中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2023/10/12~10/18]

個人情報約900万件が漏洩――NTT傘下企業から ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 「CEATEC 2023」閉幕――国と産業を挙げデジタル社会を推進

 10月17日~20日、「CEATEC 2023」が開催された。コロナ禍を経て、フルリアルイベントとしては4年ぶりの開催となる。デジタル家電見本市として発展してきたCEATECは2016年にコンセプトを大きく変更して以来「Society 5.0の総合展」という位置付けになった(CNET Japan)。

 オープニングレセプションには、産業の経営トップ、そして岸田文雄首相、鈴木淳司総務大臣、西村康稔経済産業大臣、河野太郎デジタル大臣などの要人も集い、日本の政界・産業界を挙げてのイベントであることを象徴している(INTERNET Watch)。また、内閣府特命担当大臣(科学技術政策担当)の高市早苗氏も基調講演に登壇し、「AI等のエマージング技術を活用したデジタル社会基盤の構築」と題した内容で、日本政府のAI戦略について語っている(INTERNET Watch)。

 参加できなかった人には、具体的な展示会場での出展内容などを記事一覧にしてまとめたImpress Watchの記事が参考になる(Impress Watch)。

ニュースソース

  • CEATEC 2023開幕--「次世代」をキーワードに共創の場提供へ[CNET Japan
  • 岸田首相がCEATECにメッセージ「国境の枠にとらわれず、共に未来を創るイベントになることを期待している」 CEATEC 2023 オープニングレセプション[INTERNET Watch
  • CEATEC 2023で高市大臣が基調講演、AI戦略を語り「マイ・ドラえもんの世界」にも期待を寄せる[INTERNET Watch
  • 「イノベーションは特別なものではない」、明日から始まる「CEATEC」はどうやって「イノベーションの場」を作ろうとしているのか? 体験し、考え、共創する……エグゼクティブプロデューサーに聞く「リアル開催の価値」[INTERNET Watch
  • CEATEC 2023 記事一覧[Impress Watch

2. ドローンに関する動向が活発に

 ここにきてドローンに関するユースが相次いで発表されている。

 まず、「オールジャパンUAVフェスティバル2023」が、千葉県君津市のDDFFドローンフィールドをメイン会場として、11月3日~5日まで開催される(DRONE)。「国内で事業展開をしているUAV関連企業が多数集まり、最新機種の飛行デモンストレーションと関連機器の展示、著名人によるセミナーなどを通じて、関係者のみならず、これからこの分野での活躍を考えている学生の皆様や子供たちにも幅広い技術に触れる機会を提供するような場となるようなイベントを目指す」という。

 また、ドローン産業の発展と国家資格の普及を推進する「全日本無人航空機協会(All Japan Uav Association、略称:AJUA)」が7月に設立された(ドローンジャーナル)。10月27日には、設立記念として「人とドローンが共存する社会をつくる」と題するセミナーを開催する。

 標準化も進んでいる。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」での成果をもとに進められてきた、無人航空機の衝突回避に関する運航手順を含めた国際規格の改定版が、国際標準化機構(ISO)より「ISO21384-3 Unmanned aircraft systems―Part3: Operational procedures」(無人航空機システム―第3部 運航手順)として正式に採択・発行された(ドローンジャーナル)。

 さらに、NTTコミュニケーションズは「docomo business forum 2023」の会場で、自律飛行型ドローンのメーカーである米Skydioの新製品「Skydio X10」を展示している。これは、従来のAIを用いた障害物検知と回避による自律飛行が、さらに暗所や夜間でも可能になったもので、日本で披露されるのはこれが初めてになる(CNET Japan)。

 このように、ドローンの進化はハードウェア、ソフトウェア、そして標準化に至るまで、進化を続けている。

ニュースソース

  • 最新ドローンが展示される「オールジャパンUAVフェスティバル2023」開催。11月3日から君津市で[DRONE
  • ドローン産業の発展と国家資格の普及を推進する「全日本無人航空機協会」発足[ドローンジャーナル
  • 無人航空機の衝突回避に関する日本発提案、国際規格の改定版に採択・発行[ドローンジャーナル
  • NTT Com、「Skydio X10」日本初披露--AIと新センサーで暗所や夜間でも自律飛行[CNET Japan

3. 個人情報約900万件が漏洩――NTT傘下企業から

 大規模な個人情報漏洩が発表された(INTERNET Watch)。「株式会社NTTマーケティングアクトProCXが利用するコールセンタシステムを提供しているNTTビジネスソリューションズの運用保守業務従事者が管理者アカウントを悪用し、顧客情報を不正に持ち出し、第三者に流出させていた」という事案だ。不正に持ち出された個人情報は約900万件にのぼるとしている(NTT西日本)。

