中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2023/9/21~9/27]
生成AIの機能向上が進む――ChatGPT、Bard、Alexa ほか
2023年10月2日 07:00
1. 生成AIの機能向上が進む――ChatGPT、Bard、Alexa
生成AIが目と耳と口を持った。OpenAIはChatGPTに音声機能や画像機能を追加した。音声で会話したり、画像とメッセージを使ってやり取りしたりといったことが可能となる。「ChatGPT PlusおよびEnterpriseのユーザー向けに今後2週間ほどで提供予定」とされる(PC Watch)。
GoogleはBardのアップデート内容を紹介した。Google レンズとの連携により、画像を使った質問や質問が可能になったとともに、画像を含んだ回答を得ることもできるようになった。そのほか、「回答の長さや口調を調整」「Googleのアプリ・サービスと接続する拡張機能」「回答の再確認と会話の共有」などの機能も含まれている(INTERNET Watch)。
さらに、アマゾンのAlexaも進化する。アマゾンが同社のプライベートイベントで紹介したところによれば、会話の文脈を理解し、より自然な会話を続けることができるようになるという。加えて、スマートスピーカーのカメラや人感センサーを利用し、「ボディランゲージやアイコンタクトといった非言語的な合図」情報として利用する(ITmedia)。ただし、リリースは数カ月後に英語からということなので、日本語で使えるようになるためにはしばらく時間がかかるとみられる。
さまざまな社会的な課題はあるものの、生成AIの進化はまだまだ止まりそうにない。
ニュースソース
- ChatGPT、音声や画像を使ったやりとりが可能に[PC Watch]
- Googleの生成AI「Bard」が機能強化、Google レンズとの連携機能などが日本語で利用可能に[INTERNET Watch]
- スマートスピーカーに生成AI、Amazonが先行 会話を記憶、ボディランゲージやアイコンタクトも理解[ITmedia]
2. 3人が集まって何が起きる? サム・アルトマン氏とジョナサン・アイブ氏、そして孫正義氏
ChatGPTの開発元であるOpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏と元アップルの工業デザイナーとして知られているジョナサン・アイブ氏が、「新たなAIハードウエア端末の開発」について話し合っているというのだ。これはGigazineが米国のThe Informationで報じた記事を引用して書いている情報だ(Gigazine、The Information)。そればかりか、この会合にはソフトバンクの孫正義氏も関与しているという。
もちろん、本人たちが直接公表しているわけではないので、あくまでも「業界のうわさ話」の域を出ないと認識すべきだが、何かが起こるのではないかと感じさせる、興味深い3人であることは間違いない。
ニュースソース
- Open AIのサム・アルトマンとiPhoneのデザイナーだったジョナサン・アイブが新AIハードウエアについて会合、ソフトバンクの孫正義も関与か[Gigazine]
- Designer Jony Ive and OpenAI's Sam Altman Discuss AI Hardware Project[The Information]
3. 米国脚本家組合のストライキ終結へ。「AI=人工知能によって業務が侵害されないこと」で暫定合意
米国の脚本家1万1500人によって組織されている組合が、「待遇の改善のほか、AI=人工知能によって業務が侵害されないこと」などを求めたストライキに入っておよそ5カ月が経過した。そして、ついに製作会社側との交渉で暫定合意に達したと報じられている。
合意した内容は「製作会社側は、ネットフリックスなどの動画配信サービスの視聴が増加している実態を踏まえ、報酬を増やすことなど待遇を改善するほか、AIを使って原作を書き直さないなど、AIによって脚本家の業務を侵害しないこと」などが盛り込まれたという(NHK)。
なお、ハリウッドでは、米国の俳優で組織されている労働組合も、報酬の引き上げなどを求めてストライキを継続していて、こちらはストライキが継続している。俳優側も報酬だけでなく、AIによって生成された「俳優」が使い回されることについての懸念を示している。
ニュースソース
- 全米脚本家組合 27日にストライキ終了へ “暫定合意に達した”[NHK]
4. ヤフーが声明を発表「ニュース配信元との契約見直しを検討」
9月21日に、公正取引委員会がヤフーなどのニュース配信プラットフォームと記事を提供する新聞・雑誌などとの取引についての実態調査報告書を公表した。そのなかで、Yahoo!ニュースについては、「ニュースメディア事業者との関係で優越的地位にある可能性がある」と指摘されていた(Impress Watch)。
これを受け、9月25日、ヤフーがニュース配信元との契約見直しを検討するなどの声明を発表した。
声明では「ヤフーは、配信元各社と良好なパートナー関係を維持するため、契約内容の丁寧な説明と実績に応じた見直し、実績などデータの充実と開示、問い合わせ窓口の充実、透明性の向上――などに取り組んでいく」と述べている(ITmedia)。
ヤフー以外にもニュースの配信サービスは多数あり、今後はヤフーを含む各社とメディア企業との交渉がどう進むのかが焦点となる。
ニュースソース
- ニュースプラットフォームは「優先的地位の可能性」 公取委[Impress Watch]
- ヤフー、ニュース配信元との契約見直しも 「優越的地位の可能性」指摘受け[ITmedia]
5. 使用しなくなったドメイン名も維持すべきなのか
かつてNTTドコモが提供していたサービス「ドコモ口座」で使用していたドメイン名「docomokouza.jp」が失効し、オークションにかけられた。そして、9月25日の夜の段階で、約400万円で落札された。これについては、どのような意図で落札したのかは分からないが、著名なドメイン名が第三者の手に渡ることで、フィッシングなどの手法で悪用される可能性があると危惧されていた。続く9月26日午前、NTTドコモは、「現在ドコモ保有となった」とし、今後も管理をしていくと表明した。NTTドコモによれば、本来は使用していないドメイン名でも維持をすることになっていたようだが、ミスによって放流されたという(ケータイWatch)。
これに類似した事案は、政府の管理していたサイトのドメイン名「covid19-info.jp」でも起きていて、記憶に新しいところだ。
これは決して人ごとではない。どの組織でもブランドのリニューアルや廃止、企業グループの再編、事業の閉業などによって起こりうる。いまどきは、ドメイン名をユーザーに入力させたり、広告でドメイン名を記憶させるような演出は見られず、むしろQRコードを読み込んだり、キーワードで検索させたりということの方が多いかもしれない。そういう意味では、ドメイン名の持つブランドの意味はかつてよりも低下しているのかもしれない。しかし、昨今のフィッシング詐欺で利用される事案は少なくない。
もはや、一度使用したドメイン名は放流することなく、維持を続ける必要があるのだろう。もちろん、そのためには経済的なコストも伴う。さらには、担当者の属人的な努力によらない、失念しない手順を設けなければならない。
同様の事案が繰り返されることがきっかけかどうかは分からないが、GMOブランドセキュリティ株式会社が9月13日に未使用のドメイン名の更新管理をまとめられるサービス「GMOドメインストレージ」の提供を開始している(INTERNET Watch)。
ニュースソース
- ドコモ、失効した「ドコモ口座」のドメインを取り戻す、失効の原因は「社内管理の不手際」[ケータイWatch]
- 未使用ドメイン名の更新管理をまとめられるサービス「GMOドメインストレージ」提供開始[INTERNET Watch]