中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2023/8/31~9/6]
高精細画像・カラー化技術の成果~NHK「関東大震災 ~帝都壊滅の三日間~」 ほか
2023年9月11日 07:00
1. 「歩きスマホ」をもっと問題視すべきではないのか
NTTドコモのモバイル社会研究所がシニア層(60歳から79歳)のメール・SNS利用に関する調査結果を公表した(INTERNET Watch)。
それによると、この調査を開始した2018年以降で初めて「LINE」が「メール」を上回った。また、「LINE」「Instagram」は女性が多く使い、「メール」「Facebook」「Twitter」は男性が多く使う傾向が見られた。「メール」の利用は横ばいを続けているので、衰退したわけではなく、用途によって使い分けているということか。
さらに、モバイル社会研究所は「歩きスマホ」の実態についての調査結果も公表している(ケータイWatch)。それによると、全体の4割超が歩きスマホを「している」と回答している。また、男女ともに若年層ほど歩きスマホをする割合が高く、10代~20代は6割超。70代以上は3割以下との結果になっている。首都圏でよく見られる傾向が数字としても現れている。
歩きスマホで他人とぶつかったり、交通事故へつながったりする事例も見られることから、社会問題として認識してもいいのではないだろうか。もし、歩きスマホの危険が分かっていてもスマホを見つめて歩かなければならないほど依存しているなら、それはそれで健康上の問題を疑うべきではないか。
ニュースソース
- シニア層におけるLINEの利用率が上昇、メールの利用率を初めて上回る[INTERNET Watch]
- 10代・20代の6割は歩きスマホをしてしまう――ドコモの調査レポート[ケータイWatch]
2. 高精細画像・カラー化技術の成果~NHK「関東大震災 ~帝都壊滅の三日間~」
映像の高精細化と着色の技術は高度の進歩してきている。
NHKが9月2日から3日にかけて2回に分けて放送した「NHKスペシャル 映像記録 関東大震災 ~帝都壊滅の三日間~」(NHK)は、関東大震災発生時の映像を高精細・カラー化し、これまでは読み取れなかった情報を細かく読み取り、新しい事実を掴もうという試みだ。その映像からは人々の表情、看板の文字、撮影場所や撮影時刻なども推測することができる(ITmedia)。
劣化したフィルムからこれだけの高精細画像が得られることは驚きだ。
今後、AI技術の導入などにより、こうした映像からまだまだ埋もれた事実が浮かび上がる可能性にも期待がかかる。
3. Xがユーザーの生体情報も収集?
生体情報の扱いは慎重であるべきだ。また、ユーザーも安易に提供すべきではない。収集した生体情報が流出したとしても、生体情報側をパスワードのように変更することはできない唯一の情報だ。
そんな生体情報をX(旧Twitter)が収集しようというのだ。ブルームバーグが報じたところによれば、「プライバシーポリシーを改定し、新たに生体情報なども収集する方針を示した」という(ブルームバーグ)。この生体情報が何を指すのか具体的には不明だが、一般的には「人の顔や目、指紋から得られるデータを指す言葉」と理解されている。
さらに、職歴や学歴に関する情報も収集するという。「ユーザーに有望な仕事を紹介したり、ユーザーが求人に応募した場合に、その求人元の潜在的な雇用主と当該ユーザーに関する情報を共有したり、雇用主が有望な候補者を見つけられるようにしたり、ユーザーにより関連性の高い広告を表示したりするために、ユーザーの個人情報(職歴、学歴、仕事に関する希望、スキルおよび能力、求職活動および内定などに関する情報)を収集して使用する」ことがあるというのだ。
現在のプライバシーポリシーは9月29日まで有効とされているので、今後、本当にこのような改訂が行われるのかには注意をしておくべきだろう。
そして、さらにXは通話機能を実装する計画もあるようだ(ケータイWatch)。そもそもユーザーがこうした機能をXに望んでいるのかということもあるが、まさか音声データも生体情報として取得しようというのか。
4. 世界の報道やメディア関連26団体が「世界AI原則」を発表
世界ニュース発行者協会(WAN-IFRA)をはじめとする世界の報道やメディア関連26団体が「世界AI原則」(世界AI原則)を発表した。日本からは日本新聞協会が名前を連ねている(朝日新聞デジタル、WAN-IFRA)。
この声明は、AI技術が一般大衆、コンテンツ制作者、企業、そして社会全体に多大な利益をもたらす一方で、クリエイティブ産業の持続可能性、知識、ジャーナリズム、科学に対する一般大衆の信頼、そして民主主義国家の健全性にリスクをもたらすという考えに基づき、懸念される知的財産の保護、透明性、説明責任、品質と完全性、公平性、安全性、設計、持続可能な開発に関する問題について言及をしたものである。つまり、報道機関のコンテンツ資産の保護だけを訴えるのではなく、AIのリスクを認識し、健全な利用を促進する上での原則として読むことができる。
5. [イベントカレンダー]インターネット・ガバナンス・フォーラム京都2023
2023年10月8日から12日まで国立京都国際会館において、国連主催による「インターネット・ガバナンス・フォーラム京都2023(IGF 2023)」が開催される。IGFは「インターネットに関するあらゆる課題について、国連主催のもと、多様な関係者が対等な立場で対話を行うインターネット政策の分野で最も重要な会議」で、今年で18回目となる。全体のテーマは「Internet We Want – Empowering All People -(私たちの望むインターネット-あらゆる人を後押しするためのインターネット-)」である(総務省)。
ニュースソース
- インターネット・ガバナンス・フォーラム京都2023[総務省]