け巡っているが、どのような進化を遂げるか。そして、円安ドル高の今、日本ではどのような価格になるのだろうか。そして、性能向上の幅が狭まっているなか、買い替えサイクルが長期化するなど、かつてほどの市場インパクトがあるかどうかも、産業としては注目点といえよう。

ニュースソース

  • アップル、9月13日2時に発表会開催へ iPhone新モデルに期待[ケータイWatch

4. リモートワークではイノベーションは起きないか

 今年、日本では災害級の酷暑のなか、改めてリモートワークについて考えた人も多かったのではないかと思うが、はたして、今後、どのような就業形態が定着していくのだろうか。

 コロナ禍の終焉とともに、米国の大手IT企業では、さらに出社が求められるようになってきている。

 メタは従業員に対し、オフィス出社義務化(RTO:Return to Office)の方針を徹底しているという。「遵守しなければ失職の可能性」もあるという通達も出している(BUSINESS INSIDER)。

 アマゾンは従業員に対し、自分の居住地の最寄りのオフィスではなく、個々のチームに割り当てられたハブオフィスに勤務するよう要請するという「拠点回帰」策を出している(BUSINESS INSIDER)。そして、米国内の従業員に週3日以上のオフィス勤務を再開するよう求めているとも報じられている。一方で、「1年前に遠隔勤務の人材として採用された従業員にオフィス勤務を強要できるのかという議論」もあるという(CNN)。

 リモートワークによって急成長したビデオ会議のZoomも例外ではない。エリック・ユアンCEOは従業員に対し、「リモートワークではオフィス勤務に比べて従業員同士の信頼関係が築きにくく、イノベーティブな仕事も難しいため、定期的な出社義務を設定することにした」と述べたことが報じられている(BUSINESS INSIDER)。

ニュースソース

  • メタ、出社規定を厳格化。今後は週3日出社しないと最悪「失職」の可能性も[BUSINESS INSIDER
  • リモートワークこそ収入源のZoom、週2日の出社義務に「転向」した残念な理由。ユアンCEOの社内発言入手[BUSINESS INSIDER
  • 米アマゾンCEO、出社義務を拒否する従業員に警告[CNN
  • アマゾンの出社義務化に従業員は困惑…指示に従うなら飛行機通勤、車上生活も[BUSINESS INSIDER

5. ハヤカワの「NFT電子書籍付の本」の可能性

 新しい技術やサービスについては試してみることは重要だ。Impress Watchに「ハヤカワのNFT電子書籍付の本を買ってみた」という記事が掲載されている(Impress Watch)。

 書店でプリント版の書籍を購入すると、NFTなどの特典を入手できるQRコードを印刷したカードが封入されている。それを読み取ると、NFTを管理する「FanTop」でNFT特典を受け取ることができる。「ハヤカワ新書」では、その本の内容が電子書籍になっていて、NFTに紐づくことで所有できるという仕組みになっている。さらに、入手した電子書籍付きのNFTをマーケットに出品して、転売できる。その際の「コンテンツ利用料」が、著者や出版社などへの分配金となるようだ。これが新しいところだ。従来の古書の売買では著者や出版社に分配されることはないし、ましてや電子書籍はデータへのアクセス権を買っているだけなので、譲渡という概念がない。

 NFTというと技術的な構成も難しいと感じる人も多く、よく分からないということで片づけられそうだが、こうして何ができるのかを体験すれば、その意味や可能性も実感できるようになるのではないか。

ニュースソース

  • ハヤカワのNFT電子書籍付の本を買ってみた[Impress Watch
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。