中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2023/10/19~10/25]

アマゾンが発表した物流のDX ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. アマゾンが発表した物流のDX

 米アマゾン・ドット・コムは、配送関連の年次イベントを開催し、ロボットや新型ドローンなどを紹介した(ITmedia)。

 言うまでもないことだが、アマゾン・ドット・コムは「大手IT企業」の代表格ではあるのだが、よく見ると、全てがオンライン上の処理で完結するような事業ではなく、注文をオンラインで受け付けるEコマース事業の裏側には物流・配送という物理的に電子化できない業務がある。これらをいかに効率化するかという課題にデジタル技術を投入しているのだ。

 今回の発表の1つが「人間に優しいロボットシステム『Sequoia』」で、「ロボットを含むフルフィルメントセンターの在庫処理システム全体の名称」である。「商品をピックアップしてボックスに分配するロボットアーム、そのボックスを運ぶモバイルロボット、作業する人間のためのワークステーションの流れ全体を管理」する。

 2つ目は「人間と一緒に働く二足歩行ロボット『Digit』」で、「Amazonが出資する新興企業Agility Roboticsが開発する二足歩行ロボット。両腕でボックスを掴んで運び、指定された場所に置く」という役割を実行する。

 さらに、「2013年から取り組んでいる配送ドローンの最新モデル『MK30』のプロトタイプ」も発表されている(Gizmode)。

 また、「Rivianの電動配送バンを2030年までに10万台導入」と、「AI採用の配送用バンの自動車両検査システム『AVI』」も興味深い。

 そのようなアマゾン・ドット・コムだが、処方薬の注文をクリックしてから1時間以内にドローンで配達する「Prime Air」を発表している。記事によれば「ドローンは地上約40~120メートルで飛び、内蔵ソフトウェアを利用して電線などの障害物を避けられる仕組みです。カメラフィードを介してオブジェクトや特徴を識別できるネットワークシステムも搭載されています。到着目的地には自ら降下して、着陸。荷物を下ろしてからAmazonフルフィルメントセンターへと戻っていきます」という。コンセプトは理解できても、現実には障害物をどうやって回避するのかという疑問もあったが、そうした課題も克服したようだ。

ニュースソース

  • Amazon、2足歩行ロボット導入や新型ドローンなど配送関連の多数のイノベーションを披露[ITmedia
  • 米Amazon、薬のドローン配達スタート。渋滞を気にせず1時間以内にお届け[Gizmode

2. 大手出版2社がバーチャルエンタメ事業を開始

 小学館は、本格VRでエンターテインメント体験ができるバーチャルライブアリーナを開発して、バーチャルエンターテインメント事業に参入する。

 第1弾の企画としては、「小学館のマンガアプリ『マンガワン』などで展開する連載作品『塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い@comic』(原作/猿渡かざみ キャラクター原案/Aちき 漫画/鉄山かや)の世界観を体験できるVRコンテンツ『しおあま Virtual LIVE 桜華祭編』」を2023年内にリリースする(CNET Japan)。

 ユーザーはアバターを通じて、コミュニケーションをとりながら参加する。また、サービスのなかでは、デジタルグッズやチケットの販売なども行う。VRデバイスがなくても、PCやスマホなどからも視聴が可能としている。

 さらに、ドワンゴとKADOKAWAも、「東京交響楽団の特別監修のもと、クラシック界初とうたう、バーチャル上に精密に楽器演奏者を再現する技術を導入したバーチャルアーティスト開発を行うプロジェクト『ポルタメタ』」を開始する。まず、「ピアニストのバーチャルキャラクターを開発」し、「世界に通用するピアニスト(バーチャルアーティストの“中の人”)を発掘するオーディション」を開催する(CNET Japan)。

 これまでも仮想空間を使うエンターテインメントは発表されてきているが、期間を限定したイベントが多いように感じる。ここにきて、「キャラクター」を扱うことに長けている大手出版社が本格的な企画として実施をし始めるというところは注目点だ。

