中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2023/9/14~9/20]

漫画村の使ったマネタイズ手法とは ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 漫画村の使ったマネタイズ手法とは

 海賊版サイト「漫画村」の運営者とされて、著作権法違反(公衆送信権の侵害など)と組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)の罪で実刑が確定し、服役を終えていた星野路実氏が福岡地裁に再審請求をすると報じられている(朝日新聞デジタル)。

 一方、その星野氏が読売新聞の取材に応じている(読売新聞)。そのなかでは「ネット広告は抜け穴だらけ。稼ぐ方法は腐るほどある」と答えている。そして、具体的な手法の一例も開示している。それは「ヤフーからの広告の受け皿として、ゲーム関連の記事をまとめたダミーサイトを作り、漫画村のサイトと『連結』させる。すると、ネット利用者が漫画村のサイトを開いたとき、ダミーサイトも同時に立ち上がるようになる。ただし、ダミーサイトの大きさは『0』に設定した。そのため、ネット利用者が漫画村のサイトを開いても、ダミーサイトは一切見えない。しかし、システム上、ダミーサイトは開かれていることになるので、そこに掲載された広告も利用者が閲覧したとカウントされ、サイト開設者は広告収入を得ることができる――」という手法だ。

 これまでもそうだが、デジタル技術を駆使する抜け道は常に存在しうると考えらられるので、あらためて驚きはしないし、こうした情報を元に各社が対策を1つずつ取るしかないのだろう。

ニュースソース

  • 「漫画村」元運営者、再審請求へ 漫画のデータは別サイトのもの[朝日新聞デジタル
  • 海賊版サイト「漫画村」、数億円稼いだ開設者「ネット広告は抜け穴だらけ」[読売新聞

2. Xは有料化するのか?

 今週、注目される発言といえばイーロン・マスク氏によるX(旧Twitter)の課金制に関する発言だ。これは、「同氏がイスラエル首相との会談の席上で明らかにしたもので、自動投稿を繰り返すbotを排除するためにはシステム利用料として毎月少額を課金するのが唯一の方法だとし、将来の導入に前向きな姿勢を示した」ということが元の情報だ(INTERNET Watch)。

 確かに、ボットの撲滅には有効な施策にも見えるが、ユーザーや広告主を失うリスクもある。この発言をきっかけに、新興SNSのBluesky(ブルースカイ)ではユーザー数が伸びたという報告もあるほどだ。一方で、イーロン・マスク氏は「ブロック機能の廃止」などにも言及して話題となったことは記憶に新しいが、実行はされていない。市場の反応を見るための観測気球という見方もある。

 いずれにしても、ユーザーもお騒がせ発言の1つ1つにあまり驚かなくなってきているということもある。

ニュースソース

  • 「X(旧Twitter)をすべて課金制に」イーロン・マスク氏が構想を披露、その実現性は?[INTERNET Watch

3. グーグルの生成AI「Bard」が進化

 米グーグルは生成AIチャット「Bard」に複数の新機能を追加したことを発表している。

 まず、Bardによる回答の裏付けになるソースをネット上から探し、「ダブルチェック」する(ITmedia)。また、GmailやGoogleドライブなどのGoogleアプリの拡張機能を発表し、Bardがユーザーの指示に従い、ユーザーの「Gmail」や「ドライブ」内のファイルなどを参照し、回答を生成する(ITmedia)。いずれも、当面は英語のみの対応となる。

 さらに、文字と画像を組み合わせることもできるようになった。「Googleレンズ」を使い、文字と画像を組み合わせたメッセージを送ることができる。また、回答にも画像が利用されるようになる(ITmedia)。

 いずれも、グーグルらしい生成AIの適用の仕方だと思う。なかでも、メールやドライブのファイルを参照して解答を生成するという機能には期待したい。もう、メールをあれこれ探したりする必要もなくなるのか。また、ドライブには多くのデータを入れておくことで、プライベートなデータベースとしても使うことができそうだ。

ニュースソース

  • GoogleのAI「Bard」に“回答のダブルチェック”用ボタン追加[ITmedia
  • GoogleのチャットAI「Bard」、GmailやGoogleドライブの拡張機能に 画像質問も日本語対応[ITmedia
  • Googleの対話型AI「Bard」、画像を含む問いにも対応 回答の長さや口調の変更も[ITmedia

4. アマゾンのAlexaが生成AIに対応

 米アマゾンが「Echo Show 8」や新「Fire TV Stick 4K」などのデバイスの新製品を発表した(Impress Watch)。

 それに加えて、生成AI対応のAlexaも発表した。この機能は米国のEchoのユーザー向けに近日中に提供を開始する予定で、2014年の初代モデルから対応する。この新しいAlexaでは、文脈などを理解した応答が可能となる。また、ユーザーの間や言い淀んだりすることにも対応する。これまでよりも、より人間らしい会話が可能になるとされる。例えば、笑ったり、驚いたり、話者の興奮に合わせて反応するようだ。日本語への対応時期は今回の発表では不明だ。

 こうした記事によれば、これまでのスマートアシスタントの持つ機能が明らかに拡張され、次の段階に入っているように思われる。期待して待ちたい。

ニュースソース

  • アマゾン、生成AI対応の「Alexa」 人のように会話。新EchoやFire TVも[Impress Watch

5. 20代男性は要注意「だまされやすさを測る心理傾向チェック!」

 消費者庁が「インターネット通販における表示内容と消費者の心理的特性等に関する調査報告書」を公表した(消費者庁)。この調査は「インターネット通販を中心として見られる、合理的な思考が妨げられてしまうおそれのある表示内容について、どのような属性・心理的特性を持っている消費者が影響を受けやすいのかを明らかにする」ことを趣旨とした定量調査だ。

 それによると、性年齢で分類すると、20代男性は、広告をクリックしてトラブルに遭ったり、後悔したりした確率が特に高い傾向にあったという。また、「だまされやすさを測る心理傾向チェック!」という自己診断できるチェックリストも添えられていて、20代男性はその結果とも有意に関係しているという(ITmedia)。

 こうしたチェックリストを使って、一度は自分の傾向を客観的に認識しておいてもいいかもしれない。

ニュースソース

  • インターネット通販における表示内容と消費者の心理的特性等に関する調査[消費者庁
  • ネット広告にだまされやすいのは20代男性──消費者庁調べ[ITmedia
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。