清水理史の「イニシャルB」
どこのPCにつながれても平気? ウイルスチェック機能付きUSBメモリ「RUF3-KV32G-DS」
2017年4月3日 06:00
データの持ち運びや受け渡しなど、手近なストレージとして便利なUSBメモリ。そんなUSBメモリにウイルスチェック機能を搭載したのがバッファローの「RUF3-KVシリーズ」だ。個人向けのリーズナブルな製品を試してみた。
「他人の」PC/USBメモリに対する感覚
マルウェア入りのUSBメモリを放置する、などという手口がある以上、今や拾ったUSBメモリを安易にPCに装着する人は、まずいないことだろう。
では、人から渡されたUSBメモリは?
少しばかり悩んでから「人による」と答える人が多そうだが、さらに発展してこれはどうだろうか?
自分のUSBメモリを他人のPCにつなぐ――。
きれい好きの人は他人にペンを貸すのにも抵抗を感じるようだが、もしかすると相手のPCがマルウェアに感染しており、貸したUSBメモリ経由で自分も感染してしまうかもしれない。そう考えると、セキュリティに対する意識が高い人の中には、今となっては「できれば避けたい」と感じるような行動とも言えそうだ。
もちろん、もうUSBメモリなんて使わない、というのも1つの考え方だが、そうはいって手軽なデータ持ち運び/転送手段として便利なため、なんらかの工夫をして使い続けたいと考える人も多いはずだ。
個人的にも、カバンに1本、データ持ち運びや転送用に使うUSBメモリが入れっぱなしになっているが、前述したような状況を考えると、今のまま使い続けていいのか? と少し疑問を感じ始めていた。
そこで、今回入手したのがバッファローから登場した「RUF3-KV」シリーズだ。
ルーターへの機能提供や家庭向けセキュリティアプライアンスの投入など、最近、攻めの姿勢を明確に打ち出してきたトレンドマイクロの技術を利用したUSBメモリで、PCからUSBメモリにデータをコピーする際に自動的にウイルスチェックを実行したり、パスワードを設定して保存したデータを保護する機能が搭載されている。
同様の製品は、法人向けにも展開されており、ライセンス期間が長く(5年)、ハードウェア暗号化機能が搭載されているという違いがあるとは言え、32GBモデルで直販価格2万6784円(RUF3-HSL32GTV5、税込)とかなり高価な設定となっている。
これに対して、今回購入した32GBモデルのRUF3-KV32G-DSは、同社直販価格で7322円(税込)と比較的リーズナブルな設定になっている。
これなら、どう管理されてきたのかわからないPCに装着しなければならなくなったとしても、必要以上に神経質になることもなさそうだ。
内蔵のプログラムを起動
それでは、実際の製品をチェックしていこう。RUF3-KVシリーズは、未使用時はUSB端子が内部に格納されており、使う時に円形のストラップホールを押し込んで端子を出す、いわゆるノック式のUSBメモリだ。
本体はダークシルバーのシンプルなデザインで、前述したようにトレンドマイクロの技術を採用していることから、「BUFFALO×TREND MICRO」というダブルネームのロゴが目立つように記載されている。
使い方は、通常のUSBメモリとは少し異なる。
通常のUSBメモリは、PCに装着すればすぐにデータを読み書きすることができるが、本製品はPCに接続しただけでは用途が制限される。
接続直後は188MB(FAT)の管理領域が認識されるのみで、しかも、この領域は書き込み禁止に設定されており、データを保存することはできない仕様となっている。
残された領域を認識させるには、内蔵のプログラム(OPEN_UFD.EXE)を実行し、表示された画面で「ドライブを使用する」をクリックする。これで、残りの領域がドライブとして認識されると同時に、「Trend Micro USB Security」が自動的に実行されることになる(初回のみアクティベーション操作が必要)。
「Trend Micro USB Security」は、USBメモリへのデータの書き込みを監視し、マルウェアのチェックを実行する本製品のポイントとなる機能だ。
試しに、マルウェアの検体を入手してテストしてみた。
