中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2023/9/7~9/13]

ウクライナの戦線でも使われたスターリンク ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. アップルがiPhoneとApple Watchの新型を発表――環境問題への取り組み成果も

 9月13日、アップルがiPhoneとApple Watchの新型を発表した。発表には多くの情報が含まれているが、ケータイWatchの「9月13日のアップル発表会まとめ! ついにUSB-Cに対応したiPhone 15シリーズなど進化したポイントを一気に紹介」という記事(ケータイWatch)で一通り紹介されているので、全体を把握しやすい。ポイントはiPhoneのカメラ性能の向上、そしてApple Watchのダブルタップのジェスチャーによる操作。そして、ついにUSB-Cへの対応だ。

 さらに、発表のなかで比較的時間が割かれたのは、環境問題への取り組み姿勢についてである。製品としては、革(レザー)の製品を廃止(ケータイWatch)、サプライヤーのクリーンエネルギーへの取り組み(アップル)、そして各製品で使用する素材の再生をうたっている。

 そして、もう1つ、話題となったのはイベントのオープンニングに流れた映像に日本人が登場したことだ(CNET Japan)。この人はセキュリティソリューションサービスなどを提供するラックのコーポレートコミュニケーション室担当部長を務める飯村正彦氏で、Apple Watchによって心臓不整脈を見つけることができた経験を持ち、「Apple Watchは命の恩人」と話す。

 このように、新しい製品の性能向上だけでなく(それは当然の進化であり)、環境問題やヘルスケアにも貢献をするという点が差別化ポイントとして訴求された。

ニュースソース

  • 9月13日のアップル発表会まとめ! ついにUSB-Cに対応したiPhone 15シリーズなど進化したポイントを一気に紹介[ケータイWatch
  • 「レザーのアクセサリは廃止」、脱炭素を目指すアップルが「ファインウーブン」使用へ[ケータイWatch
  • Apple、サプライヤークリーンエネルギーの取り組みを前進[アップル
  • アップルイベントのオープニングに登場した日本人は誰--「Apple Watchは命の恩人」[CNET Japan

2. 生成AIを利用したコンテンツの透明性

 米国では生成AIを利用したコンテンツに対する透明性を確保するための試みが始まっている。

 まず、グーグルの親会社のアルファベットは「選挙広告を出すすべての広告主に対し、11月半ば以降、広告に人工知能(AI)が生成したコンテンツが含まれる場合には明確かつ目立つ情報開示文を付記するよう義務付ける」と発表をしている(ロイター)。対象となるのは、傘下のプラットフォームに流れる画像・動画・音声のコンテンツということなので、当然、YouTubeのコンテンツも含まれることになる。いまの段階からこうした規制をしないと、大統領選に向け、フェイクニュースなどで荒れることになるのは間違いないことだろう。

 また、アマゾンでは、電子書籍サービス「Kindleダイレクト・パブリッシング」のコンテンツガイドラインを更新し、「出版するコンテンツ(テキスト、画像、翻訳)を生成AIベースのツールによって作成した場合は、申告することを義務付ける」とした(ITmedia)。ただし、「自分の作品をAIツールで編集、改良、エラーチェックした場合は、AI生成コンテンツとはみなさない。また、アイデアだしの段階でAIツールを使っても、最終的に自分でテキストや画像を作成した場合は対象外」となる。

 ただ、いずれの場合も、それを申告しなかった場合にどう対応するのかは触れていない。AIの利用を検出する技術も並行して用意する必要もあるだろうが、いまだ、決定的な技術は確立していないとみられる。

ニュースソース

  • 米アルファベット、選挙広告のAI生成コンテンツに情報開示義務付け[ロイター
  • Amazon、「生成AI使ったら申告」をKindle出版ガイドラインで義務付け[ITmedia

3. ウクライナの戦線でも使われたスターリンク

 CNNが報じたところによると、衛星通信インフラを提供するスターリンクがウクライナとロシアとの戦争の前線で使われているという(CNN)。これは、ウクライナ国防省のブダノフ情報総局長が述べたとされる。スターリンクを使って通信やドローンの操縦、遠隔地の指揮所との連絡などが行われているという。

 一方、スターリンクのCEOであるイーロン・マスク氏はつい最近刊行された自伝本のなかで「ウクライナ軍によるロシア軍艦隊への奇襲攻撃を止めるため、スターリンクのクリミア近くのネットワークを切断するよう、エンジニアにひそかに命じていた」と明かしている。結果として、ウクライナ軍の無人潜水艇は通信の接続を失い、ロシア側に損害を与えることなく海岸に打ち上げられたという。イーロン・マスク氏がそうした判断をした理由について「ロシアの高官らとの会話から、ウクライナのクリミア攻撃にロシアが核兵器で応じるのではないかと激しい恐れを抱いたためだった」としている。

 こうした生々しい内情が書かれているのが9月13日に世界同時発売した自伝本「イーロン・マスク」(ウォルター・アイザックソン著、井口耕二訳、文藝春秋刊)である(Amazon.co.jpAmazon.co.jp)。

ニュースソース

  • 衛星通信スターリンク、「全ての前線で使用」 ウクライナ高官[CNN
  • 「イーロン・マスク(上)」[Amazon.co.jp
  • 「イーロン・マスク(下)」[Amazon.co.jp

4. グーグルが誕生して25年――その歩みとこれからの技術革新とは

 この9月に設立25周年を迎えたグーグルのCEOサンダー・ピチャイ氏が振り返りのブログ記事を掲載した(Google Japan Blog)。

 そのなかでは今後の展望にも触れ、「このような新境地が見えてきた時、私たちは、できるだけ多くの人々の生活を向上させるために大胆かつ責任を持って行動し、大きな問いを立て続けることをあらためて求められているのです。私たちが答えを探し求めることで、今後25年間、テクノロジーは驚異的な進歩を遂げるでしょう」と述べている。さらに、「そして2048年、世界のどこかで10代の若者が、私たちがAIで構築したものすべてを見て、当たり前のものだと感じる時、私たちはそれが成功だったと実感するのでしょう。そして再び、私たちは新たな問いに取り組むことになるのです」と締めくくっている。

 また、「検索における25の進化:役立つ画像からAIまで」と題した記事では、これまでのグーグルの技術革新の歴史をまとめている(Google Japan Blog)。

 それに加え、グーグルのウェブブラウザー「Chrome」も15周年を迎えた。それを記念し、新デザインと新機能を発表した。今後、数週間以内に配信されるとしている(ケータイWatch)。

ニュースソース

  • “問い”が“当たり前”に変わり、新たな問いが生まれる:四半世紀の変革[Google Japan Blog
  • 検索における25の進化:役立つ画像からAIまで[Google Japan Blog
  • グーグル「Chrome」15周年で新デザイン、生成AI活用の新機能も[ケータイWatch

5. [イベントカレンダー]OpenAI DevDay開催決定

 「ChatGPT」の開発元であるOpenAIが米国時間11月6日にサンフランシスコで初の開発者会議「OpenAI DevDay」を開催すると発表している(CNET Japan)。これは世界から注目を集めるイベントになりそうだ。

 「DevDayは対面での参加が基本だが、実際に参加できなくても、基調講演をオンラインでストリーミング視聴できる」としており、多くの人がサム・アルトマン氏が繰り出す最新の取り組みの発表に期待しているに違いない。

ニュースソース

  • OpenAI、初の開発者会議「OpenAI DevDay」を11月に開催へ[CNET Japan
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。