 この約900万件の内訳をITmediaが「影響のあった組織・件数を一覧化」して記事として掲載している(ITmedia)。NTTドコモ、WOWOWなど、全国規模でサービスを行っている企業の名前もある。

 これまで、何度も情報漏洩はあったが、日本を代表する情報通信の企業であるNTTグループの企業となれば、もはや個人情報は守られないものだという諦めの境地にもなる。

 すでに警察当局は不正競争防止法違反容疑で捜査を開始し、実態解明に乗り出している(日本経済新聞)。

ニュースソース

  • NTT西子会社の“顧客情報900万件持ち出し”、自治体なども被害に 影響範囲まとめ[ITmedia
  • お客さま情報の不正流出に関するお詫びとお知らせ[NTT西日本
  • コールセンターの個人情報約900万件が不正に持ち出される、NTT西日本子会社が情報を公開[INTERNET Watch
  • NTT西系の元派遣社員、個人情報10年近く漏洩か[日本経済新聞

4. 「クオリティメディアコンソーシアム」が「クオリティメディア宣言」を発表

 株式会社デジタルガレージの子会社である株式会社BI.Garageとメディア企業30社が共同運営するコンテンツメディアコンソーシアムは「クオリティメディア宣言」を発表し、組織名を「クオリティメディアコンソーシアム」に変更をした(INTERNET Watch)。

 「デジタル広告およびコンテンツの質の向上と信頼性向上を目指すもの。デジタル広告はNo.1広告メディアに成長したが、その信頼性の低下が著しい」という課題意識から発足した組織で、「さらなる混乱が予測されるデジタル広告市場において、オリジナルコンテンツであり広告掲載メディアのクオリティ、掲載広告のクオリティを追求できる唯一のプライベートマーケットプレイス(広告配信ネットワーク)として最高品質の広告の提供を強化していきます」とその趣旨を述べている。

 参加企業は次の30社(順不同)である。

株式会社東洋経済新報社/株式会社朝日新聞社/株式会社読売新聞東京本社/株式会社日本経済新聞社/株式会社西日本新聞社/株式会社講談社/株式会社集英社/株式会社毎日新聞社/株式会社産経デジタル/株式会社北海道新聞社/株式会社中日新聞社/株式会社時事通信社/株式会社ダイヤモンド社/株式会社プレジデント社/リンクタイズ株式会社/株式会社インプレス/株式会社オレンジページ/株式会社光文社/株式会社文藝春秋/株式会社日本ビジネスプレス/株式会社メディアジーン/朝日放送テレビ株式会社/株式会社J-WAVE /株式会社小学館/株式会社マガジンハウス/株式会社CCCメディアハウス/株式会社フジテレビジョン/株式会社テレビ東京コミュニケーションズ/株式会社TBSテレビ/一般社団法人共同通信社

ニュースソース

  • コンテンツメディアコンソーシアム、「クオリティメディア宣言」を発表し団体名も変更、デジタル広告の信頼性向上に取り組む[INTERNET Watch

5. ソニー・ホンダモビリティの「AFEELA Prototype」が日本で展示

 今年1月に開催された米国のCESで、ソニー・ホンダモビリティ(SHM)がバッテリーEVのプロトタイプ「AFEELA Prototype」を発表したことを記憶している方も多いのではないか。そして、ついにそのプロトタイプ車両が「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」(東京)に出品される(Impress Watch)。会期は10月28日から11月5日までとなっている。

 この車両は駆動方式にモーターを使う電気自動車であり、さらには自動運転も実現するものであるとされるが、何よりも他との差別化されている点は「メディアプレーヤー」としての可能性を秘めているところだ。

 同社では「ソフトウェア・デファインド・ビークル」というコンセプトを掲げ、ソフトウェアによって、必要に応じた拡張や進化ができるという、いわばスマートフォンのような性格を持つとともに、「メディアプレーヤー」としての性格も強く持つ。そして、いずれはゲームメーカー、コンテンツプロバイダーなども参加するプラットフォームとなるとみられる。そうした他社を巻き込むモデルを「AFEELA共創プログラム(仮称)」と言っている(Impress Watch)。

 実際に公道を走るようになるのはまだ先だが、ホンダという自動車メーカーが培った技術による走行性能や安全装備は当然として、それを超えたところでの魅力を加えて、どのような製品となって発売されるのかは興味深い。

ニュースソース

  • ソニーホンダ、次世代EV「AFEELA Prototype」初披露 アプリ・サービス開放[Impress Watch
  • 共創する愛着 ソニーホンダ「アフィーラ」が変える自動運転時代のクルマづくり[Impress Watch
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。