通常、Windows 10ではDefenderによってマルウェアが検出されるため、あらかじめDefenderをオフに変更。PCにダウンロードした検体をRUF3-KVシリーズにコピーしてみたところ、無事にTrend Micro USB Securityによってマルウェアが検出され、該当ファイルが隔離された。
ポイントは、あくまでもUSBに対しての操作のみに適用される点だ。今回のテストのように、Windows Defenderをオフにした状態で検体をPCのストレージにダウンロードしたが、この時点ではTrend Micro USB Securityは動作することはない。
あくまでも疑わしいファイルがUSBメモリに書き込まれそうになった時だけ、脅威を検出するのみとなる。
RUF3-KVシリーズを装着すると、通知領域にTrend Micro USB Securityのアイコンが常駐するため、システム全体が保護されているかのように見えるが、あくまでも保護対象はUSBのみとなる点に注意が必要だ。
なお、今回は海外サイトから検体をいくつか入手したが、そのうちのいくつかはUSBメモリにコピーしても検出されないものもあった(Windows Defenderも無反応)。
Trend Micro USB Securityは、USBメモリが装着された時点で最新のパターンファイルをインターネットからダウンロードするようになっているが、あくまでも検出可能なのはこのパターンファイルに合致する場合のみとなる。
通常のセキュリティ対策ソフトは、ふるまい検知など高度な機能によって、パターンと合致しないマルウェアも検出できるが、そこまでの機能は搭載されていない。
万が一、RUF3-KVシリーズに未知のマルウェアが混入してしまう可能性があることを考えると、自分のPCにはより高度な機能を搭載したセキュリティ対策ソフトをインストールしておく必要があるだろう。
パスワードを設定して情報漏えいを防止
このように、USBメモリに書き込まれそうになったマルウェアを隔離できるRUF3-KVシリーズだが、情報漏えい対策としても応用可能だ。
領域を認識させるために利用するOPEN_UFD.EXEには、オプション設定が用意されており、ここでUSBメモリにパスワードを設定できる。パスワードを設定したRUF3-KVシリーズは、PCの接続後、パスワードを入力しない限り、隠された領域をマウントできないようになる。
このため、万が一、RUF3-KVシリーズを紛失したり、盗難されたとしても、大切なデータが第三者に見られてしまうことも防止できる。情報漏えい対策としても使えるのは大きなメリットと言えそうだ。
なお、パスワードを忘れた場合、新しいパスワードに強制リセットできるが、その際はRUF3-KVシリーズの初期化が実行されるため、保存したデータはすべて削除される。RUF3-KVシリーズを第三者が手にした場合でも、パスワードの強制リセットによって不正にデータが参照されることを防止可能だ。
また、RUF3-KVシリーズには、Trend Micro USB Securityを利用できるライセンスが1年分含まれているが、2年目以降も同機能を利用するにはライセンスの延長が必要になる。延長ライセンスは1008円(直販価格、税込)と、さほど高くはない。これなら、継続的に利用しても大きな負担にはならないだろう。
プラットフォームが限られる
最後にパフォーマンスも計測してみたが、読み込みは300MB/s超えとかなり高速だった。書き込みは50MB/s前後と落ちるが、一般的な文書や画像などのデータの読み書きでストレスを感じるようなことはないだろう。
このように、安全、安心で、しかも高速という条件がそろっている点は評価できるが、弱点は対応するプラットフォームが限られる点だ。RUF3-KVシリーズは、Windows 7/8.1/10への対応に限られており、macOSなどほかのOSでは利用できない。
厳密には、管理用の188MBの領域にはアクセスできるが、macOS向けのプログラムが提供されないため、保存されたデータを参照することができない。
最近では、Macをメインに利用する人も増えている。異なるプラットフォームのPCとデータを使いたい場合は、少し厳しいだろう。
とは言え、やはりUSBメモリがセキュリティ対策ソフトで保護されているという安心感は大きい。これなら、誰が、どのように管理しているのかがわからないPCであっても、今後はさほど神経質にならずにUSBメモリを装着できそうだ。