中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2023/9/28~10/4]

「インターネット・ガバナンス・フォーラム京都2023」が開幕 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 「インターネット・ガバナンス・フォーラム京都2023」が開幕

 10月8日から12日まで、国立京都国際会館において、国際連合主催の「インターネット・ガバナンス・フォーラム京都2023(IGF 2023)」が開催される(IGF総務省)。

 IGFは、インターネットに関するあらゆる課題について、多様な関係者が対等な立場で対話を行うインターネット政策の分野で最も重要な会議と位置付けられていて、2006年に開催された第1回より毎年各国持ち回りで開催されている国際会議である。今回のテーマは「Internet We Want – Empowering All People -(私たちの望むインターネット-あらゆる人を後押しするためのインターネット-)」となっている。もちろん、会場だけでなく、オンラインからもさまざまなかたちで情報を得ることができる。

 今や人類にとっての重要なコミュニケーションインフラとなっているインターネットの諸課題について国際的な場で議論されることから、その内容には注目しておくべきだろう。

 それに先立ち、9月25日には「日本インターネットガバナンスフォーラム2023」の動画が公開されていて、本会議で取り上げられる各トピックの背景説明や議論が行われた(D for Good!)。事前に閲覧することで理解が深まることが期待できる。

ニュースソース

  • IGF 2023[IGF
  • インターネット・ガバナンス・フォーラム京都2023[総務省
  • 「IGF 2023」の日本提案セッション紹介――日本インターネットガバナンスフォーラム2023の公開動画より[D for Good!

2. メタがAI技術とアイウェア、そしてゴーグルを発表

 メタは、プライベートイベント「Meta Connect」を開始し、新しい技術や製品を発表している。

 まず、対話型アシスタント「Meta AI」を発表した。このメタのオリジナルであるAIはInstagram、Messenger、WhatsAppなどに搭載され、Meta AIと会話しながら画像生成や動画編集ができる(Impress Watch)。日常的に利用されるメッセージやSNSなどでの表現力がAIで拡大するという趣向だ。

 また、VR用のアイウェアとゴーグルも発表されている。

 次世代のスマートグラス「Ray-Ban Meta smart glasses」は「新たにハンズフリーでストリーミング配信する機能を搭載。グラスからFacebookやInstagramにライブストリーミングができるほか、プレビューでコメントを確認できる。メガネの横をタップ&ホールして、音声も聞けるため、コミュニティと自分の視界を共有しながら交流できる」という機能を持つ(Impress Watch)。

 また、新たなMRヘッドセット「Meta Quest 3」は「PC不要のスタンドアロン型で動作する。カメラで周囲を捉え、鮮明なリアルタイム映像としてヘッドセット内に映し出す『フルカラーパススルー』に対応」となっている。さらに「プレイエリアの境界線は、コンピュータービジョンにより自動的に周囲がスキャンされるため、手動の設定は不要。またスキャンにより周囲にある物体も認識され、壁、床、家具、天井などの表面の位置が把握される。これにより、3Dグラフィックスを壁などに重ねるといった、実際の物理空間とバーチャル体験を融合する表現が進化している」という特徴がある(Impress Watch)。

 VRやMRについてはデバイスの高性能化とともに、その用途のイメージも具体化しつつある。

ニュースソース

  • Meta、対話型アシスタント「Meta AI」全面展開 情報共有・画像生成など[Impress Watch
  • Meta、新スマートグラスは動画ライブ配信対応 Meta AI搭載[Impress Watch
  • MRのための「Meta Quest 3」登場 74800円[Impress Watch

3. グーグルが新型スマートフォンとスマートウォッチを発表

 グーグルは新型のスマートフォン、そしてスマートウォッチを発表した。

 スマートフォンは「Google Pixel 8 Pro」(ケータイWatch)と「Google Pixel 8」(ケータイWatch)で、いずれも10月4日に予約受付が始まり、10月12日に発売される。

 それぞれの基本性能については記事に詳しいが、「全員が笑顔の集合写真を合成する『ベストテイク』や、動画から特定の音を消す『音声消しゴムマジック』」といったAIを活用する新機能が注目されている。

 また、スマートウォッチの新製品としては「Google Pixel Watch 2」を発表した(ケータイWatch)。こちらは「マルチパスの心拍センサーを搭載し、激しい運動中でも心拍数を正確に測定できる。また、睡眠時の状態モニタリングに役立つ皮膚温センサーや、ストレスチェックに役立つ継続的皮膚電気活動(cEDA)センサーを備える」というところが注目点といえよう。

ニュースソース

  • 「Google Pixel 8 Pro」発表、フラットディスプレイや「Tensor G3」[ケータイWatch
  • 「Google Pixel 8」発表、AI機能のパワーアップや新ディスプレイ[ケータイWatch
  • 「Google Pixel Watch 2」発表、バッテリー持ちなど向上で5万1800円~[ケータイWatch

4. 設立40年を迎える「フリーソフトウェアファウンデーション」

 「フリーソフトウェアファウンデーション(財団)」の設立から40年を迎え、その足跡と業績を紹介する記事が翻訳され、ZDNET日本語版に掲載されている(ZDNET Japan)。フリーソフトウェアという考え方、さらにはフリーソフトウェアライセンスとオープンソースライセンスといった考え方、GPLなどのソフトウェアライセンスがどう生まれてきたのかということを理解するのに役立つ記事だ。

 その中心にいたのはリチャード・ストールマン氏だ。もちろん、近年ではストールマン氏に対する批判などもあるなかでも、こうしたことからも、その功績を認める人は多い。

ニュースソース

  • 「GNU」とフリーソフトウェア財団の40年を振り返る[ZDNET Japan

5. 米国脚本家組合のストライキは終わったが……

 先週もこの連載で触れたように、米国では脚本家が所属する組合と映画・テレビの制作者の団体との間での交渉がまとまり、およそ150日にわたるストライキは終結した。脚本家らはAIによって自分たちの権利が侵害されたり、仕事がなくなったり適切な報酬が得られなくなることを懸念してのことだった。

 交渉の結果は多くのメディアが伝えているが、「今回の合意では、プロジェクトの中でAIをどう使いたいか、どう使ってほしいかは脚本家側で判断できる」ようになっているようだ。さらに「脚本家の作品をAIの訓練に利用することは、この合意または他の法律により禁止」とされていて、あくまでもイニシアティブは脚本家にあるような合意となっている(Gizmode)。

 また、「脚本家たちは、自分が製作に参加した番組や映画が再放送されたり、ダウンロード販売された場合の報酬の算定の根拠となるパフォーマンス指標の開示を要求していた」ということもあった(Forbes JAPAN)。今回の妥結により、脚本家らはストリーミングサービスなどで、自分が関与した作品がどのくらいの視聴されたかという数字を根拠として、その成果に応じた報酬を得られる可能性がある。

 ただし、これは思わぬところにも影響を与えるかもしれない。こうした交渉によって、制作者側にとって上がったコストをサービス提供価格に転嫁する、すなわち値上げされる可能性があるというのだ(INTERNET Watch)。米国企業のサービスではあるが、もちろん、それが提供されている日本での価格も無関係というわけにはいかないのだろう。

ニュースソース

  • 脚本家組合が勝ち取った「視聴データ開示」、ネットフリックスの打撃となる恐れ[Forbes JAPAN
  • ハリウッドのストライキ、脚本家側が勝利。AI対応はどうなる?[Gizmode
  • Netflix、脚本家や俳優組合のストライキの影響で再値上げを計画中との報道。日本への影響も必至か?[INTERNET Watch
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。