ニュースソース

  • 小学館、バーチャルエンタメ事業に参入--VRエンタメ配信、第一弾は「しおあま」[CNET Japan
  • ドワンゴとKADOKAWA、クラシック界で活躍する最新技術を活用したバーチャルアーティストを開発へ[CNET Japan

3. 伊藤園がCMに「AIタレント」を起用

 伊藤園は「お~いお茶 カテキン緑茶」のCMに「AIタレント」を起用した(産経新聞)。米国では俳優のトム・ハンクスをAIで生成して歯科のCMに利用されるような事案が報じられたが、日本でもCMにAIタレントが登場したのだ。そのクオリティはかなり高く、「本物と見分けがつかない」という印象を持つ人が多いのではないか。

 産経新聞の取材に対して、伊藤園は「製品コンセプトをどのように伝えるか検討した結果」であり、AIを使うことを前提としていたわけではないという。一方で、「自然な形で未来の容姿を表現できるなど汎用性が高い」と評価しつつも、「誰もがひと目で分かる有名なタレントではないため、商品や企業イメージを発信する際のインパクトは弱い」「AIで生成したタレントの顔は著作権侵害などのリスクに懸念がある」という欠点も認識しているという。

 こうした新しい表現手法は最初に取り組んだ人が注目を集めるが、二番煎じはやりにくいものだ。ただ、CMで利用可能なほどの質の動画が作れるという検証はできているので、さらなる品質向上やタレントの起用方法、そして制作コストの低下が起これば、一般化していくことになるのだろう。

ニュースソース

  • 「本物」と見分けがつかない…伊藤園CMの「AIタレント」がSNSで話題[産経新聞

4. 公取委がグーグルを独占禁止法違反の疑いで審査開始

 公正取引委員会は、グーグルの独占禁止法違反被疑行為について審査を開始した(Impress Watch)。現在、第三者からの情報・意見募集を開始している。

 公正取引委員会が指摘しているのは次の2点だ。「GoogleがAndroid端末メーカーとの間で、端末へのアプリストア『Google Play』搭載の許諾にあたり、『Google 検索』やWebブラウザの『Google Chrome』などを併せて搭載させ、アプリのアイコンの画面上の配置場所を指定する内容の許諾契約を締結したこと」。そして、もう1つは「Android端末メーカーとの間で、Googleと競争関係にある事業者の検索アプリを搭載しないことなどを条件に、Googleが検索連動型広告サービスから得た収益を分配する内容の契約を締結すること」である。

 公正取引委員会では、こうした行為が公正な競争を阻害していると考えているようだ。

ニュースソース

  • 公取委、グーグルを独禁法違反で審査開始[Impress Watch

5. 「ジャパンモビリティショー」開幕

 「ジャパンモビリティショー」(東京)が開幕した。これまでのモーターショーから名称を改め、より幅広いモビリティをテーマとする展示会へと進化した。自動車業界にとどまらず、オールインダストリーでの「モビリティが実現する、明るく楽しくワクワクする未来」がテーマとなっている(Impress WatchImpress Watch)。

 一般公開前のプレスイベントでは、大手自動車メーカーは、新しい車のデザインコンセプトのみならず、電気自動車(EV)を構成する要素技術、そして、運転支援や車外とのコネクティビティなどの情報システム技術をプレゼンしている。また、さまざまな商用車、空飛ぶ自動車、二輪などでも技術的な進歩を見ることができる。

 インターネットが社会的に普及したのちも、つい数年前までは、車の中は社会と隔絶されていて、スマートフォンですら接続して使うことはあまり想定されていなかった。それが、いよいよ車がプラットフォーム化し、情報システムでのインテグレーションが中心的な話題になってきたようだ。

ニュースソース

  • ジャパンモビリティショー開幕 新EVコンセプトやスポーツカーが続々登場[Impress Watch
  • モビリティの未来を観る「Tokyo Future Tour」[Impress Watch
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。